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書籍『Character Strengths Interventions』を読み解く #3(第1章後半)

こんにちは。紀藤です。本日もシリーズ「書籍『Character Strengths Interventions』を読み解く」をお届けいたします。

第一章の前半では、VIAの強みは文化を超えた「共通言語」であることなどお伝えしました。(前半のお話はこちら↓↓)

第一章の後半では、「文化と強み」や「強みの種類」などについての考え方が述べられています。というとで、早速みてまいりましょう

第1章 強みに基づく実践の基盤:キャラクターの科学の7つの核心概念(後半)

「文化的な強み」をどう考えるか

VIAに対して、様々な文化圏の人から次のよう言葉が投げかけられるそうです。それは「私の文化では、◯◯◯も強みだと考えています。VIAの分類にはなぜそれがないのですか?」とのこと。

たとえば、中東の文化では「もてなしの心」があります。
そしてフィンランドでは「シス(Sisu)」という「逆境を乗り越える決意」という文化的な強みがあるそうです。

ただし、VIAは「宗教、文化、国家、信念体系を超えたもの」として作成されており「文化に根ざすものを含まない」としているようです。

(また、中東の「もてなしの心」は『親切心』の強み、フィンランドの「シス」は『(強烈な)忍耐力』」として捉えることができると考えられるそうです)

強みは「複数系」である

VIAを開発者の一人ピーターソンは、「性格(強み)とは複数系である」と述べました。

言われてみれば当然ですが、私達は様々な個性を持ちます。たとえば、個人の中でも高い強み、中間の強み、低い強みなどが存在します。その組み合わせによって、オリジナルの強みを発揮し、それは他者と比べられないオンリーワンのユニークさとして現れます。

たとえば、ある仕事のプロジェクトに携わるときに、一つの強みだけで取り組むことはありません。状況が複雑で困難であるほど、いくつもの強みを総動員するものです。

また、強みは互いに影響し合うものです。ある程度の『好奇心』がなければ『創造性』も発揮することは難しいですし、『謙虚さ』を全く無くして『親切心』を表現することも難しいでしょう。

そのように、お互いの強みが増長させあったり、発現を妨げたりする「強みのダイナミクス」が存在しています。

定量的な側面からいえば、研究によるとVIA24の性格的強み同士の相関を調べたところ、それぞれに特徴があることがわかりました。たとえば、

・『熱意』と『希望』は強い相関を持つ
・『謙虚さ』と『学習』は弱い相関しかない

などです。

それぞれの強みの位置関係は相関を示す

24の性格的強みのすべてが重要

VIAのサーベイを実施し、結果を見ると、嬉しく思ったり、がっかりしたり、リアクションが分かれることがあります。それは、自分が期待している結果、何を重要と思っているかなどが影響しています。

ただし、重要なことは「全ての性格的な強みがポジティブなものであり、良いことのために使うことができる」という点です。

具体的に24の強みがどのようなポジティブな結果に繋がっているのか、以下本書より紹介をします。

■24の強みがもたらすポジティブな結果

<知恵の美徳>
【創造性】:新しい経験への開放性、認知の柔軟性
【好奇心】:ポジティブな感情、固定観念に挑戦する意欲、創造性、仕事や遊びでの挑戦を求める欲求、目標
【知的柔軟性(批判的思考力)】:問題解決能力、認知能力の向上、操作への抵抗、ストレスへとの効果的な対処
【向学心】:障害や挑戦を乗り越える能力、自律性、資源活用能力、自身の可能性を高める、自己効力感、健康で生産的に年を重ねる、挑戦を求め/受け入れることが多い、ストレスレベルの低下
【大局観】:成功する年齢の重ね方、生活の満足度、成熟さ、心の広さ、平静さ、社交性、社会的知能

<勇気の美徳>
【勇敢さ】:社会的志向、内的コントロール感、自己効力感、忍耐力、曖昧さ/不確実性に対する耐性、リスク評価能力、深い洞察、社会的に意義のある活動への関与、良好な人間関係の構築・維持能力
【忍耐力】:成果/目標達成、資源活用能力、自己効力感
【誠実さ】:ポジティブな気分、生活の満足、新しい経験への開放性、共感、誠実さ、自己実現能力、感情の安定性、努力/目標達成
【熱意】:自律性、他者とのつながり、目標達成

<人間性の美徳>
【愛情】:他者とのポジティブな関係、依存と自立の健全なバランス、ポジティブな社会機能、高い自尊心、うつ病への抵抗力、ストレス対処能力
【親切心】:精神的・身体的健康、長寿
【社会的知性】:スムーズな社会機能、生活判断、攻撃性の低下、薬物乱用の少なさ

<正義の美徳>
【チームワーク】:社会的信頼、人間性に対する肯定的な見方
【公平さ】:視点の広さ、自己反省、協力、リーダーシップ、利他主義、社会的行動
【リーダーシップ】:認知スキル/知性、柔軟性/適応性、感情の安定、内的コントロール感、創造性

<節制の美徳>
【寛容さ】:社会的行動、他者に好意的、感情の安定、怒り、不安、うつ病、敵意の低下
【慎み深さ(謙虚さ)】:視点の広さ、赦し、自己調整、自己改善目標の達成可能性
【思慮深さ(慎重さ)】:協力的、人間関係の暖かさ、社交性、積極性、ポジティブな感情、想像力、好奇心、洞察力、健康、長寿、楽観主義、内的コントロール感、高い達成/パフォーマンス、怒りの表現の低下
【自律心】:学業成績の高さ、自尊心、自己受容、怒りのコントロール、安定した人間関係、社会関係の満足度、うつ病の低下、好感度/信頼性の高さ

<超越性の美徳>
【審美眼】:経験への開放性、利他主義、他者/地域社会への献身、変化/自己改善の能力
【感謝】:ポジティブな感情、生活の満足、楽観主義、社会的行動、心臓血管と免疫機能の向上、長寿、不安とうつ病の低下、経験への開放性、好意的、誠実性、神経症的傾向の低下
【希望】:達成、ポジティブな社会関係、身体的健康、積極的問題解決、不安とうつ病の低下、誠実性、勤勉さ、忍耐力
【ユーモア】:ポジティブな気分、ストレス管理、創造性、皮肉への耐性
【スピリチュアリティ】:自己調節、薬物乱用の低下、ポジティブな社会関係、結婚の安定、赦し、慈悲、利他主義、ボランティア活動、幸福、目的意識、生活の満足、病気とストレスへの対処能力

Chapter1

強みのそれぞれがポジティブな効果と繋がっているようですね。

さまざまなタイプの強み

さて「強み」ですが、VIAに代表される「性格的強み」以外にもいくつかの種類があることが示されています。本書では「才能・スキル・興味・リソース・価値観」の5つが挙げられていました。

●才能(得意なこと):
・ハーバード大学の心理学者、ハワード・ガードナーの『多重知能理論』(Gardner, 1983)で代表される研究で示される、対人知性、論理的・数学的、空間的、身体的・運動的、言語的、音楽的などの能力に紐づくもの
・世界的ピアニスト、ホームランバッターなどは元々の才能に、忍耐力などの性格的強みをかけ合わせていると考えられる

●スキル(自らを鍛える):
・実作業や技能の習得すること。アンガーマネジメントのスキル、コミュニケーションのスキルなど特定のスキルを意味する。
・この習得にもいくつかの性格的強みが関わると考えられる。

●興味:
・人生における自然で調和の取れた情熱。
・「特徴的な強み」と「興味」は重要な繋がりがあることが示されている(Forest et al)

●リソース(資源):
・私達の外部にある強みを「リソース(資源)」と呼ぶ。これは私達の取って重要なサポートになる
・例:安全な地域に住んでいる、親しい友人がいる、良い学習コミュニティに所属している、頼れる家族がいるなど

●価値観:
・価値観は私達の頭の中、思考や感情の中に存在している。
・そして価値観は、自分の思考や行動、あり方を示し、行動に反映される
・人格とは認知や感情だけではなくVIAが「Value in Action」とあるように、価値観を含んでいる。

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まとめ(第一章)

以下、本章のまとめです。

・性格的強みは、人間の最も優れた部分を表現する共通言語となる。
・性格に対する最適なアプローチは、カテゴリー的な見方よりも次元的な見方であり、さらにいえば、性格的強みそのものが多次元的なものである。
・私たちは特定の強みを多かれ少なかれ持っているため、強みは程度で表現され、それは文脈によって変化する。
・性格的強みは複数あり、各人がユニークな性格的強みのプロフィールを持っている。
・24の性格的強みのすべてが各人についており、さまざまな肯定的な結果と関連している。
・人間が持つ強みには、才能や興味など多くの種類がある。
・性格的強みは、ある程度安定しており、文脈に左右されない特性である
・性格的強みとは、「存在すること」であると同時に「形成すること」でもあり、自分が何者であるかを理解するためにも、また、道徳的な表現/パフォーマンスを行うためにも不可欠なものである。

Chapter1

改めて原著を読み解いていくと、様々な発見がありました。
少し時間がかかりますが、こういうプロセスを経ることで、知識が自分のものとなっていく感覚があります。

ということで次回は、

第2章 シグニチャーストレングス(特徴的な強み):研究と実践
・ シグニチャーストレングスを新しい方法で使う
・ シグニチャーストレングスを使う上での注意点

に続けていきたいと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!


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