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Sea Girls / Open Up Your Head (2020) 感想

ロックが聴きたい!

 世界的な潮流としてロックがヒップなものではなくなって久しいですが、今は昔「UKロック」なる言葉まで存在したイギリスで近年、俄かにロック、バンドシーンが盛り上がってきていると言われています。
 新世代知性派パンクスIDLESとFontaines D.C.(後者はアイルランドですが便宜上入れさせてください)を筆頭に、Sorry、Sports Teamなど、批評的にもチャート上でも好成績を残す若手/新人バンドが増えつつあります。

 これらのクレバーかつセンスに溢れたバンドに興奮はするものの、もう少しど真ん中の、ロックでポップなやつが聴きたいなーと思っていたところ、このSea Girlsがデビュー作でやってくれました。

 影響を受けたのはThe StrokesとThe Killers、今作の製作中によく聴いていたのはThe War On DrugsとBruce Springsteen。
 今日日インタビューで「ビッグなメロディー」だの「ドライブ・ミュージック」だのという言葉を恥ずかしげもなく使う彼らのデビューアルバムには、ポップで疾走感溢れる王道のロック・ソングが詰め込まれています。

王道だから

 正直その王道感ゆえに、曲自体に目新しいところや強烈な個性はありません。ざっくりロック度高めのBlossoms、ニューウェーブ寄りにしたSam Fender、などとまとめて片付けてしまえる気もします。しかしだからこそ、気にかけずにはいられない魅力も詰まっています。

 冒頭、"Transplant"〜"All I Want To Hear You Say"〜"Do You Really Wanna Know"と立て続けにアンセミックに畳み掛けられることで、彼らの本気が伝わってきます。
 今時ColdplayかBrandon Flowersしか使わないような「ウォーウォー」、何の捻りもない四つ打ちのリズム、歌メロを追いかけるシンセ…。面食らうほどの王道感です。おまけに歌詞は失恋やら過去の大怪我のトラウマやら青臭いものばかりで、そんなの応援せずにはいられません。胸キュンてものです。

僕はいつも一歩後ろにいて、ビートに乗れず、場違い/今、君を見てるのに、君は他所を向いている/もっと本を読んでいたら相応しい言葉を知っていたもしれないのに/君は心変わりしたけど、僕の心は変わっていないよ -"Transplant"

 中盤以降も「ビッグなメロディー」のアンセミックなロックソング"Forgive"、"Damage Done"や弾むリズムが楽しい"Ready For More"など曲は粒揃いです。

またしても自分と話している/俺は踊りたくなんかない/君はこの曲のインスピレーションでも、書いた理由でもない/説明がいるなら/もう過ぎたこと、ってことさ -"Damage Done"

 欠点はやはり決定的な個性に欠ける点(これからだと思いますが)と、全14曲50分とやや長く、後半に進むにつれてアルバムとしてはワンパターンさを感じるところでしょうか。
 もう数曲削って40分くらいにまとめたらもっと良くなっていた気がしますが、この辺りは未だにアルバムというフォーマットを愛する私のような一回り上の世代との、ジェネレーションギャップなのかもしれません。

点数

6.8

 彼らの今後は、今時珍しいほどの王道ロックを鳴らす新人登場!という以上の個性が出せるかどうかだと思います。個人的には要所要所で耳に残るギターを弾けてビッグなメロディーも書けるという、ギターのRony Youngさんが鍵かなと。次作に期待です。主にルックス的な意味で、あまり日本では売れなそうな気もしますが。


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