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女子のほうが得点が高い?!「子供と青少年の強みの特徴」を調べた研究

こんにちは。紀藤です。本記事のお越しいただき、ありがとうございます。さて、本日は「子供と青少年の強み」について調査をした論文のご紹介となります。

子供の強みについても、いくつもの論文がありますが、「子供の強みは何歳くらいから識別可能なのか?」「子供の強みに特徴はあるのか?」などについて、比較的広く考察をした内容となり、興味深いものでした。ということで、早速内容をみてまいりましょう!

<今回ご紹介の論文>
『子供と青少年における性格的強み』
Ruch, Willibald, Marco Weber, Nansook Park, and Christopher and Peterson†. 2014. “Character Strengths in Children and Adolescents.” European Journal of Psychological Assessment: Official Organ of the European Association of Psychological Assessment 30 (1): 57–64.

「若者の強み」を考えるための2つの問い

本論文で、子供や青少年の強み(10~17歳)を調査しているわけですが、これらを考える上で、少なくとも以下2つのことを考えなければならない、と述べています。

(1)若者において「性格的強み」は観察可能で、区別可能か?
(2)若者の年齢の「性格的強み」を評価する適切な測定方法はあるか?

という2点です。

「子供の強み」はいつから観察可能か

まず(1)若者において「性格的強み」は観察可能で、区別可能か?についてですが、2つの参考となる研究があります。

1つ目が、Park&Peterson(2006a)の研究です。米国の親に「あなたの子供の強み(3~9歳)を答えてください」という記述を求めたそうです。その結果、様々な性格を示す言葉が使われていました。
 それらを分析すると、3~9歳の子供で最も多く見られた強みは「愛情(56%)」であり、次いで「優しさ(38%)」「創造性(34%)」「ユーモア(26%)」という結果になりました。
 逆にあまり出ていない強みは「感謝・謙虚さ・寛容さ・希望・審美眼・正直さ(いずれも2%)」だったそう。なんとなく子供だとそうだろうな、という気もします(3~9歳は、謙虚さや寛容さはあんまり期待出来なさそう…)

次に、2つ目の研究が、Steen,Kachorek,Peterson(2003)らの研究です。ここでは米国の450人の高校生(14~19歳)にVIAの性格的強みについて議論をさせたそうです。
 その結果、生徒らの強みの認識は「強みとは、状態(その時々で現れる強み)と特性(生まれながらの強み)の連続体として現れるものであると概念化することができている」ということがわかったそうです。
 「強みってあるの?ないの?」という単純な理解ではなく、もっと概念化した「文脈に応じた強みの表出」「遺伝的強みとそうではない強みがある」なども理解している、という結果になったと言えそうです。

若者の強みを識別するツール「VIA-Youth」

強みを理解するためのアセスメントは「VIA」が有名です。そして、2006年にPark氏とPetreson氏が、3年の歳月をかけて若年層が満たすべき側面を考慮した、若者向けの強みの質問票を開発しました。
 それが「VIA-Youth」です。内容は、子供や青年にとって必要な項目を質問項目に含み(学校・家族・友人)、教師や発達心理学者からのアドバイスを通じて開発されました。通常版が240の質問に対し198の質問になっており、平均所要時間は45分間となります。

本研究の全体像

さて、本研究では、これらの知見を踏まえて、VIA-Youthのドイツ語版を開発し、ドイツ・スイスにおいて、いくつかの子供・青少年のグループに、強みの調査を行った結果となります。以下、研究の内容についてまとめます。

対象者

今回の研究の対象者ですが、合計4つのサンプルグループに実施されました。

●サンプル1:ドイツ語を話す1569人(平均年齢14.26歳。58%が女子)
●サンプル2:最高レベルの中等学校に通うスイス人294人(平均年齢13.49歳。49%が女子)
●サンプル3:親サンプル:サンプル2の親 219名人(平均年齢44.59歳。75%が女性)
●サンプル4:最高レベル~最低レベルの中等学校にスイス人 247人参加者(平均年齢11.77歳、女性が53%)

調査の進め方・測定尺度

調査項目については以下の3つです。

1)VIA-Youts(ドイツ語版を作成)
2)学校生活の満足度(Students Life Satsfation Scale:SLSS)
3)一般自己効力感尺度(General Self Efficasy:GSE)

上記について、サンプルごとに平均値、標準偏差、各尺度の相関を分析しました。結果は以下のようになりました。

結果とわかったこと

調査の結果、主に以下6つのことがわかりました。

1)「強みの年齢」による影響は小さかった
→「忍耐力」「宗教性」「寛容さ」「熱意」「公正さ」は、最も大きな年齢効果を示していた。しかし、その影響は年齢が上がるにつれて直線的に減少することが示された。

2)「性別」による影響は小~中程度であった
→女子の方が男子よりも、性格的強みのほとんどで高得点をあげる傾向があった。具体的には、「審美眼」「優しさ」は、中~大きな効果を示し、次いで(差の大きい順に)「公正さ」「愛情」「チームワーク」「謙虚さ」「正直さ」「親密さ」「学習意欲」「勇気」が中~小さな効果を示した。

3)「生活満足度」と関連がある性格的強みは「希望・感謝・愛情・熱意」であった。
→24の性格的強みと生活満足度との相関はすべてプラスであった。より詳細には、「熱意」「感謝」「愛」「希望」が生活満足度と最も大きな相関を示していた。

4)強みのほとんどは「自己効力感」の強い予測する因子であった
希望、展望、創造性、熱意、チームワーク、社会的知性、感謝 は、一般的自己効力感と最も大きな相関があった。

5)強みは4ヶ月間について安定していた
グラフのrn(4)bの結果より、4ヶ月という短期間ではあまり変化をしない特性がることがわかった。

6)「自己申告の強みの評価と、親からみた強みの評価」は一致する傾向があった
→サンプル2の結果の親の結果を照らし合わせたところ、自己申告と保護者の申告の相 関は中央値で.41であり、自己と保護者の一致は中程度であった

ということがわかりました。

まとめと個人的感想

概ね大人と同じ研究結果になっているように見えましたが、「親と子供の自己評価の一致率はどうなのか?」「年齢が上がるに連れて影響が少なくなる強みはなにか?」「男子と女子の強みの違いは?」など興味深い調査結果が含まれており、かつその結果がなんとなく分かる気がしたのが印象的でした。

VIAで語られるのは「性格的強みは成長していくものである」という前提です。たしかに、忍耐力や謙虚さなど、社会の中で生きる時間が長くなると、それに従って鍛えられていくものなのだろうと感じます。子供には子供の年齢の強みがある!と、長い目で見守りたいものだ、自分の子供のことも考えながつつ、そんな事も思った次第です。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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