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登園自粛後から,子どもの首振りが増えたけど,どうするのが良い?【ABAで発達支援】

こんにちは。公認心理師・臨床心理士の江原です。

今回は,とある保護者の呟きからインスピレーションを受け,その方に許可をいただいて,つぶやきへのお返事代わりに記事化したものとなります。


その内容とは概ね以下のような内容。

「(新型コロナの感染拡大を防ぐための)登園自粛が開始してから、子どもの首振りが久しぶりに出てきたけど、これは自閉が増したから?
赤ちゃんの頃も,激しく首は振ってたけど」


確かに、今まで見られなかったり、しばらく見られていなかった不思議行動が出てくると心配になりますよね。

ただ、先に結論から申し上げると,おそらく今回の例ではあまりお気になさらずで大丈夫かと思います。
※あくまで今回のケースの場合のお話であることはご了承下さい。

以下,その理由についてご説明していきましょう。


そもそもこの首振りは何?

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 自閉的な傾向を持つお子さんに良く見られる首振りや手をヒラヒラ、部屋の中をくるくる回る、などのような行動のことを「自己刺激行動」と呼ぶことがあります。

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ちなみにリズミカルに体を揺らしたり頭を打ち付ける等の行動は,定型発達の乳幼児でも全体の80%にみられるという報告があり,4歳頃までには徐々に消失すると言われています。
※※※


これらは基本的に,「クルクルする感じ」や「目の前を何かがチラチラする感じ」など、自分の感覚を刺激(自己刺激)することで完結する行動です。

本人にとってのその行動の意義はケースバイケースですが、それをやることで「落ち着く」とか「楽しい」、といった意味があることが多いようです。


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自己刺激行動が出やすい場面は?

これらの自己刺激行動が起こりやすい場面例としては以下のようなものがあります。

①暇・退屈
②手持ち無沙汰,何をしたらよいかわからない
③なにかに集中している時
④慣れていない新しい場面,場所に行った時


この中でも,①暇・退屈や,②手持ち無沙汰,何をしたらよいかわからないといった状況で自己刺激が出やすくなる例というのは,スクールカウンセラーをしていても日常的によく遭遇します。

具体例としては,
・学校・園の休み時間
・おうちでのリラックス時間
・お掃除,給食準備・片付けの時間
・お勉強がわからない時
・先生からの次の指示を待っている時間
・先生や親の話が長くてよくわからなくなってきた時
などなどです。


逆に言えば,やることが明確で本人もそれに取り組んでいる時などは比較的出にくい場面ということになります。
※集中している時こそ出る癖もありますが・・・。


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なぜ休校・登園自粛で増えるの?

では,なぜこうした自己刺激行動が休校・登園自粛で増えるのでしょうか?
既にここまでお読みいただいた皆様の中にはお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが,学校・園に比べて,家での時間というのは【やることが明確でない時間】がどうしても生じやすいものです。
※それが悪い,という話ではありません。


仮におうち時間用の時間割を作ったり,やることを色々考えて与えていても,こちらは教育のプロでもありませんし,家事や他の兄妹への対応をしなきゃいけない場面も出てきますよね。
 そうした場面まで完全に構造化して,手持ち無沙汰を作らない,といったことは流石に難しいです。

そのため,家にいる時間が長くなればこうした暇つぶし的な自己刺激行動が増えるのはごくごく自然なことと言えるのです。加えて,おうちの方がリラックスしていればこそ増える,という部分もあるかもしれません。

※※※※※
ただし,以下のような場合はその限りではありませんので,一度かかりつけの小児科にてご相談下さい。
1)今まで出てきたことのない行動が突然出てきた場合
2)その行動をしている間の記憶がない
3)頭を打ったなどの,きっかけとして思い当たる節がなにかある
※※※※※

と言いつつ,今回のお子さんの例では「赤ちゃんの頃にみられて以降,登園自粛前まではなかった」ということですのでもしかしたら違うかもしれません。とはいえ,構造化されていない時間が増えるとそこで使う暇つぶしのレパートリーが総動員され,久々に首振りも登場した,という可能性はあるかなと思います。あくまでツイートを拝見した限りでの推測ではありますが,イメージとしては,暇すぎて昔の玩具も引っ張り出して遊んでいるような状態かもしれません。

 どちらにせよ,これは一時的な変化であると考えられますし,以下で説明するような対応を取っていけば改善していくものなので,特に心配する必要はないかと思われます。


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 やめさせたほうが良いですか?

 今回のようなタイミングで気になる行動が突然現れると,親としては心配ですが,その自己刺激行動で日常生活に支障があるわけでなければ特にやめさせる必要はありません。むしろ,それをやめさせようとしても実際にやめさせるのはおそらくかなり難しく,親子関係をいたずらに悪化させる可能性の方が高いかもしれません。


 どうしても気になる場合は,「やめなさい」のような声かけよりかは,「一緒に○○しようー」とか「ちょっと○○手伝ってくれなーい?」など他の活動に誘って気そらしするなどして,自然と止まるようにさりげなく誘導するのがオススメです。

自己刺激行動への対応一般原則

ここで,自己刺激行動への対応の基本原則を2つご紹介しておきます。

【①他の遊びや参加できる活動のレパートリーを増やす】
 上述した,他の遊びに誘うなどとも関連しますが,暇な時間・退屈な時間にできる遊びや本人が参加できる活動が増えてくると,自然と自己刺激行動も減ってきます。
 そのため,自己刺激行動そのものをやめさせようと手を尽くすより,他の遊びのレパートリーを広げるというのが基本方針となります。
 この方針は即効性があるわけではなく中・長期的な視点なのですが,自己刺激行動によって生活に支障があるわけでない限りは,あくまでこれを対応の主軸とするのが良いでしょう。


②自己刺激行動が出やすい状況を減らす
 例えば暇な時間や手持ち無沙汰な時間に自己刺激は増えやすいため,そうした時間を減らす工夫も有効です。
 時間割を作ったり,隙間時間や暇な時にして良いことをあらかじめ話し合っておく(ゲームは駄目だけど絵本,パズルならOKなど)といった工夫が考えられます。
 とはいえ,これらはあくまで対症療法で,そもそもそんなにやめさせる必要があるかどうかの検討や,主な方針は①であることは忘れないようにしてください。


おまけ:ストレスで増えるという場合はある?

 最後に,今回のお子さんの例とは別ですが,残念ながらおうち時間の過ごし方によってはむしろストレスがかかって増える,という例もなくはないかもしれませんのでそちらを補足しておきます。


 例えば,以下のような場合は注意が必要かもしれません。

・「おうちでもきちんと勉強させなくちゃ」と,無理にやらせようと躍起になり,怒ることや指示が増えた

・見たくなくてもお子さんがやっていることが目に入ってくる分,色々な指示(TVはきちんと座って見なさい!使ったら片付けなさいetc…)の波状攻撃をしてしまう。

 こうした時間が増えてくると,そのストレスを本人なりに落ち着かせる方法として自己刺激を使っている,という可能性も出てくるかもしれません。とはいえ,この場合にはおそらく保護者様ご自身にも思い当たる節があるかと思います。


 もし可能であれば,あえて離れる時間(子どもが何をしているかあまり目に入らない時間)が作れると良いでしょう。しかし,見てくれる人がいない,目を話すと危なすぎるなどの理由でそれがどうしても難しい場合には,例えば片付けであれば,1時間など時間枠を決め,片付けは各時間の最後にまとめてやればOKということにするなどの工夫を導入します。そうして,途中のグチャグチャには目をつむるよう自分に言い聞かせるなど,「目についたものを逐一叱らなくてよい」状況をいかに作るかというのが重要になります。


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以上,今回は,なぜ休校・登園自粛中に自己刺激行動が増えるのかと,それへの対応について解説してみました。

なにかわからないことなどあればコメント等にてご質問ください。

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それではまた次の記事で!


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