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実は西洋人は記念撮影が下手!? 謎を紐解くキーワードは「異文化理解力」(古作)

①海外で記念撮影を頼むなら誰!?

いきなりですが、まず、この写真を見てください。これはアルメリアにて標高5137mのMt. Araratに観光した時の写真です。

片方が西洋人に撮って貰った写真、もう片方がアジア人に撮って貰った写真です。どちらが撮影者が、皆さんは分かるでしょうか?


正解は、①が西洋人、②がアジア人です。

皆さんはどちらが上手な写真だと思いましたか?私のお気に入りはアジア人が撮影した②です。

実はこれ、旅あるあるで、「写真を撮ってもらうならアジア人」と相場が決まっています。彼らは希望通り、撮影したい背景である山々と我々を撮影してくれます。

この特徴を上手く表したTiktok動画があります。これはイギリスで記念撮影をしてもらう際に誰に頼むか?というシーンを動画にしたものです。
(Twitterから方はSafari等の別ブラウザにて動画をご覧ください)

動画内でも、英国人に撮影をお願いした場合と、アジア人にお願いした場合で、結果が全然違っていますね。「記念撮影はアジア人にお願いする」ことについては私も大いに賛同します。

特に私は韓国人にお願いする事が多いです。インスタ映えや小顔効果などを熟知しており、彼らの撮影技術にはいつも感銘を受けています。


では、ここで質問です。西洋人はみな写真撮影が下手なのでしょうか?

もちろんですが、西洋人で撮影の技術を学ばれている方は、私なんかよりも遥かに撮影が上手なはずですし、厳密にいえば人によって撮り方も異なるはずです。しかしながら、世界一周中に、このような傾向が往々にして読み取れるのです。

一体何故、西洋人とアジア人でこんなにも写真の撮り方だけで傾向が出るのでしょうか?(決して人種差別をしたり「撮影が下手だ」と誹謗中傷する目的は全く無いことをご了承ください。)

②アジア人と欧米人の異なる捉え方が分かる研究について


実は、この特徴を明確に表している面白い研究があります。

ミシガン大学で日本人とアメリカ人のグループに、水中の様子を描いた動画を見せ、被験者に「何が見えましたか?」と質問する研究があります。


研究の結果、アメリカ人は「魚そのもの」について詳細に語り、日本人は魚だけでなく「魚以外の背景」について大いに語る傾向が見えました。

これは正しく、先ほどの例に示した、写真の撮り方に現れているのではないのでしょうか。

①の西洋人の写真は、我々が中心に存在するよう撮影し、②のアジア人の写真は、背景と我々の関係性が分かる撮影をしています。

②の写真の方が、背景と人物の関係性をより明確化している


ここで皆さんにお伝えしたいのが、写真の撮影方法が単なる個人の趣味嗜好ではなく、社会的・文化的なものに起因するという事実です。一体どのような背景があるのでしょうか。

③文化的背景の考察

このような傾向を紐解く上で重要なのが、それぞれの文化的背景です。アメリカは個人社会の傾向、日本は相互依存的な傾向であるという現れです。

西洋の哲学・宗教は、環境からとある事象を取り出して個別に分析するという傾向にあり、性質から一般概念を生み出す思考プロセスにあります。例えば、西洋の代表的な万学の祖アリストテレスは、水に浮く木片を見て「木片の軽さ」という性質と「落ちてくる石の重さ」という性質に着目し、別個の存在として語っています。

ギリシャの万学の祖であるアリストテレスの哲学は
事象を「別個の存在」として認識する


一方、中国の宗教や哲学は、古来より相互の繋がりに重きを置いており、仏教の基となる道教の考え方、様々な要素が互いに影響を与えながら宇宙の調和を「陰と陽」という概念を用いて、相反する要素のバランスを示しています。


この思考プロセスについて、『異文化理解力』( 著Erin Meyer)では、アジア人の全体から考える方法を「包括的思考」、西洋人の考え方を「特徴的思考」と呼んでいます。

西洋人は中心人物にフォーカスさせる傾向にあり、一方の包括的思考を持つアジア人は、中心人物と背景との関係性を考慮する傾向にあります。

これを裏付けるような面白い例もあります。これは、とある中国人の発言です。

「中国人はマクロからミクロへと考えるが、西洋人はミクロからマクロへと考える。たとえば、住所を書くときも、中国は省、区、地名、番地と書く。西洋人は反対に書く。 - 家の番地から始めて、それから市や州へと続けていく。同じ様に、中国人は苗字を先に書くが、西洋人は名前から書く。中国人は年、月、日と書くが、これも西洋人は反対側から書く。」

『異文化理解力』著Erin Meyer

「なるほど、そういう違いがあるのか」とこの文章を読んで腑に落ちました。包括的思考と特徴的思考の違いがこんな細かい部分にも表れていることに驚きを隠せませんでした。

こうした違いは、間違いなくビジネスにも多大な影響を与えます。我々はこれを事前知識として学んでおく必要があるということです。故に「異文化理解力」がグローバル人材としての必須教科であると言えます。

もしも貴方が外国人と働く際に、日本人から見て常識を逸脱した、許せない行動を垣間見る可能性があるかもしれません。

ですが、もしこれが国によっては普遍的な考えであるとしたら?相手のバックグラウンドを何も理解せず、単に相手を批判しているとしたら?事前に特徴を知っていれば、無意味な衝突を回避することができるかもしれないのが非常に怖いところです。

④まとめ

さて、これまで国柄によって様々な考え方があり、それが様々な所作に違いが出てくることをお伝えしてきました。

この記事におけるメッセージとしては、

ということです。

他にも様々な要素で、日本人と外国人は異なる価値観を持ち合わせています。下記は一例です。

① ハイコンテクスト、ローコンテクスト(はっきり物事を言うか、そうでないか)
② 原理優先・応用優先(演繹的思考か帰納的思考か)
③ 平和主義・階層主義(上司との距離が近いか、遠いか)
④ 合意主義・トップダウン式(決断が個人でなされるかグループでなされるか)
⑤ タスクベース・関係ベース(ビジネスにおける信頼は、人間的関係で構築されるか否か)
⑥ 直線的な時間・柔軟な時間(組織性か柔軟性か)


この記事において何度も取り上げた下記の著書が、上記概念を理解するうえで、大変勉強になりますので、気になった方は是非手に取ってみてください。特にグローバルで働かれている方は必読です。


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