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強みのゴールドスタンダード「VIA」は5因子構造でした

こんにちは。紀藤です。本記事にお越しくださり、ありがとうございます。

さて、本日は「強みアセスメントVIA-ISのドイツ語版の検証」の論文のご紹介です。

ドイツ語でのVIAを作成した上で「VIAの24の強みを因子分析をしたら5因子になった」という検証を行っている論文であり、他論文で引用されているのを何度か見つけた論文でもありました。

読んでみたところ、「これまでの強みの先行研究のレビュー」がわかりやすく、これもまた一つの整理になりました。2010年の論文なので、強みの研究もまだ組織に波及していく前段階のものですが、”元相を遡る”ということでぜひ見てみたいと思います。

ということで、早速まいりましょう!

<今回ご紹介の論文>
『強みに関する価値感の行動目録(VIA-IS)ドイツ語版の検証』
Ruch, Willibald, René T. Proyer, Claudia Harzer, Nansook Park, Christopher Peterson, and Martin E. P. Seligman. (2010). “Values in Action Inventory of Strengths (VIA-IS).” Journal of Individual Differences 31 (3): 138–49.


「強み」のこれまでの発見(2010年時点)

強みの研究は、本論文の著者であるセリグマン氏も中心人物の一人として2000年代初頭から拡大していきました。2010年代の中頃になると、組織内における強みの活用、リーダーシップへの応用、ワークエンゲージメントとのつながりや職務満足度など、組織の成果に繋がる研究も進んできました。

その中で、2010年までにわかってきた「強みの研究結果」が本論文にまとめられていました。以下、ざっとご紹介いたします。

<強みに関するこれまでの発見>
・54カ国と米国50州のVIA-ISスコアを比較した。そして強みの順位の傾向は全ての国で類似していた(米国では優しさ、公正さ、正直さ、感謝、オープンマインドなどが上位の傾向)(Park、Peterson、Seligman, 2006)

・特定の強みが病気からの回復と関連していることを発見した。例えば、心理的障害から回復した研究参加者は、審美性、創造性、好奇心、感謝、学習意欲が高かった。身体疾患の場合、勇敢さ、優しさ、ユーモアが、生活満足度への影響を媒介していた。(Park、Peterson、Seligman, 2006)

9.11のテロ前後の強みの比較を米国で調査したところ、テロ事件10ヶ月後まで、感謝・希望・親切・リーダーシ ップ・愛情・宗教心・チームワークの強みが上昇した。(Peterson、Seligman, 2003)

・一定期間にわたって自分の強みを学び、それを新しい様々な方法で活用する強みの介入は、最長6ヵ月間 、参加者の幸福感を高め、抑うつ感を減少させるのに有効であることが示された(Seligman, Steen, Park, & Pe-terson, 2005)

・24の性格的強みについて、遺伝的加成因子(遺伝の影響)の中央値が42%(ユーモア の14%と宗教性の59%の間)であることを発見した。(Steger, Hicks, Kashdan, Krueger, and Bou-chard (2007)

なるほど。病気からの回復にも影響がある、国ごとの違いはあまりない、遺伝的な影響などが、このときはわかっていたのですね。うん、興味深い。

VIAの24の強みは「5因子構造」だった

さて、VIAですが「強みアセスメントのゴールド・スタンダード」とも呼ばれるようで、多くの研究に活用されまくっています。

その開発の背景は、古今東西の著作から「人間の徳」に関わるものを抽出し、55名の研究者によって、24の徳目と6つの分野にわけたのでした。(詳しくは以下記事より)

しかし、「24の強み」をアナログでわけると「6つの美徳(カテゴリ)」になりましたが、統計的な因子分析でわけると、違った結果が出たのでした。

それが、性格的な強み(VIA)を、「5つの強みの大分類」として分類できた、とのことで「1,自制の強み」「2,知的な強み」「3,対人的な強み」「4,感情的な強み」「5,神学的な強み」にわけられたのでした。そして、続く調査ではどの強みがストレス対処や、職務満足度に影響するかなどの分析ニ活用されていきました。

では、24の強みを5つにわけたの因子とはなにか?
因子分析の結果が以下の通りです。

<VIAの強みの5因子構造>
(1)自制の強み(公正さ、謙虚さ、寛容さ 、慎重さ)
(2)知的な強み(創造性、寛大さ、学習 への愛、美の鑑賞など)
(3)対人的な強み(優しさ 、愛情、リーダーシップ、チームワーク、ユーモア など)
(4)感情的な強み(勇気、希望、自尊心、 熱意など)
(5)神学的な強み(感謝、宗教心など)

この結果が、この後もいくつかの論文に出てきており、たしかに強みの種類を「知性」「感情」「自制」「対人」「スピリチュアリティ」でわけることは、性格的強みの大分類としてフィットする感覚もあります。

まとめと個人的感想

新しい論文を呼んでいると、以前になされた研究(今回でいえば強みの5因子構造)の話が登場する場面によく出会います。

無視して読んでもいいのですが、結局「そもそもこの論文って何を背景にしているのか」を掘ると、昔の論文に行かざるを得なくなります。

その都度、最近の論文と、以前の論文を行ったり来たりするのですが、そのことによって、少しずつ「強みの研究」における年表と、各国の研究のパズルが埋まっていくような気がして面白いです(まだ穴だらけのパズルですが)。応用を知るには、まず基礎から。そんな事も思った論文でもありました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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