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19年間みたソファ、とそれから

グレーのソファにレースの飾り。
玄関から入って目の前のソファ。
それは、祖父の定位置だった。

祖父母の家が近く、幼少期はマメに通っていた。
頻度が高い時は毎週のように行くのに、毎回背が伸びたかと聞かれた。
かつて英語教師だった祖父から、英語を学んだ5,6年間は貴重だったし、もっと大切にすべきだったと今では思う。
もっと小さい頃はチラシでパズルを作ってくれたり、冬には雪だるまやかまくらを作ってくれた。
公園に行きたいと言えばついてきてくれた。

祖父は、十年前に亡くなった。

いつも辛くて思い出さないように蓋をしているけれど、溢れる思い出がたくさんある。
そのソファに座って出迎えてくれる姿、ソファの向きを変えて英語を教えてくれる姿、お昼は絶対にトーストで、りんごとアイスクリームが好き。
本好きな私に、定期的にお小遣いをくれて、ありがたく好きな小説を読み漁った。
写真が趣味の祖父は幼少期の私をよく撮っていたが、容姿にコンプレックスのあった私は次第に写るのを拒んだ。これは本当に後悔している。写真くらい、いくらでも撮らせればよかった。それで祖父が喜ぶのなら。

もっともっとたくさん話せばよかったなと思う。
どれだけ話しても後悔はするのだろうと思うけれど。

今、祖父母の家に行くと、そのソファには祖母が座る。
こんなに経っても、まだ少し見慣れない。そこは、おじいちゃんの場所だよ、と思う。
そして、コロナ禍で無ければもっと頻繁に会うのに、と思う。
今度こそこの光景をもっと目に焼き付けるのに。
ジレンマに襲われる。

けれど、高齢の祖母であるからして、タイミングを見計らわないと会えない。
折角会話も成り立つし、お昼ご飯やお茶まで出してくれるほどしゃんとしているのに。

あと何回会えるだろう。
祖母だけでなく両親にも思う。
私の中にしっかりと閉じ込めておきたい風景だ。

#未来に残したい風景

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