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The Get Up Kidsをレビュー①『Woodson』(1996年、EP)

The Get Up Kidsの1997年リリースのEP『Woodson』は、バンドの初期音源にして、エモの進化の物語における重要なチャプターだ。当時の力強いエネルギーと感情が詰まったこのEPは、バンドの未来を予感させる一枚であり、この手のリスナーにとってはエモの原石だった。

音源の基礎情報

タイトル: Woodson
アーティスト: The Get Up Kids
リリース年: 1997年
録音: 1996年11月、Red House Studios
ジャンル: Emo, Pop Punk

Personnel
・Matt Pryor - Vocals, Guitar
・Jim Suptic - Guitar, Backing Vocals
・Rob Pope - Bass
・Ryan Pope - Drums

1. イントロダクション

概要: The Get Up Kidsが1997年に発表したEP『Woodson』は、エモ・シーンにおける転換点を象徴する作品である。EPはシングルを組み合わせた内容で、1stアルバム『Four Minute Mile』に先立ってリリースされた。音楽的な土台となるエモとポップ・パンクのエッセンスが凝縮されている。

背景: 1990年代後半、エモは新たな音楽ムーブメントとして注目を集めていた。その中でThe Get Up Kidsは、激しい感情表現とメロディアスなアプローチで自らのスタイルを形成していた。『Woodson』はバンドがまだその粗削りな魅力を保ちながらも、メジャー化への布石を打った作品だ。このEPはエモの進化におけるマイルストーンであり、バンドが持つサウンドの原型を提示している。

2. トラックリストの紹介

1. Woodson
2. Second Place
3. Off the Wagon
4. A Newfound Interest in Massachusetts

代表曲の紹介:

  • 「Woodson」
    タイトル曲として本作を象徴している。Matthew PryorとJim Supticによるギターの絡み合いに続き、Ryan Popeの力強いドラムが加わり、全体を支えている。歌詞には、コミュニケーションの断絶や孤独感が強く表れており、バンドのエモの要素を鮮明に反映している。感情の爆発と激しい演奏がこの曲を特徴づけている。

  • 「A Newfound Interest in Massachusetts」
    EPの中でも特に注目すべき楽曲。穏やかなメロディと強い感情表現で織り成されており、故郷への憧れや不安といったテーマを扱っている。この曲はThe Get Up Kidsのミッドウェスト・エモの特質やメロディの美しさが際立っている。短めなのが惜しい。

全体の流れ: 『Woodson』全体を通して、一貫したエネルギーと感情的なテーマが流れている。「Off the Wagon」のような速い曲では、バンドのパワフルな演奏が堪能できる。そして、「A Newfound Interest in Massachusetts」で締めくくられるこのEPは、その激しさの中にメロディックな要素が込められており、バンドの音楽性の原型を示している。

3. アルバムのテーマとサウンド

音楽スタイルとジャンル: 『Woodson』は、エモとポップ・パンクが等身大の形で統合された作品である、強いて言うならポップ・パンクよりエモの要素が強め。The Get Up Kidsの特徴であるメロディアスなリードギターとパンキッシュなリズムセクションは既に際立っており、同時期にリリースされた『Four Minute Mile』と比較すると、より荒削りであるが、その分初期の勢いやエネルギーが感じられる。

歌詞のテーマ: 歌詞には、コミュニケーションの断絶、孤独、愛といったテーマが込められている。「A Newfound Interest in Massachusetts」では、故郷への思いや不安。全体を通じて、感情の吐露が核となっており、エモコアの本質が明確に打ち出されている。

4. 評価

『Woodson』に対する評価はリスナーによって分かれる。初期のThe Get Up Kidsの粗削りサウンドに魅力を感じるファンもいれば、ボーカルや演奏や個性に対して弱さを感じる意見もある。音楽的ルーツが近似しているのか同時期のSave the Dayによく似ているし、先輩にあたるJawbreakerやSunny Day Real Estateほど野心的でもなく、Jimmy Eat Worldほど洗練されてもいない。この一見冴えない少年たちが心や肌を搔きむしるように叫ぶ青臭さが、音楽性とうまく融合しているからこそ初期のThe Get Up Kidsは飽きない。(個人的評価: ★3.5/5)

5. 総括

EP『Woodson』は、The Get Up Kidsの初期のエネルギーと感情が詰まった作品であり、当時のエモ・シーンを語る上で欠かせない一枚である。EP全体を通じて、バンドの情熱とメロディセンスが光り、彼らを代表するフル・アルバムの陰に隠れるには惜しい存在だ。エモのリスナーや、90年代のパンク・シーンに興味があるリスナーには、是非一聴を勧めたい。

6. 関連リソース

EP単品としての配信はないので、後年に出た『The EP's: Red Letter Day and Woodson』を貼っておいた。このアルバムのトラック6~9がEP『Woodson』の内容になる。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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