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こむづかしい事よりも、もっと面白く楽器について語らねば。

最近書店に行ったところ、先日小澤征爾さんが亡くなったことを受けて、「追悼・小澤征爾」ということで小澤征爾と村上春樹の対談集「小澤征爾さんと、音楽について話をする」という文庫本が売られていた。

私は小澤征爾さんの本は数冊読んだことはあるけれど(武満徹さんとの共著とか)、音楽そのものはそれほどじっくり聴いたことがなかったので、これも勉強だろうと思い購入した。本当は音楽を聴いた方が良いのだろうけれど、どれから聴けば良いかもわからないし、第一小澤征爾さんのCDやらレコードは数枚しか持っていないのでまずは本から読むことにした。

小澤征爾さんのレコーディングしたアルバムをCDラックから探してみると、モーツァルトのコンチェルトのCDがあったのだが、そのほかにウィーンフィルのニューイヤーコンサートを指揮した時の実況録音ぐらいしか出てこなかったので、やはり小澤征爾さんの音楽はほとんど聴いてこなかったことを再確認した。いやはや、音楽に関わる業界にいるのに勉強不足である。

それで、上記の文庫本を読んでいたら、ブラームスのピアノコンチェルト1番(あのピアノが出てくるまでがやたらと長いやつ)の話が出てきて、私も青春時代にグレン・グールドとバーンスタインが録音した一風変わった実況録音盤をよく聴いていたことを思い出し、レコードラックを探したのだけれど、全然出てこない。あれは幻だったのだろうか。

仕方がないので、ブラームスの交響曲の中でも特に好きな4番を聴いてみた。今までに一番よく聴いたのは、カルロス・クライバーがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と録音したやつで、とても躍動感のある演奏が好きだったのだけど、今回、バルビローリ、バーンスタイン(それぞれウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮したやつ)も一緒に聴いてみた。

ブラームスのシンフォニーは、普段クラシックをあまり聴かない私にも聴きやすいし、程よくドラマチックで、何度でも繰り返し聴ける。ああ、懐かしいなぁと思いながら聴いていたのだけれど、流石に3枚立て続けに聴いたら、もうしばらくは聴かなくても良い気がして、他のクラシック音楽も聴いてみることにした。

とりあえず、20代の頃に好きだったマーラーのシンフォニーと歌曲を聴いていたのだけれど、マーラーは聴いていて疲れる曲が多いので、もう少し疲れない曲がいいと思い今朝またCDラックから疲れなそうな音楽を探していた。

初めは、モーツァルトのピアノコンチェルトでも聴こうかと思っていたのだけれど、なんだか気分がのらなかったので、代わりにハイドンのピアノコンチェルトを聴いている。

モーツァルトとハイドンのピアノコンチェルト、そんなに大きく違わないだろう、とも思ったけれど、聴いてみると確かに大きくは違わない。なんとも上品で豊かな音楽であるという意味ではどちらもそうなのだけれど、モーツァルトはもっと天真爛漫な感じの音楽であり、ハイドンはもう少し形式美のようなものが強い(気がする)。今朝の私にはしいてどちらかといえば、ハイドンの方が気分にあっていたのかもしれない。

それで引っ張り出してきたのが(一癖あるやつだったのだが)ミハエル・プレトニョフが録音したやつだった。プレトニョフと言えば確かロシア・ナショナル管弦楽団の音楽監督だったかなんかに数年前に就任していたが、ピアノも名人である(何せチャイコフスキーコンクールの優勝者であるので)。プレトニョフは指揮者としてはダイナミックな音楽を作る人というイメージがあり、そういう人が、比較的コンパクトに収まりがちなハイドンのピアノコンチェルトを弾くとどうなんだろうかと思い聴いていたのだけれど、私は特にこれといって違和感を感じることなく聴いている。

詳しい人に言わせれば色々な意見はあるのだろうけれど、私はこのプレトニョフのハイドンとても好きである。ピアノの透き通るような音色など、ハイドンやらモーツァルトをもっとたくさん弾いて欲しいと思う。
プレトニョフのハイドンの演奏からは、ハイドンの音楽の甘美なところが素直に聞こえてくる気がした。難しいことは抜きにして、肝心なところをじっくりと、というような演奏だった。

それで、冒頭の小澤征爾と村上春樹の本の話に戻るけれど、小澤征爾さんの語るクラシック音楽はとても面白い。「クラシック音楽はこう聴け!」というような嫌な押し付けがましさはないし、もっと詳しく教えて欲しい、と思わされる。どうも、クラシック音楽について書かれた本はお勉強のような、お説教のような内容の本が多くて(アカデミックに染まっていて)読んでいると自分が賢くなったのではないかと錯覚すると同時に、なんだか嫌なものを感じていたのだけれど、この本はそういう嫌なところが少ない。

ジャズについて話している本の中にもアカデミズムに染まっているか、楽屋ネタばかりで嫌味な本が多いのだけれど、そういう本も時々読むと面白いのだけれど、かえって学ぶべきところが少なかったりして、学び取れる内容があまり応用が聴かない内容だったりして面白くない。

小澤征爾さんの話からは、もっと音楽に対する情熱や「この人音楽好きなんだなぁ」という雰囲気を感じられる。こういう、真っ直ぐさや情熱を振りまいている人の話はとても面白い。もっと、小澤征爾さんの音楽を今まで聴いてこればよかった。

私自身も、こういう風にアカデミズムを気取ることなく、もっと純粋に楽器やら音楽について語れる人間にならなばならないと、反省した朝であった。

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