S, 査読論文のみで知るコロナ後遺症の機序と治療法①~抗ヒスタミン薬の4本の臨床論文の比較検討と2つの作用機序~

はじめに

このnoteは、『査読論文のみで知るコロナ後遺症の機序と治療法』の第1弾、抗ヒスタミン薬でコロナ後遺症を改善させた4本の臨床論文とその機序を説明した記事です。

この記事で具体的に記されているのは主に以下の2つの論点です。

  • 抗ヒスタミン薬を使用してコロナ後遺症を完治or改善させた臨床論文が現在のところ4本存在する。この4本の論文すべてで、処方薬や用量が異なっている。これらを一覧にして比較検討し、何を試すべきか、選択肢を整理して提供する。

  • 「どうして抗ヒスタミン薬がコロナ後遺症を改善させるのか」。これを2つの機序に分類して説明し、機序を理解した上で治療に臨むことができるようにする。機序を理解して治療することで、症状や原因を確実に1つ1つ潰しながら次の治療に移ることができ、効いても効かなくても必ず一歩一歩前進することができる。


上記2つの論点は、論文の表層的な比較や単なる機序解説に終始するものではありません。

まず、2023年以降のLong-COVID関連論文800本以上、またコロナ後遺症とヒスタミンの関連論文の200本程度の読み込みという地道な作業に下支えされています。

次に、その中から45本の論文を厳選して引用しているだけでなく、コロナ後遺症を理解する本質的な視座の1つになりうる重要な実験結果を起点として、複数の論文を総合的に考えた結果現れてくる視点も記しています(創発的な観点がある)。SNS等に出回っていない情報も数多く記されている記事であると自負があります。

想定している読者

想定してる読者は、基本的に、現在コロナ後遺症の症状を有している方々です。
時期としては、後遺症になったばかりの方、治りかけの方、治療に手詰まり感が出た方。どの時期の方にとっても抗ヒスタミン薬の使い方があることを伝えられるかと思います。
というのも、機序を理解することで、自分の状態ではどういう使い方ができるのか。それを深いレベルで考えることができるからです。

また、ブレインフォグの方々に読んでもらうことも想定して、具体的な処方薬と改善率だけを簡潔にまとめた項も用意しました。

改めてになりますが、4つの臨床論文では処方がすべて異なっており、これらを比較することはリスクヘッジのためにも必要不可欠で、まずはそこだけでも読む価値があると思います。
(※私としては機序を理解することを特におすすめします。また具体的な治療行為を行うつもりはなく、機序を伝えて、選択肢とその根拠を伝えていくという趣旨の記事です。製薬会社との利益関係も一切ありません)

今回の記事を執筆するに至った経緯と今後の予定

ところで、私自身もコロナ後遺症で苦しんだ当事者でした。
一番苦しかった当時を振り返って思うのは、SNS等で無料で得ることのできる情報は多いが、
「どうしてそれが効くのか」、
「効くとしてほかに代替手段はないのか」、
「どれが論文等に基づいている信じられる情報なのか」
といった情報が不足してすごく困ったということでした。

私の経歴は以下に記してありますが、症状が寛解して1日数kmのジョギング等も可能になった今、コロナ後遺症患者を改善させた臨床論文、ならびにそこで用いられた薬やサプリの用量と機序がまとめられたものを、自分の経験を生かして一連のシリーズとしてわかりやすくまとめる仕事をする必要があると、強く感じるようになった。
それが今回の記事を執筆することになった経緯です。

また、コロナ後遺症についてはそもそも臨床論文が多く存在していません。自分で試せる具体的な治療法を提示した臨床論文となると、信頼できそうなものは抗ヒスタミン薬、アルギニン(シトルリン)、副腎疲労(中心のサプリ群)の3本だけでした。

そこで今回の記事でまず、抗ヒスタミン薬を用いてコロナ後遺症を29%、20%寛解、あるいは認知機能を改善させた計4本の臨床論文について記します。
約53.000字の長い記事ですが、量だけではなく質についても大きな自信があります。
もちろん読みやすいように目次も用意しています。

今後は、ひとまずアルギニンと副腎疲労の臨床論文についての記事と、私たこわたの寛解に特に寄与したEGCGとグルタチオンがコロナ後遺症に効く機序についての記事を執筆する予定です。

今回の抗ヒスタミン薬noteおよび『査読論文のみで知るコロナ後遺症の機序と治療法』の一連の記事が、みなさんのコロナ後遺症完治のための一助となることを、心から願っています。

たこわた。

[著者経歴]
慶應大学卒業後、京都大学大学院の博士後期課程を卒業し、大学院生の間に生物学者R.ドーキンスと人類学者M.モースの間の理論的往還を試みた共著書を出版。査読論文複数。メディカルハーブ資格所有。英語アカウントで日本のコロナ後遺症情報の発信。その他Twitter(X)のスペースでコロナ後遺症の基礎理解を紹介。Twitter(X)@tako_wata



導入~抗ヒスタミン薬について

まず導入として、この記事の主題でもある抗ヒスタミン薬について簡単に説明をしていきます。

抗ヒスタミン薬とは

そもそも抗ヒスタミン薬とは何か。
抗ヒスタミン薬とは、一言でいえば、炎症やアレルギーを抑える薬です。
レスタミンコーワやガスターと呼ばれている市販薬にもあるように、かゆみを抑えたり、胃腸の症状を抑えたりします。

また、ヒスタミン受容体にはいくつかの種類があり、新型コロナウイルスに対しては、そのうち2つが治療標的になっています。
導入という役割も込めて、2本の論文を介して、抗ヒスタミン薬と新型コロナウイルスの関係について簡潔にまとめていきましょう。

日本語訳で「COVID-19ヒスタミン理論:なぜ抗ヒスタミン薬をCOVID-19管理の基本要素として組み込む必要があるのか?」(2023年2月)と題された論文には、次のように記されています。

ヒスタミン受容体にはH1, H2, H3, そしてH4の4つの種類があります。 これらのそれぞれすべてが、ヒスタミン経路において役割を担っています。病理学的には、ヒスタミン経路は、免疫反応と炎症を有意に調節できることがわかっているます(Histamine pathways has been found to significantly be able to modulate immune response and inflammation)。・・・これらのことから、ヒスタミンは治療標的として重要なサイトカインの一つです。・・・ヒスタミン受容体の中でもH2およびH1は、Covid-19の病態に関して研究者の間で臨床的に最も注目されています。

(0-1)

ここでは抑えるべきは2点のみです。

  • ヒスタミン受容体にはH1,H2,H3,H4の4種類があり、新型コロナウイルス(COVID-19)においてはH1とH2が治療標的となっている

  • ヒスタミンは、免疫反応や炎症とも関係がある。


これを踏まえて、もう1本論文をみていきましょう。

以下は、日本語訳で「ヒスタミン放出理論と新型コロナウイルスにおけるサイトカインストームの治療における抗ヒスタミン薬の役割」(2020年9-10月)という論文の引用となります。

ヒスタミンは、・・・肺、皮膚、消化管に高濃度で存在します。ヒスタミンは免疫系の局所メディエーターとして働きます。ヒスタミンは、走化性、サイトカイン産生、胃酸分泌などの複雑な生理学的変化をもたらします。・・・H1R(※ヒスタミン1受容体の略=Histamine-1-recepter)は、神経細胞、内皮細胞、副腎髄質、筋肉細胞、肝細胞、軟骨細胞、単球、好中球、好酸球、樹状細胞(DC)、T細胞、B細胞など、さまざまなタイプの細胞に発現しています。・・・H2Rは胃粘膜の壁側細胞、筋肉、上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、肝細胞、免疫細胞に発現しています。H2Rは、H1Rによって媒介される作用の一部に拮抗し、平滑筋細胞の弛緩をもたらし、血管拡張を引き起こします。

(0-2)

こちらの論文では、ヒスタミン受容体の存在する場所について的確にまとめられています。
ここでも、専門用語は読み飛ばし、導入に必要な部分だけを論点整理していきましょう。

  • ヒスタミンは、肺や皮膚、胃腸管に高濃度で存在する。

  • ヒスタミンは、サイトカインや胃酸分泌とも関係がある。

  • H1とH2受容体では多数存在する場所が異なる。=※薬の種類によって効果のある器官が異なってくる。

  • H1とH2受容体は相互作用する。

ひとまず今の段階でわかっていただきたいのは、この記事の主題であるヒスタミンが専門論文レベルではどのような論じられ方をしているのか。そのおおまかなイメージを掴むことです。

また、表面的な情報をさらうだけではなく、このnoteがどの水準の深さで議論をしようとしているのか。その一端でも伝わればよいなと思って引用をしてみました。
本文では、以上のように論文を引用しながら、基礎情報の整理にとどまらず、抗ヒスタミン薬を用いた治療について、様々な観点から深堀りしていきます。

コロナ後遺症における抗ヒスタミン薬の使われ方

さて、現時点において(2023年10月時点)、抗ヒスタミン薬をコロナ後遺症治療に用いる場合、大まかにいって2つの機序を想定することができます。

1つ目は、炎症を抑える作用を利用した対症療法的なアプローチが主眼となった機序です。これは、〇〇細胞へのアプローチと言いかえることもできます。

2つ目が、新型コロナウイルスの某機構へのアプローチとなります。2つ目のアプローチは、ブルドーザーのように論文群を読み通すことで見えてきたもので、現在のところSNS上ではまとまったものはおろか、断片的な情報としても(おそらく)出てきていないと思います。

用量、投与期間について

また、今回紹介する投与薬は、基本的に、すべて市販で購入できるものですが(あるいは市販薬で代替できるものです)、後遺症患者を改善させた容量は、市販薬に記載されている推奨量とはすべて異なっています

つまり、薬の名前だけを手に入れて、その市販薬の推奨用量を守って服用したとしても、コロナ後遺症に対して効果のある分量を体内に十分に取り込むことができず、時間もお金も(数千円は無駄にするのでしょうか)無駄にすることになる可能性があります。
また反対に、過剰摂取をしてしまい身体に悪影響を及ぼすリスクもあるでしょう。

それ故、各種論文の比較、また「反論」項も読んでリスクを踏まえた上で試すことをお勧めします。(※他の治療と併用する場合も、2つの機序を理解することで、抗ヒスタミン薬を用いるタイミングがわかるようになると思います)

これら臨床論文を読み解き、的確に比較し、反論にも目を通してリスク管理を一人で行うためには、一体どれだけの時間と労力がかかるでしょうか。あるいは、ブレインフォグがある人にはそのすべてを行うことはそもそも不可能かもしれません。

コロナ後遺症に立ち向かっている真っ最中のあなたがすべきことは、コロナ後遺症であなたの(本来の)優れた情報収集能力が低下した状態で、血眼になって情報を探し求め、交感神経を昂らせ、情報の海の中でスマホとにらめっこして、いたずらに時間と労力を使うことではありません。

大切なことは、いかにリラックスした状態で治療に専念するか。
ではないでしょうか。
このnoteは、情報を的確に整理した状態で提示することで、それを真剣に手助けします。

購入したものの使わなかった薬やサプリが、いくつあるでしょう。
それらを調べるためにどれだけの時間と労力を使ったでしょう。

しかしこのnoteを読んだうえで購入した薬やサプリは無駄になることはありません。なぜなら、機序を理解した上で治療に臨むことで、何らかの病因を潰せることになり、必ず治療の前進をもたらすことができるからです。

そして、このnoteおよび一連の記事でコロナ後遺症治療の基礎情報を手に入れたあなたは、今後はより落ち着いた心でSNSの情報を探し、よりチャレンジングな気持ちで様々な治療法を試すことができるようにもなるでしょう。根拠なく煽りを行うSNSの徒らの情報からも、適切な距離をとることが可能になるでしょう。
以上の意味でこのnoteは、間違いなくあなたの時間と労力とお金を節約させ、あなたが治療に専念するための基盤として大きな手助けとなるでしょう


ところで、わたしはSNS等で抗ヒスタミン薬を用いて症状が改善したという情報を目にしても、試したことは一度もありませんでした。
というのも、私が目にした情報には、用量、期間、反論や、どのような機序で有効なのか。あるいは複数の論文の比較も存在していなかったからです。一言で言えば信頼できる情報がどこにもありませんでした。

そして、日本のコロナ後遺症外来が、このnoteで示した2つの機序の双方を明確に意識した治療法を基本的に行っていないようにみえる以上(現時点で管見の限り、あるいは今後行うとしてもこのnoteの理解は重要)、必要なことは、リスクも合わせて複数の臨床論文を的確に比較する中で、各人にとってよりベターな選択を皆さん自身で行うことができるような選択肢の提供なのです。
他の臨床論文についても執筆を進めていきますが、その第1弾がここにあると自信を持って言えます。

4つの査読論文を比較して得られる選択肢は、医師に理解されないできたあなたを、いかに前向きな気持ちにさせてくれるか。
また、現在行われている処方の深い意味がわかることが、いかにあなたの心を安心させるか。

機序を理解し、前向きな気持ちで治療しましょう。
自分で動き、治しましょう。
選択肢を手のひらの上にのせ、煽りを軽快に受け流し、完治を目ざせる安定した心も手に入れましょう。

私による一連のnoteが、あなたの症状を軽減させ、あなたに明るい未来をもたらす手助けになることを、心から願っています。

絶対に、絶対に、完治させましょう。

それでは、ある臨床論文では29%、別の論文では20%の人が完治したという抗ヒスタミン薬によるコロナ後遺症治療法を、ぜひ読んでみてください。

※目次は有料部分の冒頭にあります。
※購入した方は、最後に記してある抗ヒスタミン薬治療に対する反論とリスクも見ることをお勧めします。
※コロナ後遺症を理解する上でのいくつかのうちの重要な機序が記されています。読んだ方同士の交流は否定しませんが、情報を無料で垂れ流したり横流しした場合には、一定の対応を行なう可能性もあります。
※すでに何度か述べていますが、抗ヒスタミン薬でコロナ後遺症のすべての症状を治せるという趣旨のnoteではありません。



コロナ後遺症を完治or寛解させた4本の臨床論文~方法、結果、総括~

前置きは十分ですね。
結論からいきましょう。
四つの論文を順にみていきましょう。

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