「間違った内省」を引き起こす4つの迷信 ~読書レビュー『Insight』その2~
こんにちは。紀藤です。昨日ご紹介させていただいた「自分を知る」という、自己認識の世界の解像度を高めてくれる本について、本日もご紹介させていただければと思います。
今日は、「第2部 内的自己認識―迷信と真実」の学びを共有させていただきます。研究データ等から、新しい発見を示唆している興味深い内容でした。それでは早速まいりましょう!
(前回のお話はこちら↓↓)
「内省」は効果的とは限らない?!
「内的自己認識」、つまり「自分から見た自分」の探求。
このためには、内省が重要だと思われています。
「内省」とは、”自分の思考・感情・意志・行動を意識的に検証する力”のことを指します。そしてこれこそが、動物と人間をわかつものです。
しかし著書によると、「自分自身と向き合う時間と労力をかけた人」(=内省が高い人)のほうが、ストレスを感じており、落ち込んでいて、不安を感じていて、仕事や人間関係の満足度が低い、という結果となった(!)と述べます。
なぜこうした事が起こるのでしょうか?
結論を伝えると「自分について考えること」=「自分のことを知ること」にはならないから、です。
なぜならば、「自分のことはわかっていると思いがち(確証バイアス)」「ネガティブな思想にとらわれがち(反すう)」といった心理的影響から、私達は無自覚だからです。
内省し、自己認識を深めているつもりが、ただただ自分を責めて、陰鬱とした気持ちになっているだけの可能性もある…。これではよろしくありません。
「間違った内省」を引き起こす4つの迷信
では何が間違った内省を引き起こすのか?
そしてそれに対してどのように対処すればよいのか?
代表的な4つの誤解と、その対処方法について、まとめます。
間違った考え1―南京錠のかかった地下室という迷信
人には「無意識」があるとフロイトが言い、そしてそれは「南京錠のかかった地下室のようなもの」としました。しかし実際には、「密閉された保管庫に秘められているようなもの」であり、人が無意識を知ることは不可能だと研究で明らかになったそうです。
「自分について、知ろうと思ってもわからないこと」はある。だからこそ、以下のような内省のアプローチを重視すべき、と述べます。
間違った考え2―なぜか「なぜ」を考える
「なぜ」を自分で考えても、その理由はわからないことがほとんどです。
たとえば、有名な「吊り橋効果」の実験。高い吊橋の上で出会った男女が、相手にトキメクのですが、なぜドキドキするのかと聞くと、「相手が魅力的だったから」といいます。しかし実際は「高くて怖かったから」だったようです。
自分の心身の反応を、人は正しく自覚できるわけではない。「なぜ」という問いで「もっとらしい答えを探す」ことはできても、真実に近づけるとは限りません。
他にも、「なぜ」という問いのネガティブな影響として、なぜ?と問われると否定的な気持ちになるなど、精神衛生上の負の影響も研究でわかっています。
対処のポイントは以下のようになります。
間違った考え3―日記をつける
また日記についても、自分を振り返る意味で効果がありそうですが、研究によると「毎日日記をつけてもあまり効果がない」そうです。
自己認識において大事なのは、頻度よりも「日記をつける正しくつける方法を学ぶ」ことであると述べます。使える方法として『こころのライティング』を勧めています。
間違った考え4―内省の双子の悪魔
最後に、「内省」と混同されがちな、注意すべきキーワードとして『反すう』を紹介しています。反すうとは、「自分の恐怖や、不安や、欠点についてひたすらこだわる状態」を指す心理学用語です。これを「内省の双子の悪魔」と呼びました。
反すうは自分自身に対して「破滅的な影響を与える」とまで本書では述べます。ではどのように対処すればよいか、以下のようなポイントを述べます。
まとめと感想
ストレングス・ファインダーで「内省」が高くなっている人は、自己批判的になっている場合がある、という話を聞いたことがあります。
それは「反すう」のようにネガティブな力が働くことがあるからでしょう。内省をすると、ずるずると沼に足を掴まれることもある。そういう意味でも、「正しく内省する」ことが大事なのだと、この章を読みながら感じさせられました。
「うまくやる」ではなく「うまく学ぶ」。そして「正しく内省する」。
大事にしたいものだと思った次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!