おすすめの一冊『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』
こんにちは。紀藤です。本記事にお越しくださり、ありがとうございます。
今回の記事では、最近読んだ本の中から「おすすめの一冊」をご紹介いたします。
「組織開発」が身近に感じられる一冊
管理職、人事の方などであれば、「組織開発」という言葉を耳にしたことがあるかと思います。最近、少しずつ広がってきた印象がありますが、それでもそれが何を意味するのか、具体的に何をするのか?というのを説明できる人は少ないようにも思います。
そもそも「組織開発」という言葉が、なんだかむずかしい。
そして抽象的なので、距離感を感じさせる気もします。
そんな中で今回の一冊は「組織開発とは、職場で働く私達にとって、とても身近で、ハードル低く、誰もが始めることができるものなのだ!」と思わせてくれる一冊です。
内容としては、主に4つの章に分かれて展開されています。
Chapter1:組織開発の「きほん」
Chapter2:組織開発の「はじめ方」
Chapter3:組織開発「実践のポイント」(事例)
Chapter4:組織開発を始めよう
どの章もめちゃくちゃわかりやすく、すっと入ってきます。
おそらくその理由は、言葉の選び方、また事例の紹介の仕方が、シンプルで、まさにタイトル通り”やさしい”からでしょう。著者の皆様が、たくさんの職場をなんとかしたいと思う方に届くように、と本書に込めた思いも感じます。まさに、タイトルどおりの一冊です。
組織開発の「きほん」
本章では、あるマネジャーの物語が紹介されます。
新規営業で数字をあげなければならない会社の方針がある。
しかし年長メンバーはどうやら納得がいっていない様子で、若手メンバーも「大丈夫です」と言いながら、なんとなく不安を感じる雰囲気でした。
それからしばらくして、若手メンバーが辞めてしまいました。
・・・そんな物語。
こういう話、あるあるです。そしてこうした「目に見えないもやもや」を取り扱うのが組織開発です。
組織開発の定義とは
著者らは、シンプルに「意図的に行う、良いチームや良い組織づくり」が組織開発の定義として紹介していました。より丁寧にお伝えすると、
と表現していました。
組織開発の効果とは
そして組織開発のプロセスによって、以下の3つの効果が手に入るとされています。
(1)【効果性】目標達成ができる
(2)【健全性】明るくイキイキ元気がある
(3)【継続性】良い状態を自分たちで継続できる
では、実施にどのように組織開発をはじめればよいのか?についても続く章で述べていきます。
組織開発の「はじめ方」
では、どのように「組織開発をはじめる」のか?
そのための考え方として、「プロセス」というキーワードを紹介しています。
タスク・プロセスとメンテナンス・プロセス
一つが、「タスク・プロセス」。意思決定のされ方、目標の共有、役割分担、手順や仕事の段取りなど、”目に見えにくい問題事象”です。
もう一つが、「メンテナンス・プロセス」。職場の雰囲気や組織風土、メンバーのモチベーション、メンバー同士の関係性など、”目に見えない問題事象”です。
そして、「組織開発は、このタスク・プロセスと、メンテナンス・プロセスの両方を見直していく活動である」としています。
なぜ、このような、水面下のプロセスが重要かというと、こうした水面下のモヤモヤが、顕在化した(する)問題に影響を与えるからです。
たとえば、職場のメンバーの関係性が、少しギスギスしているようだ。あるいは組織風土が上意下達で受け身なようだ。生産性の低下に繋がるようにみえる、目に見えづらいので、直接手を触れる機会はない。こうした顕在化した問題の水面下にある問題の真因に、意図的に手を伸ばし、対話によって課題解決を目指すのです。
そんなプロセスに触れる「組織開発のはじめ方」として
・とにもかくにも「対話」による関係づくりが大事
・「対話の環境づくり」をはじめること
・「ポジティブなテーマ」を設定しよう
・異なる意見・考え方を「気づく」場を目指す
などの心構え・工夫を述べています。
組織の成功循環モデル
そして、ダニエルキム博士の組織の成功循環モデルを参照に、組織開発の流れを整理されています。これは「関係の質」が「思考の質」「行動の質」に影響を与え、「結果の質」にも影響を与えるとしたモデルです。
ポイントは「関係の質」を高めることが重要であり、そのためにも対話を行うことの重要性に繰り返し触れています。
対話で重要な「5つの価値観」
その他、対話のための5つの価値観なども紹介されていました。以下、引用いたします。
組織開発「実践のポイント」
そして、次の章では、7つの組織の成功事例から、組織開発を紐解いていきます。中小企業2社、大企業2社、地域コミュニティなど、様々な組織規模の事例を見ることで、組織開発の具体的なイメージが分かるような構造になっていました。
それぞれの組織の事例がとても丁寧に解説されており、本書の半分くらいはこの実践事例にページが割かれています。この部分は、特に真似をして試すことができるものなので、おすすめだと感じました。
ただ、個人的に印象だったことが、色々とやったけれども、それらをシンプルにいえば、
・社員一人ひとりの声を聞く
・ゆるくつながっておく
・皆で目的を明文化する
・自分自身を語ることで関係性を構築する etc
誰もがやろうと思えばできる「小さな一歩」とも言えることだった、ということです。しかし、それが確かに、組織にポジティブなインパクトを与えていることが、組織開発が実はもっと多くの人に身近で、かつ有用なものだと示している証拠のようにも感じました。
まとめ(個人的感想)
本書の後半では更に、組織開発に関わる際のスタンスを、最初に時間を取る、焦らない・諦めない、誰でもきっかけは作れる、というように、励ましのような言葉も踏まえて語られています。
読みながら、「組織開発って、もっとシンプルに考えていいんだ」と思える一冊で、心理的なハードルをぐっと下げてくれます。
『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』でもあるし、個人的な感想を付け加えるならば「働くみんなのための」という枕詞もつけてもよいような、そんな感想を持つ一冊でした。
より多くの人が、こうしたプロセスに目を向けることが当たり前になるといいな、そんなことも思った次第です。
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