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【COVID-19】在留外国人向け多言語情報発信を再開します

このほど、主に首都圏の日本語での情報取得が難しい方々に向けて多言語での情報発信を行うウェブサイト「COVID-19 多言語情報ポータル」の運営を再開する運びとなりました。

これに伴い、TwitterFacebookでの最新情報配信も順次再開する予定です。

<団体概要>

我々、「COVID-19 多言語支援プロジェクト」は、東京外国語大学の在学生と卒業生を中心として、2020年4月1日に結成されたボランティア集団です。同年8月2日に活動を一時休止するまで、以下の活動を行ってきました

①多言語情報発信活動
新型コロナウイルスに関して政府や首都圏(注1)の自治体、大手メディアから日本語で発信される情報を収集し、16言語(注2)に翻訳してウェブサイトに掲載してきました。これにより日本に滞在する外国人の方々が、ウイルスから自分自身と周囲の人の身を守り、安全にかつ安心して日本での生活を続けるための一助(注3)となることを目指してきました。また、ウェブサイトに掲載した情報をTwitterやFacebookで拡散し、在留外国人と繋がりがある日本人の力も借りながら、情報を当事者まで届ける試みをしてきました。私たちのウェブサイトは現在までで、約2万2000セッションを記録しています。

注1: 東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県の1都3県
注2: やさしい日本語、英語、韓国語、簡体字、繁体字、フランス語、スペイン語、イベリアポルトガル語、アラビア語、ベトナム語、ドイツ語とタガログ語、インドネシア語、ブラジルポルトガル語、ウルドゥー語、ネパール語(公開日時順、ネパール語翻訳は(株)アークコミュニケーションズより提供)
注3: 日々の感染予防策および新型コロナウイルスの感染が疑われる際の相談窓口について、特別定額給付金や住宅確保給付金などの経済支援、雇い止めにあった方の相談窓口などの情報を掲載してきました。

②アドボカシー活動
今回のような非常事態において、現在日本に滞在している外国人の方々がどのような情報障壁にぶつかるのか、ウェブサイトに設置したアンケートを通して調査してきました。また、アンケートやウェブサイトでの情報発信活動を通して得た知見をSNSで発信したり、メディア掲載(注4)や講演の場で発表してきました。これによって、非常時・平常時問わずの多言語情報発信の重要性とそのあり方について、一般に広く周知し議論のきっかけを作ることも目的としてきました。

注4: 共同通信、日本経済新聞、毎日新聞、月刊自治研、The Japan Times、Japan Today、東京外国語大学 学長対談、アセナビ 他取材あり

当プロジェクトは、まず4月21日に「やさしい日本語」と英語でウェブサイトを公開し、多くの反響と応援をいただきました。それと同時により多くの言語で情報を届けることを目指し、情報収集・整理や原稿の翻訳などにあたるボランティアスタッフを募集しました。SNS上や人脈を通じた呼びかけに応え、東京外国語大学の在学生だけでなく卒業生、他の大学の関係者、一般の社会人の方々など80名以上の有志が集まりました。5月の大型連休頃からボランティアスタッフも含めた作業を開始し、たくさんの方々による懸命で緻密な作業に助けられながら、合計15言語での情報発信を行ってきました。さらに、6月には株式会社 アークコミュニケーションズからネパール語翻訳の提供を受けました。このように当プロジェクトは、多様なバックグラウンドの市民がその活動趣旨に共感し、日本語での情報取得が難しい方々が抱える情報障壁を小さくしようと協働する場となってきました。

以上の活動に取り組みながら、7月には経済対策・支援制度が大方出揃っており、あとは順次それらの実施が始まっていくのみだろうと判断したため、7月末で新規の情報発信・更新及びボランティアスタッフの活動を一旦終了しました。

<活動再開に至った経緯>

夏ごろまでで新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、必要な情報をすべて発信できると判断した一方で、秋にかけて感染再拡大の可能性があることも認識していました。そのため、活動休止中も社会情勢に関する情報収集を続けつつ、感染再拡大を前提とした新しい運営の構築や、情報発信の再開に向けた新たな活動方針の策定を行っていました。

実際に、政府の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」は、2020年11月12日の第15回分科会で新規感染者数について「全国的には8月第1週をピークに減少傾向にあった後ほぼ横ばいであったが、10月以降増加傾向となり、11月以降増加傾向がより強いものとなっている」と述べています。具体的な新規感染者報告数の推移を、以下のグラフに示します。

全国_新型コロナウイルス感染症対策分科会(第17回)(配布資料)資料1, p.4

出典:「新型コロナウイルス感染症対策分科会(第17回)(配布資料)資料1, p.4 」(首相官邸ホームページ)(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/bunkakai/corona17.pdf)を加工して作成

感染者数が増加していくなかで政府は、感染予防策を組み込んだ「新しい生活様式」を、より徹底して実践する必要性を再強調しています。また、経済への打撃は引き続き甚大で、廃業や失業が相次いでいます。それに伴って、すでに行われている支援制度や行政手続きの要件緩和などにつき詳細が変更がされるなど、更なる対応が行われています。11月10日には、菅首相が追加経済対策の策定と、第三次補正予算の編成を指示しました。
新型コロナウイルスの感染拡大は、生活が厳しくなっている人へ行われる支援の内容や実態を日々変化させているのです。

以上のことからプロジェクトの活動休止から現在に至るまで、言語の壁などから必要な情報にアクセスしにくい在留外国人の方々にとっては、特に不安を感じやすい状況が続いているといえます。

11月5日(木)に開催された、東京都「新型コロナウイルス感染症 モニタリング会議」では「日本で暮らす外国人の間でもクラスターが発生しているとして、彼らの言葉の違いや生活習慣に配慮して、情報提供や支援をすることが重要だ」との呼びかけがありました。

さらに、在留外国人の方々が体調が悪い時にすぐ相談できて、早く病院に行けるようにつなぐことができる仕組みづくりおよび、分かりやすい日本語で伝えるなどの、きめ細かい支援の必要性も強調されています(参考記事はこちら)。政府が11月12日(木)に開催した「第15回 新型コロナウイルス感染症対策分科会」においても、感染予防や医療アクセス向上のため、在留外国人の方々を対象に必要な情報をわかりやすく発信することの重要性が呼びかけられています(参考資料はこちら)。

また、こちらは今年4月の記事ではありますが、感染への不安を抱えたり、企業に内定を取り消されたりした在留外国人の声が紹介されています。さらに、本プロジェクトによるアンケートでも、自分はどのような経済支援を受けられるのか、自分が感染した際にどのような行動をとればいいのか分からないという不安の声が届けられました。
在留外国人の方々がこの非常事態下での不安を解消し、安全・安心な日本での生活を送ることのできるようにするには、こうした多様な情報ニーズに、きめ細やかに対応していくことが欠かせないでしょう。

また、非常時でも在留外国人が安心して暮らせるような環境を作るには、多様な情報のニーズに応えるだけでなく、地域コミュニティ内の繋がりも鍵になります。
既存の複数の調査においても、当プロジェクトによるアンケートでも、支援が必要になった時にまず助けを求める人は「自分の近くにいる日本人」だという回答が最多でした。ですが、彼らの近くに「日本人の知り合い」がいない場合はどうなるでしょう。
日本人の側でも、いざというとき助けたいという気持ちがあったとしても、緊急時にいきなり面識の無い人に支援を申し出るのは決心が必要です。非常時の素早い助け合いに繋げられるよう、例えば料理教室や文化教室などの国際文化交流を通じ、普段から関係性を構築しておくこと、生活の様子や特別にサポートが必要なことを把握しておくことが重要になってきます。

日本では、新型コロナウイルスが猛威を振るう以前から、建設業や農業、漁業、サービス業といった国の基幹となる産業で、多くの外国人が働いています。そしてその一人ひとりが、それぞれの生活を懸命に生きています。いまや、在留外国人の方々は日本という国を支えるだけでなく、この社会を共に形づくる一員です。一方で災害やパンデミックなどの非常事態が発生すると、私たちは自分を心配することで精一杯になり、彼らの存在を忘れがちではないでしょうか。
また、文化や言語の違いに制約を受けることの多い彼らを、「弱者」と見なしてしまいがちな傾向もあります。しかし、彼らは本来、単なる「助けてあげるべき」存在などではなく、共に地域コミュニティーを形づくる存在です。「我々はいまの社会でどうあるべきか」を共に考えていくべき存在なのです。

その上で、非常事態において言語の壁を越えて一人ひとりまで確実に情報が届き、地域社会とのつながりも確保され、安心してこの国で過ごすことを可能にするシステムの構築は必要不可欠になるでしょう。今回のような感染症だけでなく、毎年のように豪雨や地震などの災害に見舞われるこの国にとっては、このようなシステム構築は急務であると言えます。

ですが、行政による情報の多言語化は普遍的なものであるとは言いがたく、多言語化が行われていたとしてもその掲載情報は限られており、各言語の特性や、在留外国人目線での情報ニーズにまで配慮が行き届いているとは言えない状態です。また、必要な情報にたどり着くまでの導線がオンライン・オフライン共に複雑で、利用者の目線からは分かりやすく整備されているとは言いがたい状況です。
また、在留外国人が日本での生活に対して抱える不安を解消するための、地域コミュニティに根ざした公的な仕組みづくりも、行政のマンパワー不足、当事者個々人が抱える多様なバックグラウンドに合わせた対応が難しいなどの理由もあり、進捗が生まれづらいのが現状です。
上記のような事例の対応だけでなく、行政が処理しなければならないニーズはもはや星の数ほどあります。行政のマンパワーには限界があり、残念ながらその全てを拾い上げられるわけではありません。

当プロジェクトは、「このような”行政のマンパワーの限界によって取り逃されてしまったニーズ”を、そのまま見過ごすのではなく、一般市民がそれぞれ得意なことを活かして掬い上げることもできるのではないか」という思いのもと始まっています。当プロジェクトを通して、よりたくさんの人が生活に必要な情報に確実にアクセスできる、より暮らしやすい社会を実現するために、私たちにできることはまだたくさんあるはずです。

<活動計画/その他>

現在やさしい日本語、英語、韓国語、繁体字、ブラジルポルトガル語、タガログ語、ウルドゥー語での翻訳活動を再開し、情報発信再開の準備をしています。
今後より多くの言語での情報発信再開を目指し、新たなボランティアスタッフ募集も開始しています。

また、今後の活動は、2021年夏ごろまでを目途に行う予定で、その後プロジェクトを継続させるか否かは現時点で未定です。
具体的に行う活動の内容や、活動を通じて大事にする価値観などについては、以下の記事でご覧いただけます。

プロジェクトの中核は大学院進学を控える卒業生や在学生、まだ社会に出て間もない若者たちにより運営されています。至らない点もあるかと思いますが、どうぞ忌憚ないご意見を賜れれば幸いです。

もし身近に外国からいらっしゃった方、日本語では情報取得が難しく困っている方がいらっしゃったら、上記のウェブサイトを教えていただけると大変に助かります。
また、TwitterとFacebookでも更新情報を随時配信していますので、拡散いただけますと幸いです。

何かプロジェクトについてお気づきの点、伝えたいことなどございましたら、以下の連絡先までご連絡ください。
メール:covid19.multilingual.jp@gmail.com
宛先:COVID-19 多言語支援プロジェクト
代表 加藤 万結(かとう まゆ)

完全ボランティアワークですが、ウェブサイトの運営に少額ながらかかる費用を賄うため、ほんの少しだけご支援いただけますと幸いです。首都圏に住む外国人の方が周囲にいらっしゃれば、ウェブサイトやTwitter、Facebookを拡散いただけるだけでも大きな助けになります。