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「学習支援」の現場か


 昨年01月26日から
小中学生への学習支援で得た知見を基に
色々書き始めて71回目です。

「学習支援をしています」と話すと
「それは、とても立派ですね。教えるなんて私にはできない」
と答える方が大半ですが、
まずは、現場の実情から、ご理解いただきたいと思います。

 「学習支援」の場に現れる小中学生は
多くの場合、一定の年収以下の家庭です。
更に、学校授業の理解度が不足していると判断されています。
 前者の基準は、主に住民税の納付状況で判断され
後者の基準は、教育現場からのフィードバックであるようです。

 つまり、公共福祉の面からと教育行政からの二面が、選択理由になっているようです。
 ところで、現実の小中学生を観察していると、5つの大きな問題点が見えてきます。

①まず、年収での判断には、税法上のやりくりという抜け道があります。
 そのため、「夏休みは、どうする?」と聞いてみると「ハワイ!」なんて答えが返ってきて、びっくりすることが、しばしばあります。
 こうした生徒は、学力に問題を抱えていない場合が多く、いくつかの学習塾をかけもちしていることがあります。
 保護者側でも「学習支援」に、そんなに多くを求めていません。
タダで通える学習塾というような理解でいる場合が多いようです。
 生徒も、「学習支援の先生たちは優しいから、寝てても文句を言われない」なんて言ってたりで、ある種の避難所となっています。それはそれで、安心できる場を提供しているという存在理由があるようです。

②「学習理解に遅滞が見られる」という小中学生には、「学習障がい」ギリギリ、いわゆるグレーゾーンにいる場合、強制される「学習」に嫌悪感を持っている場合、先生が嫌いとかクラスが嫌いという場合、いじめにあっている場合、反抗期を迎え自己肯定感を得られなかった場合など、多岐に渡る要因が考えられます。
 いずれにしても、遅滞の原因を探りつつ、対応を考えるということになります。
 どう対応すればいいのかは、場合により異なりますが、まず、味方であることを理解してもらい、次いであまり急がず、一人一人の理解度に合わせ学習内容を解説しています。
 しかし、一概に「こうすれば」という答えが見つかりませんので、その都度対応方法を探ってゆくことになります。

③両親共仕事をしてたり、片親のため仕事が忙しく、家庭内で相談相手がいない場合や、生活状況が特殊で、前記同様な状態の場合。
 まずは相手と同じ目線に立ち、話しをする相手になることが必要です。
 その先で、生徒の持っている問題点を見つけ、相談しながら解決方法を探り、学習への動機づけを探ってゆきます。

④住環境が劣悪で、家庭内でジックリ学習できない場合もあります。
 専用の学習机がないとか、台所で学習しているので気が散るといった問題があります。
 一番たいへんな状況です。
 本人は学習意欲があるのに、それが環境的に実現できないため、フラストレーションがたまりっぱなしです。
 そうはいっても、毎日開催している行政支援の学習支援は、ほとんどありません。
 なので、自主運営の「居場所」とか公共図書館を併用する学習計画を一緒に考えることになりますが、実行できるかは本人の意思にかかってきます。

⑤最近は、母語が日本語以外である程度教育を受けたという生徒も増えました。
 日本語は、表現文字が「かな・カタカナ・漢字」と多様で、しかも主語の省略や言い換えの多さなどが頻発するので、決して習得が楽な語学ではありません。
 まず、口頭言語に慣れてもらうあたりから、少しづつ理解を深めているようです。

 というように、問題を抱える生徒全てに、決定的な解決策を与える術はありません。
しかも「学習支援」では、結果として「学習内容への理解度が高まる」ことが求められるので、あまり生徒個々の問題点や躓き要因の解決に力を入れるわけにもいかないのです。


 こう考えると、「学習支援」とは、「勉強を教える」ことよりも「勉強に慣れる」ことを主眼にして、ボランティアと一緒に「学習」内容は伴走しながら一緒に考えるようにしたほうが理解度が高まりそうですね。


 どうでしょうか?
 これをお読みの皆さんの持っている、対人スキルさえあれば、一緒に活動ができると思えませんか?
 「学習支援」は一対一の関係性からの方が成立しやすく、そのため、どこでも人手不足です。
 どうか、一度ご近所の「学習支援」を訪ねてみてください。

 

保護者の皆さんや 子どもたちの学習に関与している方々へ

 「学習」は必ずしも、教科書とワークブックだけではありません。

 折り紙を折ったり、言葉遊びのカードゲームやカルタをしたり、場合によっては絵を描くことでも可能です。
 教科別に考えると、なかなか理解できないでしょうが、
地図を理解するところから、環境・気候といった理科の領分に移項も可能ですし、歴史から社会の仕組みを類推できます。
 同様に、「算数」や「数学」を方程式を覚え数式を解くことではなく、「問題をどう考え、どう解いて、解答を得るのか」というクイズと見直してください。きっと、面白い場面が見えてきます。
 言語系の教科では、言葉は「自分の意思を相手に伝える事」で「一番近い相手には、話して聴く」ことから始まる点、「話し声が聞こえないときに、文字が必要」ということから、次第に文字の仕組みや、文章の読み方などを解説してゆくと、理解が早まるようです。

 子どもたちにとって
身近にいて、いつでも見守ってくれる存在は
とても貴重です。

03.AUG.2022.ARAI