源流の足跡 郷土芸能の探求〜みちのく民俗芸能が集う 舞・踊の源流を訪ねて
去年初めて岩手県北上市の北上みちのく芸能まつりを見に行き、すっかり北上の郷土芸能の熱に当てられてしまい今年もまた行ってきました。
今年はさくらホールの有料公演を2日分チケットを購入して、しっかり堪能させてもらいました。
まずは会場に入りいつものように自分用、共有用に撮影をしようと一般撮影ブースに行くと垂れ下がっているお知らせが目に入る。
おお、配信禁止。そりゃ有料公演だし、そうだよね。とりあえず自分用に撮って、noteは静止画で貼って書こうと切り替えて鑑賞。しかし今さっきなんとなくYouTube検索してみたら、公式の方(?)の映像が公開されていましたので、そちらを入れ込ませていただきます(アングルも良いし嬉しい!)
なので、是非動画も見てほしいです。
3日のさくらホールでの公演、もはやこれだけでも8分目までパンパンにお腹を満たされた感じでした。
当日会場で配られているリーフレットの中身も余白ギリギリにパンパンに詰め込んでいる情報量から主催側の熱量も感じさせられます(笑)
この記事でも各団体毎にリーフレットを引用も書いていますので、是非読んでみてほしいです。
岩手の北上だけの芸能ではなく、遠野や宮古、岩泉、そして福島の双葉、秋田の藤里、芸能が繋いだ縁の函館までの芸能を一つの会場で見ることができるという凄い企画。
文化と芸能の根源から感じていこうというところから始まる気持ちが伝わってきます。僕自身も芸術、音楽についても同じ様に思い感じ考えることも本当に多くあり、今こうして民俗芸能と縁を持って触れ合っていることにも深い共通性を感じて点を線にしようとしている作業をしている途中なんだなということを改めて感じさせられるような内容でもありました。
全体を見てとてもわかり易い素敵な内容でしたし、それぞれの芸能を祭礼などの地元の行事でやっているところを見に行きたいと思いました。
またこれまで見たり関わり合った郷土芸能の点と点が線で繋がり始めるような感覚にもなりました。
それでは、各団体毎に記録動画と一緒に書いていこうと思います。
藤琴豊作踊り(秋田県藤里町):駒踊り
秋田の藤里町の民俗芸能で、甲冑を着けての踊りは初めて見ました。
演目の「駒踊り」は琴藤豊作踊りのハイライトになる演目だそうで、全体的には大名行列のように様々な役割、芸体が行列で練り歩く芸能だそう。
甲冑は10kgもあるそうで、その上で激しく、肩の大袖を顔に打ち付けるように踊るのは凄かったです。遠くからカメラ越しに見て頬骨のあたりが赤くなっているので、本当に激しく打ち付けているのが分かります。
お囃子の太鼓もかなり大き目の桶太鼓をほぼ床(地面)と近い位置で横台に乗せて、長いバチで打っていました。
この日見た駒踊りの中での演目は
・馬方節、ばっちぐり
駒踊りの始まりを表す歌「馬方節」。両軍が出陣をして形をつくる「ばっちぐり」
・三番叟
踊りの場所を清める演目
・岡崎
出陣の前に息をあげている場面
・乗り戻し
両軍ともに必勝のいきで闘う場面
・膝折
敵味方ともに非常に苦戦をして馬が膝間つきながらも闘っている場面
・大乗り違い
両軍、勝負を決する大奮戦をしている場面
・かた乗り
大奮戦の後、勝負が決まらず引き上げる場面
演目が移る度に解説を入れてくれるのでとても解りやすかったです。お囃子も場面の緩急を表している感じで勇壮かつ繊細でとても耳心地が良かったです。このステージでは太鼓2、笛6の編成。
個人的な感想ですが、この太鼓の調子と笛の合わせた感じ(リズムと旋律の長さや繰り返しなど)の雰囲気が、数年前に北秋田市の綴子神社の例大祭で見た綴子大太鼓と奉納芸能の行列の練り歩きとどことなく、共通している何か感じました。
(綴子大太鼓については、近日記事を書きます)
↓綴子神社例大祭宵祭り(2022年)動画
藤里町と北秋田市綴子の位置関係を調べてみたら30kg圏内で割とご近所でした。もしかしたら、色々と交流や影響があったのかなと想像してみるとなんだか益々興味も出てきます。
余談ですが、この日のさくらホールでの公演が終了した後に宿に行くと志茂若組の方々も同じ宿だったみたいで、思わず声をかけました。頬骨、やっぱり凄く赤くなっていました。この後もおまつり広場での演舞があるそうで、応援させてもらいました。
黒森神楽(宮古市):シットギ獅子
今年の3月に岩手県宮古市の郷土芸能際で「田代大念仏剣舞」を見て、黒森神楽に影響を受けているということを聞いてとても気になっていた芸能で、見られるのがとても嬉しい。
宮古で田代大念仏剣舞を見た時は、七頭舞みたい!って思ったのですが、七頭舞は黒森神楽がルーツという(下記の中野七頭舞の解説文章にて)こともあって、さらに興味深いです。影響を受けているそれぞれの芸能が現代に続いて活動をしているのがなんとも尊いし面白い。
お囃子の編成、楽器も七頭舞や田代大念仏剣舞と似た感じ。そしてシットギ獅子のお囃子が始まると、笛の調など違いはもちろんあるけれど確実にルーツが同じだなと感じました。雄勝の大須と立浜の祭囃子の違いのような感じ(ちょっとニッチ過ぎる表現かな。。。)
まだまだ細かく違いが解るほと見たり聴き込んでいないので、またこれからも機会があったらじっくり見にいこう。
内容的にはシットギ獅子は獅子(権現様)の演目なので、七頭舞や田代の念仏剣舞とは違うのですが、雰囲気の似ている囃子の中だとより強い繋がりを感じました。本当、音って空間に強く作用したり、空間を作り上げたりする上に時空を繋げると改めて思いまします。
刀、杵で団子を作る舞をして、獅子様にその団子咬ませる。団子を作る時の残り汁をお守りとして道化役が参集者に色々とに参集者につけるというのも独特で面白かった。
中野七頭舞(岩泉町)
中野七頭舞を見るのは、2013年に宮城県の栗原万葉祭で共演(伊達の黒船太鼓として)させてもらった時に一度だけ見たことがありましたが、出番の準備などバタバタしていてじっくり見れず、今回じっくり見れるのがとても楽しみでした。
(そういえば2013年の万葉祭の開会の儀で今では一緒に雄勝味噌作の獅子舞でもお馴染みの山下進さんも龍笛演奏して参加していたのも思いました。ご縁だなぁ)
黒森神楽のシットギ獅子のすぐ後に七頭舞。やはりお囃子で空間が繋がっている感じに一気になりました。あまり黒森神楽や七頭舞に浅い僕にとっては演目の別場面なのかなと思うほどでした。
お囃子や舞手の人数は多く、舞手の役柄も多様(7つ)ありとても賑やかで、かつとても縁起の良い感じという印象でした。
7つの道具は「先打ち」「谷地払い」「薙刀」「太刀」「杵」「小鳥」「ササラスリ」で、各2名ずつで14名での踊りはとても見応えがありました。
演舞が終わってから黒森神楽の代表、中野七頭舞の代表の方々のトークもあり関係性をより人目線で感じ取れてとても興味深かったです。
黒森神楽(宮古市):大蛇退治
再び黒森神楽の演目になりました。大蛇退治(おろちたいじ)という演目で、素戔嗚尊が大蛇を退治して櫛名田比売を助けて妻にする物語。(今イベントのリーフレットには八重垣姫って書いてあるけれど、、、どっちなんだろ?)
雄勝法印神楽でいうと叢雲。
お囃子はシットギ獅子では立って演奏していたけれど、これでは座って演奏。シットギ獅子は家の外、この演目は屋内でやる演目、ということなのかな?
セリフがとても聞き取りやすくて何を言っているのか理解できるので展開がよくよく付いていけます。
戦いも、道化(笑える演出)もあって本当盛りだくさんでした。
行山流湧水鹿踊(遠野市):友恋雌鹿狂
遠野の鹿踊、湧水(わくみず)鹿踊。昨年のみちのく芸能まつり諏訪神社公演で見て以来1年ぶりでした。
去年の諏訪神社公演での湧水鹿踊
昨年見た時は、行山流だけど囃子に笛がある!とか、ササラが羽だ!とかそういうところでとても驚いていました。今回久しぶりに見た時、ふと笛の音の流れ?調べの雰囲気が、去年の秋や今年の2月に見た仙台の川前鹿踊、それと荒浜磯獅子踊再生活動でお世話になっている名取市の熊野堂十二神鹿踊の何かと掠るような感覚がありました。
リーフレットによると、なかなか複雑な(?)感じもありますが。これもまた様々な形態の影響を受け合って醸成して研鑽されたものなんだなと感じました。仙台の鹿踊(と、剣舞)もちょっとずつ調べてみようと思いました。
行山流口内鹿踊(北上市):一番庭(礼庭)
今回初めて見させてもらう行山流口内鹿踊。今年から口内鬼剣舞保存会の稽古へたまに顔を出させてもらい口内にも少しずつご縁ができ、鹿踊も見たいと芸能まつりへ来たので楽しみでした。(次の日の諏訪神社公演ももちろん行きます)
大きなササラをつけて踊る太鼓踊り系。ステージで見ているからなのか、太鼓の音が他の太鼓踊り系のよりも低くどっしりした感じの印象。
実はまだ金津流、行山流の違いはまだ一目見るだけでは分からず。。。そして、先程見た湧水鹿踊も行山流だけれど、ササラが鶏の羽だったり笛があったり(久田鹿踊←仙台八幡堂系鹿踊り)謎が深まるばかりです。
が、そういうことはとりあえず置いておいて、やはり格好良いし、たまに可愛い。
滑田系鬼剣舞共演(滑田鬼剣舞・谷地鬼剣舞・函館鬼剣舞)
鬼剣舞には「岩崎系」と「滑田系」の二人の流れがあるそうで、その滑田系の3団体による共演。滑田系の演目「三人加護」を谷地鬼剣舞、「狐剣舞」を滑田鬼剣舞が舞い、最後は滑田系も岩崎系にもある演目「三番庭」を谷地、滑田と函館鬼剣舞が合同で踊るという流れでした。
どれもとても格好良い。お囃子が三人加護も狐剣舞も途中で調が変わる(よく聞く鬼剣舞の調子から神楽っぽい雰囲気に変わる)のが印象的でした。
また、函館(北海道)にもしっかりと滑田系の保存会がありこうやって地元で共演をするということも、これまでしっかり育んできているご縁、凄いし色々と見習いたいとも思いました。
次の日の鬼剣舞全演目公演もとても楽しみです!
前沢の女宝財踊(福島県双葉町):映像紹介
出演予定だった福島県双葉町の「前沢の女宝財踊」は何か訳があり出演キャンセルになったそうでした。(流行り病でしょうか・・・)
見られなかったのは残念でしたが、動画での紹介がありました。次の機会があったら是非生のお祭りなどで見てみたいです。上の映像が多分今回の紹介でも使用されているものだと推測します。他の映像など探してみると、篠笛の演奏が甲音でされているのもあり(上の動画は呂音)オクターブ違うだけで雰囲気が全く違うのが印象的でもありました。
祭礼やイベントの趣旨で変化するのか、それとも演者の自由なのか、色々気になってきました。(個人的に甲音での演奏と踊りの雰囲気が好みでした)
この踊りも2011年の震災後に一度これが最後と腹を決めて踊ったけれど思い留まって未来に残そうと奮闘している芸能だそうで、応援していきたい一つです。
さくらホールでの「源流の足跡〜郷土芸能の探求〜」をしっかり堪能した後は一度宿にチェックインして荷物を置く。外がかなり暑かったので冷房をつけるとお尻から根が生えてきそうになるも、次なるお目当てのおまつり広場へ行くために気合いを入れ直し宿を出ました。
(つづく)
第63回 北上・みちのく芸能まつりレポートシリーズ
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