脚本『リボンを結ぶ』
【高校の演劇部勧誘舞台】
新入生歓迎会 持ち時間:五分
(新歓だが、部活紹介などはしない。→そのかわりチラシなどで、活動日や内容などすべて明記する。)
登場人物
A(仁美):
B(愛) :
?(?さん):
?舞台上で一人。客席側に誰かがいてその人に対して話しかける。?の言葉しかないが会話が成り立っている。
●スポットライト?さんにだけ向けて。
?「電車を逃して、ずいぶん長い間待っているんですか?それは大変ですね。あぁ、あと五分で来る。あと五分も待たされる。そういわれたら、そうですね。じゃあ、私の話を聞いてくださいよ。この近くに、高校があるんです。そこはね、割と都心なのに近所にはお墓しかない」
A,Bが出てくる。
?「ある女の子が言いました。『怖いし不気味だからこの学校、嫌』」
?とAの言葉が重なるように。以下、AとBの会話に入る。
●嫌だ、で舞台ライトサイドライト明転。入れ替わるようにしてスポットライト消える。
A「怖いし不気味だからこの学校、嫌だ」
B「もう、すぐそういうこと言うー」
A「え、だって嫌じゃない?学校出たらすぐ墓、どの角度から外を見ても墓。ほんと、お墓しかないっ!」
B「それは言いすぎだよ」
A「かもだけどっ!それぐらい怖いのよ」
B「こう考えたらどう?私たちは生と死のはざまで生きているっ!」
A「えらくかっこよく言うな」
B「でしょでしょ?」
AB舞台中央で座り込む。
A「まあ勢いだけだけどね」
B、相槌としてえぇー的な表情で。
A「あとさ、この学校の怖いのはさ、学校のいたるところに結ばれているリボン」
B「リボン?」
A「ほら、いろんなところにあるじゃない」
B「リボンー?そうだったっけ?」
A「見たことない?」
B「記憶にないなぁ」
A「本当に?」
B「うん。それの何が怖いのさ?」
A「誰もあのリボンの話をしないの。誰も見たことがないっていうの。わたしは入学した時からこの学校のいろんなところに結ばれてるのを見てる。なのにっ、誰もあのリボンを知らない」
B「いろんなところって例えばどこ?」
A「教室、窓のカギ、運動場、あ、ほらあそこにだって」
スポットライトのほうを指をさす。Bには見えていない。
B:立ち上がり目を凝らす
B「えー」
A「見えない?」
B「んー?」
A「そっか、じゃあ、あれは一体、なんなんだろうか…(ゆっくり悲しそうに)」
B「別になんだって、いいんじゃない?」
Bふらふらと歩き回る。
A「なにそれ、ひどくない?」
B「そうじゃなくてさ、見えてるんでしょ?」
A「うん」
B「仁美には結ばれたリボンが見えている。でも私には見えない」
A「……」
B「だけど、仁美には見えている。私には見えないものが!それって素敵なことじゃない?」
A「え?」
B「ほかの人には見えないものが、仁美には見えてるんでしょう?何も怖いことなんてないよ。私も見てみたいなぁ」
A「ふふ、あんた、ホントはいいやつだったんだな」
B「知らなかったのー?」
A「調子乗るなよぉ」
A「あ、ねえ、仁美は本当に見えてるの?」
A「え?なに?リボン?」
B「うん」
A「見えてるんだよなぁ」
B「じゃあ、あの人は?」
B、?のほうを向って指をさす。
A「え?」
B「あ、見えないのか。いいのいいの。帰ろっか」
A「え?…なに?!何の話っ?!」
●スポットライトがつく。
AとB走ってはける。
●舞台ライト、サイドライト消える。
?「あぁ、五分経ちましたね。電車来ましたよ。私の話はどうでした?まあ時間はつぶれたでしょう。物事を悪いほうにばかりとらえないでください。そして、自分を疑うこともお忘れなく。また会えるのを楽しみにしています。ところで、私のこと見えるんですか?では、さようなら」
?さんが去って行って、椅子とライトだけが残る。
●スポット消える。 ●舞台ライトついたら、役者出てきて一礼する。
END
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