帝王学の書「貞観政要」から学ぶ組織運営のヒント ~ ⑦部下の真意を試す上司
現代の組織運営でも役に立つ貞観政要の話です。
貞観政要は7世紀の唐王朝で名君とされる太宗の問答の記録。
現代人にもわかりやすいよう原文にこだわらず、私の勝手な判断で表現を作り替えておりますことご容赦ください。
ある日、太宗にこんな助言をした者がいました。
「陛下の怒りを恐れず直言できる者は信頼できる者です。ぜひ一度、役人たちの前でわざとお怒りになって、信頼できる者たちかどうかを試してみてはいかがでしょう。」
すると太宗はこう言いました。
「川の水が澄んでいるかどうかはその源流の水がきれいかどうかによる。
私がウソ偽りの怒りを発して部下の信頼を試しておきながら、その部下たちに誠実さを期待するのは、川の源流の汚れを放置しておきながら川下の水の清らかさを期待するようなもので、無理な話である。
私は信頼を大切にしているから、自ら詐術を示すようなことはしたくない。」
以上
わざと清掃員のかっこうをして社員の言動をチェックする社長をテレビ番組で見たとき、なんとなくイヤな気分になりました。
水戸黄門というテレビドラマがむかし流行りましたが、あれに近いですね。
偉い人が庶民に化けて悪を探索し、懲らしめてくれる。
庶民はそれを見てスカッとするのですが、偉い地位にある人がわざわざそんなことをするのはムダというものです。
偉い地位にある人なら、悪がはびこってしまう仕組みを分析して組織を改善するのが本来の仕事のはずです。
ゴキブリを見かけて新聞でぶっ叩いて、それですっきりしておわりですか?
ゴキブリ退治はゴキブリホイホイに任せ、ゴキブリ出現の根本原因となる生ごみや腐敗臭などの心配をするべきではないですか。
役職にある者は、その役職でなければできない仕事を最優先で遂行しなければなりません。
部下に代わって残業することは管理職の仕事ではないように、清掃員に化けて社員の素行を監視することは社長の仕事ではないのです。
つまり、暴れん坊将軍も水戸黄門も、実在していたら史上まれに見るバカ将軍ということですが、さすがにそんなバカ殿は実際にはいなかったのです。
心理学として考えても、他者を試すようなふるまいは信頼関係を破壊する要因になります。
自分を試すような社長に本音を言えますか?
そういう社長のために全力を尽くそうと思えますか?
立場を代えて考えてみたらわかると思います。
川の水を清らかにしたいなら、源流をきれいにしましょう。
ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 <(_ _)>