Goat Girl / On All Fours (2021) 感想
確たる個性
ロックもジャズもクラブミュージックも、今とにかく豊穣なインディー・シーンがある街、イギリス、南ロンドン。Goat GirlはShameと並んでそのロック方面を代表するバンドで、本作は2018年の1stに次ぐ2ndアルバムです。
奇しくもShameの2ndと同時期のリリースとなり、あちらも非常にカッコよろしい作品でしたが、本作もまた素晴らしい作品です。
Goat Girlについて何か書きたいなーと思っていたのですが、特に音楽性に関してはこのMikkiの記事が語り尽くしされている気がします。1stの頃の記事なんですが、音楽性が変わろうとも本作が本質は変わらない、バンドとして確たる個性をもっていることの証左と言えるでしょう。
フォークやエレクトロニック、インダストリアル、クラウトロックなどをバンドで料理すると自然とポスト・パンクっぽくなった。近藤さんが指摘された〈シェイムはUKロックっぽいけど、ゴートガールはそうではない〉っていうのは、このあたりが肝なのかなという気がします。あらゆる音楽がバンド演奏でミックスされると、自然と国籍感が希薄となり、手触りはポスト・パンクっぽくなるという。
特にこの部分ですね。私がぼんやり思っていたことを的確に表していて、やっぱりプロの評論家ってすげー!と思いました。しかし流石に既存の、しかも3年前の記事を貼り付けて終わるのは虚しすぎるので、本作を聴いて思ったことを書いてみたいと思います。
ごった煮感
本作の魅力は前作からの音楽性の広がりにあります。彼女たちの最大の魅力と言えば上の記事の引用にもあるように、「あらゆる音楽がバンド演奏でミックスされ」たごった煮感です。
1stは色々なジャンルの音楽をごった煮してチープなロックンロールに仕上げた、暗いThe Coral(新作楽しみ)とでも言いましょうか、ダークで不思議なごった煮ガレージロックでした。
方や本作は、ごった煮した結果の仕上がりが変わっています。出来上がるのはジャズ、ハウス、チル等を通過したロック。全体的な印象としては、前作よりもサイケでエレクトロニクスからの影響を感じます。
その名もズバリな3."Jazz (In The Supermarket)"晩年のDavid Bowieや中期Spiritualizedを彷彿とさせるフリーキーなジャズを取り入れた曲で非常にカッコよろしいです。
シングルにもなった完全にハウスな6."Sad Cowboy"、基本は1stに入っていたようなガレージロックながら、クラブミュージック的な音の抜き差しで展開を作る7."The Cralk"、チル/サイケな11."Bang"といった振れ幅の大きい曲が並ぶ中〜終盤が紛うことなき本作の個人的ハイライトです。
特に"The Crack"における細かいハイハット等、本作での音楽的変化を支えているのはドラムじゃないでしょうか。この辺はかつて落ち着きのないダンスロックだったFranz Ferdinandにオトナのセクシーさを湛えた傑作"Tonight"を作らせたプロデューサー、Dan Careyの手腕なのかもしれません。彼も気がつけば最近の若手に結構絡んでいる、注目プロデューサーらしいですね。
点数
7.4
ごった煮の中から洗練を見せ始めた2nd。そんな変遷も、個人的にはGoat Girl=現代のThe Coral説を推していきたいと思います。
(その他の参考記事)
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