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孫子野球7 「奇策だけじゃ勝てない!?正攻法=実力の重要性」

こんにちは! 英語と野球の先生、cozyです。

今回は孫子兵法から奇策と正攻法の関係を探り、
正攻法を運用する実力の重要性に迫りたいと思います。

よく指導者の話を聞いていると、強豪校を相手に戦う時、こういう思考の方は一定数いるように思います。
「今度は格上だから、エースでないサイドスローやサウスポーでかわしたいな」
「セーフティとエンドランで揺さぶって、どさくさでなんとか点が取れれば…」

この思考法は孫子のいう、いわゆる「奇」の実行を計画しています。
もちろんこれらには、奇策を使うことで、相手から主導権を握ることができる可能性があるというメリットがあります。
しかし、これだけで本当に有利に試合が進められるかには疑問が残ります。

このような孫子の言葉をみてみましょう。

戦勢は寄正に過ぎざるも、奇正の変は勝げて窮むべからず。奇正の相生ずること、循環の端なきがごとし。誰かよくこれを窮めんや。
(戦争の形勢は「奇」と「正」の二つから成り立っているに過ぎないが、その変化は無限である。奇が正となり、正が奇となるので、そのせめぎ合いには終わりがない。誰もこのことを完ぺきには知り尽くすことができない。)

これは孫子野球2の記事でも書いたのですが、端的に言えば、
「奇」は試合の展開によっては「正」になるということであり、
「奇策」を連発していれば、それらは相手にとって想定内の「正攻法」になることもある、ということです。

セーフティやエンドランだけを使っていれば、当然警戒されるようになりますよね。
私立の指導者の中には、毎回サイドスローやサウスポーを当ててくるので、「もう慣れたよ」という方もいます。そりゃそうですね笑

よって、
「奇策」だけでなく「正攻法」もなければ、やはり試合の主導権は取れないと言えます。

そもそも孫子は、相手を破るには奇策が重要と言っていますが
奇策だけで必勝の態勢が作れるとは、言っていません。

この言葉を見てみましょう。

「勝兵は鎰を以って銖を秤るがごとく、敗兵は銖を以って鎰を秤るがごとし」
(戦力差が極端にある時は、勝敗は必然のものにしかならない)

そもそも明らかに球威もコントロールも未熟な投手が変則であると言う理由だけで、9イニング格上の打者をかわし続けられるというのは、「楽観」でしかないです。
力がなければ外角のストレートには踏み込まれるし、スライダーはキレがなければ平気で見逃されます。球威がなければ変化球待ちでストレートを振り切られます。
投球術だけで相手打者から狙ってアウトを奪うことはやはり困難になってしまいます。アウトが期待できるのは、強烈な打球が野手の正面を突いてくれる場合か、ミスショットでしょうか。

セーフティバントを試みても生活なミートが困難である上に、剛球を投げる投手はスローイングが強いし、運動能力抜群でキレキレのフィールディングを見せてくることが多いです。(サードは言うまでもないです。遠投90m以上が当たり前です)
また格上の好投手相手にエンドランが決めることはそもそも簡単じゃないです。
打者のスイングスピードやミートスキルが一定のレベルになければ、「ゴロを」「狙ったところに打ち込む」のはとんでもなく困難です。

ここで孫子の言葉に立ち返って考えましょう。孫子の言葉から学ぶべきは、
「戦力差がある時は絶対勝てない。よって諦めろ」というところにあるのではなく、
「戦力差があるまま戦ってはいけない」ということにあるのではないでしょうか。



一定以上の実力を基にしたプレー(正攻法=実力)がなければ、
奇策は生きてきません。

ストレートに力がある投手がいるから、変則の投手の軌道とのギャップで苦しめることができたり、
変則投手にも一定のキレがあるからこそ、投球術が生きたりする。

攻撃側の強打に迫力があるから守備側は間を抜くヒットへのケアが生まれ、後退していく。だからエンドランが奇策になる。
相手投手のレベルについていけるスイングの精度があるからこそ、エンドランを成功させる素養が生まれる。

つまり

「正攻法を運用できる実力」 = 「奇策で相手を翻弄できる度合い」

となるわけです。


奇策は本当に重要で、時に相手を一気に翻弄することができますが、
本当に「勝つ」「必勝」「連勝」ということをゴールにするのであれば、
本当は弱者が弱者のまま強者に立ち向かってはいけないのです。

奇策を生かした試合上手になりたければ、
実力を磨いてから戦いに挑む努力を怠るなと、孫子に諭されているような気がするのです。

頭脳戦を大切にしているcozyですが、ハッとさせられる部分です。
練習では、アスリートとしての成長も大切にしていかねば、
実戦での戦術の運用は成り立たないと言うことです。
野球はスポーツなので、頭でっかちだけでは勝てないよな、と自分を戒めつつ、
実戦的な思考法の研究に努めたいと思います!




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