おすすめの一冊『日本復帰50年_今・昔・未来 沖縄のこと考えてみませんか!』
昨年の5月から沖縄との二拠点生活を始めました。2ヶ月に1度ほど、10日程度滞在して、こちらでリモートワークやお仕事などをしております。(ちなみに沖縄との二拠点生活の実情についてはこちらの記事をご参照下さい)
そんなこんなで、生活を始めると気になるのが「沖縄の事情」です。沖縄は青い海とサンゴ礁だけではありません。よく知られている通り、沖縄の基地問題、沖縄の歴史、沖縄の風土など、特に歴史や地政学的な様々な問題の象徴のような場所でもあります。
その中で、友人が企画してくれた「沖縄の歴史のスタディツアー」なるものに参加するに際して縁あって手に取った本が、今回ご紹介の一冊。
内容は、まさに「沖縄の社会の参考書」です。私はこの書籍を通じて、だいぶ沖縄のことが理解できた気がしました。
ということで早速みてまいりましょう!
沖縄の社会の授業の「資料集」
ふと思えば、小中学校のときは、社会や歴史は好きではありませんでした。歴史の教科書は文字ばかりで面白くない。ゆえに、歴史の資料集(絵とか写真がたくさんある)を眺めて授業の時間を潰していた記憶があります。(たぶん、私のような人も少なくないのでは)
しかしながら、大人になって、「沖縄の基地問題ってどういうことだろう?」「沖縄の歴史って、どんなものなのだろう?」「沖縄の文化はどのように生まれてきたのだろう?」、そうした興味の対象が広がった今、学ぼうとした時に、「沖縄の今・昔・未来を網羅的に理解することができる書籍」が今回ご紹介の一冊です。
内容は、「沖縄の”歴史と地理と政治の参考書」というイメージ。これを見れば、沖縄の過去から今に至った主要なことを全部わかります。
考えるためには「出来事と言葉」を知ること
本書は「教科書感がかなりある一冊」です。なぜ、そう感じるかというと、”書籍全体を通して、Q&A方式で問題に対して答えるような形になっている”ためです。たとえば、「琉球・沖縄の歴史」については、こんな感じ。
こういう形式が、苦手と感じる方もいらっしゃるかもしれません(授業を彷彿させるため)。しかし、実際に問いに答える形で進めてみると、「沖縄を理解し、考えるために知るべき出来事や言葉」を手に入れることができると感じさせられます。
というのも、私達は「言葉」で思考し、物事を理解します。沖縄が歩んできた歴史や社会のことを表す「出来事とそれに由来する言葉」を多く手にいれなければ、沖縄のことを理解することも、そして考えること難しい、と感じるのです。
「琉球」は、いつから・なぜそう呼ばれたか
たとえば、「琉球」という名について。沖縄がかつて琉球で合ったことは知られていますが、いつから、なぜゆえに琉球と呼ばれるようになったのか?はあまり知られていないように思います。
それを理解するためには、「朝貢(ちょうこう)」と「冊封(さっぷう)」という「出来事と言葉」を知る必要があります。それぞれの言葉の意味は以下の通りです。
琉球(現沖縄)は、古琉球時代(日本の室町時代)に、中国との交流を始めました。中国を皇帝とし、琉球が中国に対して貢物を捧げ、その代わりに王・侯の爵位を授けられるという出来事が朝貢と冊封です。
ちなみに中国(明)は、服属国(琉球)の領土や主権を侵したり、政治・宗教・干渉することはありませんでした。
付け加えると、琉球が貢物(硫黄など)を捧げると、中国はその倍以上の”お土産”を提供してくれました。また当時、琉球では自前で作れなかった船を30隻無償で貸与してくれたり、中国での貿易が可能になるなど、いわゆる”重税で搾取する”とは、程遠い関係であったようです。特に琉球は、日本への結節点として重要な拠点であったため、優遇されていたとのことです。
ゆえに、琉球王国としての自主自律は保たれているものの、1372年~1879年の500年にわたって、朝貢と冊封(合計23回)という中国を皇帝とみなす交流が続いていた事実があります
そして、なぜ・いつから琉球か?の話ですが、中国が沖縄のことを読んでいた呼称が『琉球』であったことが由来です。そこから、「琉球」と呼ばれるようになったわけです。(なぜ中国が琉球と呼ぶようになったかは「海に浮かぶ竜神の姿に見えたから」などの説がありますが確かではないそう)
そして、これが現在も、「沖縄はかつて中国であった」という中国の主張の一部を示すものであり、また中国が勢力圏を確保するための「第1列島線」へ繋がる政治的なカードに利用されています。これは「朝貢と冊封」という歴史と密接に繋がっています。
沖縄を理解するための「全体地図」
沖縄のことを知るためには、”知っておくべき出来事や言葉”、が存在しています。そして、繰り返しとなりますが、それら沖縄の昔から今に至るまでの社会(歴史・地理・政治)の様々な出来事を抜けなく網羅しているのが、こちらの書籍です。
問いに答えていく中で、知らなかった出来事と言葉を手に入れていき、「沖縄を理解するための地図」をもらえる感覚になっていきます。
内容としては、以下のような構造になっています。
まとめと個人的感想
紙面の1/3くらいが、「琉球・沖縄の歴史について」ですが、知らないことばかりでした。著者の新城(しんしろ)先生は、沖縄の歴史学者の第一人者とのことで、本書の参考書籍は100冊近くにのぼります。
また、「沖縄のことを知る・考えるための素材」を提供されているという意図を感じました。様々な賛否の意見・感情が渦巻く沖縄問題について、「何があったのかという事実のパーツを集めることが、考えるためには必要になります。そのための第一歩として、大変役立つ一冊だと思いました。
この本を読んだ上で、沖縄戦や基地問題を始めとした、多くの作品に触れることで、理解の解像度を高めることができる、そんなことを思った次第です。
その他、「軍用基地の地主は儲かっているというのは本当か?」というデータがあったり(実はそんなこともない)、「沖縄の牛乳はなぜ1リットルではなく、946mlなのか?」の背景や、「琉球銀行の名前の理由」など、歴史も関連する様々なトリビアも満載で面白い一冊でした、
沖縄のことを深く知りたい、という方にお薦めしたい一冊です。
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