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子どもを叱る自分を責めてしまうあなたへ。〜「褒めて伸ばす」の大いなる誤解①〜【ABAで発達支援】

こんにちは。公認心理師・臨床心理士の江原です。

 最近はあちこちで「褒めて伸ばしましょう」という言葉を聞く機会が増えましたよね。しかし、意外と多くの方が、微妙にこの言葉を誤解しているパターンも多いように思います。

そしてその微妙な誤解のために、「また叱っちゃったんです。本当は褒めなきゃとわかっているんですけど・・・」と悩まれ、時に涙する保護者の相談というのも少なくありません。

このように、心理として保護者の皆さんの相談等を受けていると,この言葉にまつわる誤解のせいで必要以上に苦しみ,悪循環に入っている方に多く出会います。

 そこで今回から数回に分けて,今やゴールドスタンダードのように叫ばれているこの「褒めて伸ばす」について少し解説させてください。微力ながら、この言葉のせいで悩まれたり,自己嫌悪で苦しまれている方が少しでも楽になるお役に立てば幸いです。

それでは,始めていきましょう。


「褒めて伸ばす≠叱ってはいけない」

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まずは、記事を書こうと思ったきっかけとなったこの誤解から始めましょう。

結論から言うと、「褒めて伸ばす」という言葉は、「叱ってはいけない」とイコールではありません。

こう聞いてあなたはどう思うでしょうか?当たり前だと思うでしょうか?
もしあなたが本当に心の底から当たり前だと思えていて、特に困っていらっしゃらないのであればこの記事を読む必要はないかもしれません。

 しかし実際のところ、意外と多くの人が「褒めて伸ばしましょう」と言われた時,「これまで叱ってばっかりだったなぁ」のような反省をして、「もっと褒めなきゃ」と思いつつ、いつの間にかそれが「叱っちゃいけない」と同じになっている、というパターンも珍しくありません。

そうして例えばお子さんのことを叱ってしまった時に、「またやっちゃった・・・」とご自分を責めてしまうのです。
ある意味、叱ってしまうことを恐れる「叱り潔癖症」みたいな状態と言えるかもしれません。


「褒めて伸ばす」の本当の力点

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もちろん、「褒めて伸ばしましょう」と言うからには褒められる場面が増えるに越したことはありません。しかし、かといって叱りで対応したこと=失敗ではありません

私の場合で言うと、例えば保護者にご説明する時には、「褒めて伸ばしましょう」は「叱らないようにしましょう」ではなく、あくまで【褒める部分も少しずつ確保し、できれば増やしましょう】なんだという部分に重点をおいてお話します。

 「結局同じじゃない?」と思われるかもしれませんが、私は重要な違いだと思っています。
どこが違うかと言えば、「褒めて伸ばしましょう」の話の中には、叱ることが悪いという話は一言も出てこないことを強調しているという点です。

子育ては、「現実の人」が、「現場」でやってるんだ!

誤解を恐れず言えば、叱ったっていいんです。叱りが必要な時もあるでしょう。何より、「もしかしたら褒めで乗り切れる場面かもしれないけど、現実としてそれが難しい」場面は山のようにあります。
いや、山のようどころか、そんな場面は宇宙ほどあります。

そういった場面の1つ1つについて、「また叱っちゃった」と保護者に反省してもらいたくてこの言葉があるわけではないのです
(ただし、当然ながら「どんどん叱ろう」という話では全くないのは言うまでもありません・・・)

 確かに、SNSでの揚げ足取りやTVの中の芸人に飛ばすヤジのように、私達の一挙手一投足について通りすがりの人間が客観的に考えれば、なにか他のやりようがある場面もあるでしょう。

しかし、子育ては24時間365日、現実の人間である私達が常に一人舞台に立ち、ゆっくり考える間もなくこなしているものなのです。十分に練習や下調べをした上で数分、数時間の舞台に全てをかけるのとは違って、ミスも名場面も玉石混交でごちゃごちゃなまま時間が流れ続けるのが普通なのです。

 そんな子育てを乗り切るための重要な視点も、ある意味で芸人さんたちのメンタルと似ているのかもしれません。
よく、「失敗をくよくよしている暇はない!」みたいな言葉がありますが、ある意味でそれに近い発想で、重要なのは叱ってしまった時よりも、褒めることができた時にどんどん注目していきましょうよ、ということなのです。言い換えれば、出来なかったことよりも出来たことに注目して、それをどんどんブラッシュアップする方向で考えるのです。

そもそもあなたは既に頑張っている

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叱ってしまったと思った時も、どうか「○○さんみたいな親だったらきっとうまくやるんだろうな」とか、「こんな親でこの子が可愛そうだ」なんてご自分を責めないでください。ついでに言えば、そうした考えが出てくることも、あなただけではありません。

 確かに、私はあなたのことをほぼ存じ上げません。それでも、こういう記事を読み、どうにかしたいと思い取り組まれている時点で、あなたは既にとっても頑張っているはずです。ぜひそのことを労ってあげてください。

繰り返しになりますが、叱ってしまった自分に注目するのではなく、褒めることができた時に注目してください。仮にごく稀だったり、たまたまであってもそんなことはなんのマイナスでもありません!

もちろん、褒めはしたけどうまくいかなかった、ということもあるでしょう。
でもいいんです。まずはそこに取り組んだことがとても重要ですし、その一歩にもきっと大きな勇気を使ったはずです。
うまくいかなかったところは工夫していけば大丈夫。工夫の仕方を検討するためにも良い相談先を見つけましょう。

どうしても周囲に信頼できる方が見つからず、私でも良いのであれば一度私にもご相談ください。出来うる限り一緒に次の一手を考えさせていただきます。

今後の記事でも様々な褒めのコツをご紹介します!

また、今後私の記事でも「褒めポイントの探し方」や、
「褒めるのが苦手な方もしくは褒められるのが苦手な子にどう対応するか」などについても記事化できたらと考えていますので、そういったものが少しでもお役に立てば幸いです。

ということで、今回のメインはここまで。
次回も「褒めて伸ばす」の誤解について取り上げる予定です。
具体的には、「褒めてばかりじゃわがままになる?」という誤解についてを扱ってみたいと思います。

なお、思いついた内容から記事化していますが、リクエスト等がございましたらご要望の多いものから優先的に記事化していきます。ご要望があれば早めにお聞かせいただいた方がお得ですので、ぜひぜひご意見・ご要望等をお聞かせいただければと思います。

おまけ:「最初から完璧」な親はむしろ害悪かも?

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最後に、私がいつも話すことなのですが、
最初から完璧な親であることは、必ずしも子どもにとって良い学びではないだろうと個人的に思っています。
おそらくそれはただのプレッシャーでしかないでしょうし、特に、子ども自身が親になった時にそれは重くのしかかる可能性があります。

そんな負の重圧を子どもに残すくらいならむしろ、親は親なりの苦手なことやこれまで出来なかったことに向き合っていくそのプロセスも含めて背中を見せる方が、子どもの人生全体を通して本当に役立つ「教え」になると思っています。

もし、今あなた自身は「なんだかうまくいっていないな」と感じておられるとしても、こういう記事を読む等、既に一歩は踏み出されているのです。ぜひ、その点は少なくともご自分を褒めてあげてくださいね。

と、最後は余談になってしまいましたがまた次の記事でお会いしましょう。

それでは。
心理の江原でした!

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