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フュージョンブームを支えたBob Jamesのピアノサウンド。

数日前にBob Jamesの近年のスタジオライブをYouTubeで観て、代表曲の多くをピアノトリオで演奏しているのを聴いた。

Bob Jamesの機材はヤマハのフルコンと、Rhodes Suitcase MK1。それと、小さなシンセのようなものをRhodesの上に置いて弾いていた。80年代〜90年代のBob Jamesのレコードを何枚か持っているけれど、彼のそのころの作品はアレンジも凝っていて、管楽器やエレキギターも入っている。だからというわけでもないのだが、なんとなく懐かしいフュージョンの香りがする。

フュージョンって、その頃流行っていたのだろう。そしてBob Jamesはその真ん中にいたのだろうと、それらのレコードを聴いていると感じさせられる。

私自身は、ほとんどフュージョンのアルバムは聴かないのだが、Bob Jamesだけは時々聴いている。Bob Jamesの弾く都会的なピアノは好きだし、Rhodesピアノのサウンドはまるでこの楽器はこの人に演奏してもらうために作られたのではないだろうかと思えるほどBob Jamesの音楽に合っている。バックを固めるプレーヤーも豪華で、フュージョンという名前を特に意識しないで気持ちの良いグルーブを聴かせてくれる。

Bob Jamesの演奏の中では、もちろん本人のレーベルTappan Zeeのレコードも良いのだが、まだTappan Zeeを設立する前にサイドマンとして参加しCTIに録音されたアルバムのものが好きだ。

CTIのレコードジャケットをじっくりと見たことがないので、Bob Jamesが何枚ぐらいのアルバムでピアノを担当していたのかはよく知らないけれど、Chet BakerのShe Was too good to meの一曲目「枯葉」のピアノソロ(Rhodesピアノ)はBob Jamesだったと思う。あれを初めて聴いた時、Rhodesピアノってかっこいいなあと感じたのを覚えている。

Bob Jamesのアコースティックピアノのサウンドは、その頃からどこかシンセにサンプリングで入っているピアノの音のような、ドライで均一的な雰囲気があり(タッチが強いせいか?)アコースティックピアノの音色を聴かせるというよりも、もっとピアノという楽器をキーボード楽器の一つの音源と考えて弾いているような音色なのだけれど、そういうスタイルもちょっとレトロで良い。それでいて、ちゃんとBob Jamesのサウンドになっているのだからやはり名人は凄い。

先日YouTubeで観たBob Jamesのスタジオライブでは、もう少しアコースティックピアノの音がアコースティックピアノらしい音になっていて、もう少し現代的なサウンドになっていた。

こういうところで、均一的なサウンドを出せる楽器という側面ではYamahaの楽器は優れていると思う。楽器というのを音色のエロスの世界に落とし込まないで、まるでシンセ・キーボードにプリセットで入っているピアノの音色のような音にできるのだからさすがは日本が誇る工業製品楽器である。(いい意味でも悪い意味でも)

Bob Jamesのサウンドは80年代〜90年代の流行りの影響も強く受けているのだろうけれど、時代を超えてそれを彼のサウンドに昇華させているのはやはり名人たる所以であるとYouTubeを見ていて感じた。

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