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「ファシリテーション」とか「ファシリテーター」ってそもそも何だ?を考える

「研修」という言葉は、多くの人が聞いたことがある言葉かと思います。「研修講師」も、まあイメージができそうです。
しかし、この界隈でしばしば耳にする「ファシリテーター」となると、途端にわかったようで、わからないようなそんな感覚になります。

たぶん、人事領域でもその定義を語って、他の概念と峻別できる人は、そんなに多くないような気もしたり。(私を含めて汗)

今日は、そんな「ファシリテーションやファシリテーターってそもそもなんだ?」について、ある書籍にそのヒントが紹介されていました。今日から数回に亘って、ファシリテーションについて紐解いてみたいと思います。

それでは、早速まいりましょう!


「研修の成果」を決めるもの

そもそも、ファシリテーション以前に、「研修の成果を決めるもの」にはいくつもの要素があります。

・研修企画前の課題の分析・特定
・研修全体のプロセス設計
・研修参加者、利害関係者の巻き込み
・研修プログラムのデザイン
・当日の研修講師としての役割(★)

などなど。

そしてその中で、「ファシリテーション」とか「ファシリテーター」と呼ばれるものが関わるのは「★」の部分となります。

「研修の成果」の中でも、講師のファシリテーションは研修の良し悪しを決めるごく一部でしかありません。参加者に学びをお届けする一部の役割が「ファシリテーション」なのです。

さて、とはいいつつ、同じプログラムでも、参加者は生物(ナマモノ)。その対象者によって、同じプログラムでも、どのように味付けするかは、研修の成果に影響を与える事は否めません。

そんな「研修ファシリテーション」について、以前学んだ研修ファシリテーションの講座をまとめた書籍でも、ポイントがまとめられていました。

「研修ファシリテーション」のお勧め本

ファシリテーションについての書籍はいくつも出版されています。その中でも、個人的にわかりやすく・活用しやすいという意味で、お勧めな書籍が以下の本です。

”「講師・インストラクターのバイブル」とも評される世界30カ国15万人が学んだ「参加者主体の研修」シリーズ”と紹介されているように、参加者を巻き込み、主体的に関わってもらうための考え方とスキル、細かなテクニックがふんだんに紹介されており、即実践に繋げられるのが本書の魅力です。

そんな本書の構成は、以下のようになっています。

「第1章 研修ファシリテーションの基本」では、そもそもなぜ研修にファシリテーターが必要なのか、ファシリテーターの役割とは何かを考えます。

「第2章 ファシリテーションをデザインする」では、研修プログラムの設計とも一部重複をしますが、アクティビティや問いかけをどのように工夫をするのか、より具体的な方法が述べられていきます。

「第3章 ファシリテーションを実践する」では、アクティビティ中にどのようにディスカッションをファシリテーションするのかをより具体的に触れていき、つづく第4章では難しい場面・難しい参加者への対応、第5章では研修ファシリテーションの効果測定について述べています。

「ファシリテーション」ってなんだ?

本書では、研修運営に関わる多くの人にとって、気になる内容がまとまっていると思われます。よって、今日はこの本の第一章から、いくつかポイントをご紹介してみたいと思います。

まず、ファシリテート(facilitate)の意味は、直訳すると「促進する」となります。何に対して「促進する」かというと、ただ「学びを促進する」だけではなく、「ビジネス上の成果に繋げる行動変容を”促進する”」ことが研修におけるファシリテーションです。

「ビジネス上の成果に繋げる行動変容を促進する」となると、参加者に「話をする「」だけでは難しいものです。参加者に、あの手この手で関わり、巻き込み、

・研修を通じて、新しい知識を獲得する
・自らの考え方をアップデートできている
・学んだことを実践しようという気持ちになっている
・職場でいつ、どのように行動すればいいかがわかっている

というプロセスをともに歩むからこそ、「ビジネス上で成果に繋がる行動変容」へと繋げることができるわけです。

すると、いくら研修プログラムのデザインがしっかり設計されていても、お届けの仕方でだいぶ変わるのです。材料やレシピが揃っていても、調理方法や接客がいまいちだったら、美味しく召し上がっていただけないのに近いかもしれません。

よって、ファシリテーションについて、本書では以下のように解説をしています。

<ファシリテーションとは?>
・ファシリテーションの目的は、ビジネス上の成果に繋げる行動変容を促すこと
・ファシリテーションとは、「知識」の理解を確実にし、行動に落とし込んだり、スキル習得の練習をして自信をつける時間を研修中に組み込んだり、実行したりすること。

知識を伝えるのではなく、現場でできるように導くこと。

多くの研修でやられがちな「突然指名する」「有効ではない”問いかけ”をなんとなくしてしまう」「自由にリフレクションさせる」のリスクももっと考えるべし、と提案されていました。(我が身を振り返り、改めて考えさせられます)

「ファシリテーター」ってなんだ?

次に、ファシリテーターを考える上で、より大きな役割としての「研修講師」を考えてみるとわかりやすくなります。

そもそも「研修講師が、研修当日に行う3つの役割」は以下の通りです。

<研修当日の講師の3つの役割>
(1)ティーチング:新しい知識を学んでもらう、新しいスキルを習得してもらうなど、参加者に何かを「教える」役割。知識を伝達したり、お手本を見せたり、アドバイスをしたりして、知識やスキルの習得を支援する
(2)コーチング:参加者の課題解決を、アドバイスをするのではなく、参加者自身が考えることを促すことによって行えるよう、参加者自らの気付きの発見を支援する(※知識・スキルが不足しているわけでなく、活用・応用が必要な場合に、コーチングを使う)
(3)ファシリテーション:アクティビティや問いかけからディスカッションなどを通して、目的を達成するように導く

P33

知識を教えるティーチング、活用を考えさせるコーチング、アクティビティや問いかけで目的達成を目指すファシリテーション。
関わり方の違いから「ファシリテーション」の意味をわけられます。

また、”研修当日”ではなく、”研修の準備を含めた全体”をみた時に、「研修講師が行うこと」として、以下の切り分け方もあります。

<研修講師が行うこと>
(1)研修デザイン
:研修をイベントでなくプロセスとして企画する。具体的には、ニーズ分析、参加者分析、時間配分、コンテンツの組み立てなどのインストラクショナルデザイン(研修プログラム設計)を行う。
(2)デリバリー:用意した研修内容を参加者に「届ける」。講師としての立ち居振る舞い、話し方、説明のわかりやすいさなどを含む。
(3)ファシリテーション:一方的に知識を伝達するのではなく、参加者の主体性を引き出し、目的の達成に向けて導く役割。問いかけて考えを促す、引き出す、アクティビティを通して学びを深めるなどを含む。

P34

研修講師として「研修デザイン」「デリバリー」とわけると、参加者を巻き込んだインタラクティブなやりとりが「ファシリテーション」といえるかもしれません。

そして、それらを統合した「ファシリテーターとしての講師の行動・スキル」チェックシートとして、以下のようなものが紹介されていました。

P36

そして、本書では、ファシリテーターは「ステージ上の賢者」ではなく『ステージ脇で導く役割』であると定義していました。

まとめ

「講師」は”先生”として学びを教える。
「ファシリテーター」は”進行役”として学びを促す。

そんなイメージがありましたが、このように改めて考えてみると、その役割がより明確になるように思いました。

もちろん、上記のファシリテーターの概念は、ボブ・パイク流であり、明確に合意がとられたものではなく、もっとクリアな分け方もあるような気もします。

とはいえ、多くの実践的な学びが詰まっていると感じましたので、明日以降も本書からの学びを、引き続きお届けしてまいりたいと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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