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芸術。文化。健康増進

職場を通じて、音楽演奏や絵画鑑賞など、芸術、文化的な活動が、健康増進の起爆剤になるといった内容のカンファレンスに参加してきました。自治体のネットワーク団体主催で、予防、健康増進、メンタルヘルス、ウエルビーイングといった領域で活動している自治体職員や、研究者が集合し、実際の活動報告や研究結果が発表されました。自治体事業の立ち上げから運営まで、住民との共創プロセスを取り入れる、あるいは取り入れようと努力する、ことが盛んなデンマーク。今回の発表でも、健康事業分野の中で、このプロセスが織り込まれていることが、うかがえました。気づいたことを簡単にレポートします。


芸術、文化的活動と健康分野との繋がり

芸術、文化活動がメンタルヘルス、とくに認知症や精神病の治療などに効果があることはかなり前から言われています。デンマークを含めた北欧諸国では、病気になる前の予防の分野でも, 芸術、文化活動を積極的に取り入れた自治体の事業、研究がトレンドになっていることが報告されました。

このような事業や研究で、一般的に言われるようになってきているのは、

自治体が、住民に文化的な活動を提供することで、

  • 住民と住民の間に共感、共有事項を生み出すことできる。

  • 既存の社会的枠、役割、などを超えて住民が人として、他の住民とつながることができる。

  • 芸術活動自体が人の感性や感覚を刺激し、その経験だけで住民の心や体が快活になることが期待できる。

  • 住民にとって新しい趣味や活動の場を提供できる。

  • 文化的な活動が生まれることで、市や町に活気を生み出し、市や町の価値を高めることができる。

そしてこれらの効果を通じて、芸術、文化的な活動は街自体、自治体自体のウエルビーイングに繋がるといわれています。

カギを握るのは市民団体

デンマークにはforeningという、非営利、かつ明確な目的をもった市民集団が無数に存在します。規模も目的もさまざまですが、このどの町にも一定数存在する市民活動を自治体が経済的に支援したり、また、自治体事業と絡めて、官民協働でのサービスを考案したりと、自治体と、この市民集団には切っても切れない関係が存在しています。今回の会議の事例でも、この市民団体で、文化、芸術活動をおこなっている団体を自治体が積極的に応援するケース、事業立ち上げにともなって、この市民集団を中心にヒアリングや人集めを行ったりするケースがみうけられました。小規模の自治体では、その町にあるクラブ活動全部を共通して使えるようにする、10回分のチケットを自治体自らが発行し、クラブ活動に普段参加しないような住民、市民をも巻き込んで、町の活性化と健康増進をはかる、といった活動が紹介されていました。

協働作業に通じる伝達の仕方

テーマが芸術、ということもあり、カンファランスでの発表方法も工夫をこらしたものが多くありました。事例報告を簡単な詩にまとめて朗読したり、市民団体を集めて、事業経過を歌にしたり、住民の二-ズをとるために行われた、参加型ワークショップを事例の発表で再現したりと、創造性豊かな発表方法が多く見受けられました。
これは個人の体験からですが、デンマークでは教育の場面で、テストも筆記だけでなく、口頭で行われたりと、視覚や聴覚に訴える発表や伝達方を子供のころから鍛えられていると感じます。こういった工夫をこらした伝達、意思疎通ができることが、まったくタイプの違う団体、集団、人、が協働で作業したりするための手法にもなりうる、ということを日頃から感じているので、今回はそういった意味でも、とても印象を残すコンファランスとなりました。




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