紅夜 真斗
なろうで投稿してた同タイトルの改変版。 自分のために自分が読みたいスタイルでの作品なので、 本文は無料公開してます。 有料記事部分はキャラ台詞にて御礼の言葉となってます。 なんで完全無料じゃないのかって? そりゃ、それはそれ!!!これはこれ!!! のスタンスですからー。
1. 先日、大和の問いに答えたばかりの初雪は、このところの急激な冷え込みもあって例年よりもずっと早くに訪れた。 二日ばかり降り続いた雪は、三寸(約九センチ)を超えて積もっている。 夜明け前特有の霧と薄い雲がまだ空に残っている中で、朝稽古の支度をして道場に急いで向かった。 痛いほどに冷える空気に、寝起きの体はまだ慣れておらず、身震いも治まらなかったが道場の戸を一枚挟んで聞こえた空気を割く音を耳が捉えた瞬間、ぐっと息を止めて背筋を伸ばす。 「おはようございますっ」
1. 蘇叉建国神話 国として一つに纏め上げられる以前、八百万の神々が各々の領地を支配していたと言う。 地平統一を求めて災いを互いの地に齎し合い、人々を駒に領地の奪い合い広げていた。 数多の戦の末に白き神が地を平定し、戦に破れた魂は冥府に堕とされた。 白き神は冥府に堕ちた魂が迷い出ぬようにと、冥府と現世の狭間に門を建立した。 神代の門は白き神の弟神が守護し、白き神は他の魂と共に天に昇り人々を見守る道を選んだ。 地上に遺された人々は白き神を、天を司るもの――天司神
1. それからというもの山の精霊達が見ていると思い込んでからは、狩りの成否も含めて祈り、願う時間を自分勝手に設けた。 朝起きて、身支度を整えるために外に出ている僅かな時間に、山へ手を合わせる。 変わらず在るのは自然の野山ばかり。人里からも離れていて訪れる冬も早くて長い。 訪れた当初は夕闇が迫れば怖いばかりだったはずの山道にも慣れ、気が付けば暗闇の中でも師匠を追い抜いて家にも戻れるようになっていた。 その修行の最中での楽しみと言えば、母上が遣わす鷹の便りと、七日か
1. 北の修練地へ赴く本当に直前、通りすがりのように父上から言われた。 「頑張って来いよ」 そんな簡単な見送りの言葉に、オレも深く考えずに「はい!」と答えた。 そのせいなのか、師匠の紀代隆様は修行の合間に、似たような問い掛けをされることがあった。 「さて、今ここで妖に出会ったら十斗、お前はどうする?」 山野を稽古場にして師匠から問われた言葉に、オレは驚いて動きを止めて周りを見た。 辺りに伸びる草花や、それらの中に混じる岩の影へ目を向けたが、三月ほど経ち見慣れてき
1. 彼女と初めて出逢ったとき。 それは、彼女が祝福され生まれ出でた日。 赤子は望まれ、そして愛されるべき存在。 小さな手足に触れることを許され、産着に包まれた身を両の腕に抱いたとき。 守るべき存在となり、主となった。 それはまだ、五つのオレには理解できなかった。 出来なくて良かった。 そのときに望まれていたのは僕としての存在ではなく、ただの子守で遊び相手だったから。 けれどオレは腕の中で小さく息づく命に、その尊さと儚さと力強さを確かに感じた。 「十
1話おおよそ5千文字から1万文字ありますのでご了承をー あらすじ 小さな国蘇叉の少年たちの日追い話。 頑なに教えを守り、幼いながらに禍から主を守ろうと日々研鑽を積む少年がいた。 融通が利かないと、そう少年を評し穏やかに笑う同い年の主は本来忌むべき色を有していた。 神宿りの義妹と共にのんびり過ごす日を安寧として。 徒然なるままに、しっとりと淡々と刻に駆け巡る。 1.序章 1話 2話 3話 2.霜月家へ 1話 神話と伝承 蘇叉建国神話・伊叉那海依代伝承 小説