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製造ディレクション実績まとめ

(最終更新:2023年 4 月 10 日)

はじめに

 これまで2019年頃より、家業の城南工業株式会社を足場に行ってきた、工場(現場)への発注ディレクションの実例をまとめてみました。一部、個人のCounterpoint名義で携わったもの、また製造の役割ではないものの携わった工場関係の企画も一緒にしています。
 表に出せないお話は勿論ありまして、これがすべてではないのですが、それも含めて色々なものを形にするお手伝いに多く携わらせて頂いたなという実感です。
 今後、何かをつくりたい人、金属加工が好きな人、工場が好きな人、いろんな方の参考や娯楽になってくれればと思っております。

2019

 案件を取ってきた製作実績あるにはあるものの、あんまりディレクションをしていない(できていない)ので飛ばします。この年は技術展示会や工場見学で様々な製造加工法についての勉強をしていた最中でした。懐かしい限り。

実行委員:鉄工島FES 2019

 工場のある京浜島 a.k.a 鉄工島の地元枠として「鉄工島FES 2019」の実行委員になりました。
 コロナを境に毎年のFESはストップし、運営体制の変化もあり、現在行われておりません。しかし、ぼくも含めて多くのファンの方がいる企画ですし、いつか復活出来たらなと思っています。

ステンレスのベースにネオン管でつくられたメインサインボード。
これがアオイネオンさんとぼくの最初の関わりであり、
後年、より深く関わることとなることをまだ誰も知らない…

2020

作品制作サポート:田添かおりさん
Small Factory Ring "Punch Hole Project"

 ぼくの走りはじめにして代表作となっているのがSmall Factory Ringの平板版 "Punch Hole Project"です。
 そもそも、Small Factory Ringは現代美術作家の田添かおりさんと、大田区のネジ屋さんである矢澤製作所さんを中心に制作されている作品です。(アートなのであえて製作ではなく制作と呼んでいます)

(オンラインショップは入荷してもすぐ売り切れてしまうため、各地ギャラリーや百貨店で行われているポップアップでお買い求めになるのが良いかと思います。)

Small Factory Ring
ネジ式のトップパーツとリングパーツに分かれ、自由に組み合わせることができる

 田添さんにはワガママを言って時間をもらい、原案スケッチ(DXFデータ含む)をCADでトレースする練習をさせてもらいました。すごく懐かしい。つまり、デザインエンジニア的な習熟機会をここで得られたため、ぼくはCADや見積作業ができるようになりました。

 Punch Holeとは、穴あけパンチの際に重なって穴を空けてしまったところからの着想です。個人的にはヒューマンエラーを精密に機械で再現しているところに面白味を感じるのですが、田添さん曰く「そこまで考えてはいない」とのこと。

Punch Hole Ring
Punch Hole Pierced Earrings

 ファイバーレーザー加工は熱による反りなどがほぼないため、薄物や小物の加工に向いています。リングは10種類、ピアスは9種類の形状を展開していて、中には小数点第2位以下の数値まで寸法値を入れているものもあります。
 レーザー加工後に手作業でのバリ取り、バレル研磨を経て金メッキを施しています。


企画運営コーディネート: ROUND TABLE 2020

 ラウンドテーブル2020は、大田区を拠点とする町工場とクリエイターによるコラボレーション・プロジェクトです。
 町工場の持つ実現力とクリエイターの持つ発想力を掛け合わせることで、新たなものづくりの可能性を探求します。受発注の関係性とは異なる対話やコミュニケーションをもとに、相互に新たな発見や魅力を引き出しながら協働プロセスを進めていきます。
 ROUND TABLE 2020は「遊具」をテーマに3組のコラボレーションによるプロダクトがうまれました。
クリエイターと工場が持つそれぞれの特徴や経験を活かし、相互の対等な関係によるコミュニケーションをもとに、「遊び」そのものを問い直すプロジェクトです。
 実験的な思考と実践を軸に、技術と知識の共有を進め、既存の枠組みに囚われない新たな「遊具」を生み出すことで、現代に必要な遊びのあり方を可視化させることを目指します。

 恐らくそれほど有名ではないかと思いますが、ぼくの実績の中でもキラリと光る企画であったかと思います。
 マニュファクチャリングとクリエイションの両方を少しずつ理解する人間であったぼくは、コーディネーターという名義で3組の工場とクリエイター(作家・クリエイティブディレクター)との対話の橋渡し役や、相手に直接聞けない(聞くまでもない)ことを消化する役になっていました。
 是非、動画やサイト、活動の記録であるドキュメントをご覧になってみて下さい。領域の異なる人たちと一緒に仕事をすることがどういうものか、三者三様に表れています。

 また、このプロジェクトをきっかけに生まれたプロダクトの「積みg(グラム)」は2021年度のグッドデザイン賞を受賞しました。


2021

作品制作サポート:Project YU-RA

 アルミ材の角パイプを動く照明のレールにするため、切削・アルマイト処理のディレクションを行いました。

相談の様子
納品・検収の様子。

作品制作サポート:東恩納裕一さん①
『Safi. 店内造作物』


作品制作サポート:河合政之さん①
『Video Feedback Configuration No.16 Mirrored 1』


To Be Continued…

文字入真鍮看板製作:株式会社越境
「珈琲文庫」

 真鍮材のブランク・穴加工後、エッチング処理にて文字入れ。


かどシェルフ|モクチンレシピ:NPO法人CHAr

 SECC(ボンデ鋼)に焼付塗装で仕上げた特注金具です。
 以前、「相談→試作→本製作」の流れがお手本のようだなと、他の方に説明するサンプルとしてスライド化したのでここにも置いておきます。

→参考「かどシェルフ」を例とした相談から製作の流れ

要件や希望を共有する
希望に対して製造側からの確認や提案
(製作方法など、内容が決まったら、この段階で見積を出します。)
現物の確認と改善


共同試作展示:FACTORIALIZE
シーリングライト"CASA"シリーズ

To Be Continued…

アオイネオンガラス管ネオンサイン制作:SHIBUYA NEON SOUNDS

2つのバンドロゴのネオンを制作

 「なんか映えるものづくりしてる工場さん知らない?」という東急エージェンシーさんからの御相談を受け、LiveParkさんのインタラクティブな音楽ライブ配信を、東急メディア・コミュニケーションズさんの協力のもとに行った企画です。同じ大田区に本社を構える映え映えのネオン制作会社アオイネオンさんを繋ぎました。
 ライブの肖像権的に何とも言えないので中途半端な画像ですが、ネオンを題材にした作品を多くつくられている「はらわたちゅん子さん」の既存の作品をアオイネオンさんがお借りして演出に使用させて頂き、新たにガラス管ネオンでバンドロゴを制作しました。なかなかいい感じの空間演出に。

 割と企画段階から入っていた珍しい案件でしたが、制作の費用や納期などはしっかり間に入って希望を伝えたり、「繋いだ工場は絶対守るぜ」の姿勢を取っていました。 
 この案件をきっかけにアオイネオンさんの営業職としての活動もさせて頂くこととなりました。何かガラス管・LEDネオン、デジタルサイネージなど、光る看板にまつわる御相談もお気軽にどうぞ!

店舗特注レジカバー製作:NPO法人CHAr

 建築事務所さんが手掛けられた店舗へ、後入れで特注のレジカバーを製作・納品させて頂きました。
 KOCAの繋がりのCHArさんのおかげで、「近所のお店」に貢献することができました。おかげさまで、お店を訪れた際には「アレ、ウチでやったやつ」とビール片手にドヤ顔ができます。
 テクニカルなことを言うと、SUS430は水回りに強く錆びにくいステンレスの中でも磁性があり、今では裏表に磁石で色々な情報物が貼られています。また、表面の研磨処理の仕上げスタイルの一つである「バイブレーション仕上げ」はキズが目立ちにくいので、飲食店などキッチン周りで多く重用されています。

2022

作品制作サポート:河合政之さん②
『Video Feedback Configuration No.17 Mirrored Display 1』


作品制作サポート:東恩納裕一さん②
『3331 Arts Chiyoda Cafe "Ubuntu"内照明』

 東恩納裕一さんのお仕事はシンプルな部材加工の御協力が多く、工場と工場の普段のやり取りに近いものがあり、とても嬉しいです。
 3331も惜しまれつつ無くなってしまう(一般入場は2023年2月末まで)ので、この作品とはどこに行けばまた会えるのか気になっています。(この時お会いした方に伺おう。)

アオイネオンガラス管ネオンサイン制作:KWさん
ウェルカムボード

結婚式・披露宴のウェルカムボードの個人依頼

 当時知人、今や友人のインダストリアルデザイナーKWさんから「ネオンでウェルカムボードをつくりたいんですが」と御相談を受けました。ロゴの文字を繋げたりなどしているのですが、作り手へのリスペクトがある方なので、加工の制約なども興味関心の中に入れて楽しまれていたのが印象的でした。

 その後はインテリアになりました。最高かよ。

お宅にお邪魔した際に記念撮影。
ネコちゃんは人見知り過ぎて部屋から出て来てくれませんでした。
次回リベンジ。


超硬特殊材料加工ディレクション:株式会社ロフトワーク

 相談依頼を頂き、ヤバ硬い素材の加工法をぼくの既知の会社さんと模索しました。自分のかかわったもので初めて「エンドミルが折れまして」という報告を受けたプロジェクトでした。
 大田区の加工会社のバリエーションの多さや、ネットワークの広さ、また、製造業の商習慣についても少し改めて考える機会にもなりました。

耐熱塗装処理ディレクション:株式会社Vanwaves

 パーソナルサウナの石を乗せる器具部分や消火蓋の耐熱塗装のディレクションをしています。
 Vanwavesさんを御紹介頂いたのは、地元の大田区の同世代仲間の友人の繋がりからで、「板金の相談できる人仲良いよ」と言ってくれたことがきっかけでした。
 売れ行きも好調に推移しているそうで、弊社も累計約700台の受注を頂いているかと思います。(2023年4月現在)
 御縁あってのことですが、「継続的に売上をつくってくれるお客様」としては城南工業として初めてのベンチャー企業のお客様なのではないかと思います。協力会社の塗装屋さんも、ECページを見守ってくれていて「また売り切れたね!」と言ってくれます(笑)
 何より、新しいカルチャーをつくる企業さんに微力ながらお力添えできることは名誉であり、「工場×○○の模索」を標榜するぼくとしても冥利に尽きます。サウナ好きの方は是非彼らのページを訪れてみて下さいね!

作品制作サポート:河合政之さん③
Video Feedback Configuration No.18 Mirrored Display 1


脳波測定デバイスモックアップ:NOK株式会社


表彰盾部品製作:2022年度 プロジェクションマッピング国際大会「TOKYO LIGHTS」

 "Made in Tokyo"で、複数社の工場が力を合わせて製作した事例でした。

表彰盾:グランプリ(東京都知事賞)

 SUS304のt=0.3の材料にレーザー加工を施しました。
 DXFデータのデザインそのままに製作。苦労はほぼほぼ何もないお仕事だったのですが、極短納期かつ「デザイナーさん→元請け→弊社」という流れの中で、デザイナーさんの意図を汲む必要がありました。一番細い葉の軸のところで幅約1mmかつ極薄だったため、50枚弱をバリ取り機を通すには曲がりや折れの懸念があり、手作業も手間がかかる&ジョイント(金属板の母材と品物を繋ぐ箇所。バリのように残る。)の取り方も神経を使うため、ここはレーザー加工の「抜きっぱなし」で納品しました。
 ディレクターとしては、現場の工数を最小限にし負担を抑えることを考えなければならず、また、デザイナーさんの「なんか違う」に対応するためにも、直接のやり取りではない場合は元請けにお任せしてしまうのも手だと思っています。その代わり、注文から1~2日で設計調整・確認から製作、納品までを完了し、元請けさんの時間的猶予を確保できたのではないかと思います。

表彰盾:
グランプリ / TOKYO LIGHTS賞(準グランプリ) / 審査員特別賞 / Tokyo Tokyo賞 / オーディエンス賞

 この企画も東京都の後援を受けているイベントであったため、"Made in Tokyo"であることがテーマの案件でしたが、実は、企画が立ち上がる前に発注側からは、既知の方を通じて

「東京のものづくりで記念品をつくるとしたら何かアイデアある?」

という御相談を受けていました。ガラスの伝統工芸である江戸切子なども候補に出しつつ、やはり大田区の金属加工を推し、製造技術展示会から相談に入ってみることを提案しましたが、それからしばらく音沙汰がありませんでした。(よくあること)
 「流れたかな?」と思っていたところ、大田区の別ルート(行政も通じた)で進行していて、要素技術として請われて弊社に相談が「戻って来た」という面白い案件でもありました(笑)
 結果的に、協力会社のロゴを掲出させて頂くなど、恐らく自分が全体統括をするよりも規模感が大きくなったのではないかと思っています。


特注造作物インターフォンカバー製作

 建築関係での特注の品物製作です。
 思い描いた意匠とその実現可能性の狭間で検討がなされることがほとんどですが、発注側と受注側の関係性が良ければ様々なことにチャレンジできると思っています。
 「SS400=黒皮鉄の質感を大事にしてつくりたい」との要望で、
「錆びちゃダメだろうし、黒皮も材料入ってみないとムラの状態分からないな…」「キズ目立つから慎重に…」などと思案しつつ、最大限綺麗な状態で納品したところ、「もっと汚くても良かったな」なんて言われたり(ズコーッ
 各々の美的感覚の違いもあるので、「えー!先言ってよぉ~(笑)」なんて言いつつも、取り返しがつく状態で納品することを心掛けています。この場合は、ちょっと放置しておけば赤錆が出て汚くできるので、(発注側である)懇意の建築家にそう言いました。「そうする」と言っていたと思います。


作品制作サポート:井出賢嗣さん①


2023

センサーデバイス筐体製作


小型ロボットパーツ一括製作


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Kay Takihara (タキハラ ケイ)
拙稿を笑覧頂き御礼申し上げます。 何かありましたら → tkay0917@gmail.com まで宜しくお願い致します。 皆様からサポート頂きましたお気持ちやお金は、見学先の工場さんへの手土産に換わります。