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それはカラスです…②

前回のお話はこちら

 その日は日曜日だったそうです。
 たまたま休日が被った二人は、どこに出掛けるでもなく家でゆっくりと休みを満喫していました。
 お昼過ぎになりTさんはリビングでTVを、Mさんはというと多少の警戒心はあったものの隣の部屋にTさんがいるという安心感からか、寝室で横になりうたた寝をしていたそうです。
 Mさんがウトウトとしているときでした。突然








コンコンコンコンコンコンコンコン

 部屋の一周するかのように、何かが壁を叩く音が鳴り響きました。
 驚いて跳ね起きたMさんはTさんに
「今の音なにっ⁈」
 と尋ねました。

「…カラスだよ。この辺ゴミを漁りにカラスが来るんだ」
 少し間を置いてTさんが応えました。
 当然Mさんはその返事に納得がいきません。

(Tくんはカラスっていうけどカラスってこんなキツツキみたいなことするかな…。それに…。)

 Mさんはその場では彼に追求することはやめたそうです。もし今自分が感じた違和感を伝えてTさんがそれを肯定してしまったら、もうここには住めないと思ったからです。





コンコンコンコンコンコンコンコン

 まるで部屋を一周するかのような音。Mさんはリビングに接した寝室にいます。つまりコンコンコンコンと部屋を一周する音は外にいるカラスなどではなく、部屋の中から壁を叩くなにかの音としか考えようがありません。

 結局その家ではその後も猫幽霊や寝室の怪異だけにおさまらず、脱衣所からする気配や水が滴るほどに湿気り続ける押入れ、何も映っていない真っ黒な画面に現れた巨大な赤ちゃんの顔などさまざまな現象が起こり、疲れから体調を崩したMさんは咳が止まらなくなり声が出なくなってしまいました。
 これには怖いもの知らずのTさんも参って、程なくして二人は引っ越したそうです。
 引っ越したその日、彼女Mさんの原因不明の咳は止まり、完全に治るまでに半年掛かったようですが声も元通りになりました。
 そして極度の怖がりだったMさんは耐性がついてしまったのか不可解なものに対してあまり恐怖を抱かなくなりました。そしてTさんほどではないにしろ、あの家での出来事をきっかけに勘が鋭くなり今でも波長があったときだけ色々と分かるそうです。

『それはカラスです…』

※本作品は実話を元にして構成されています。
 本作品に登場する人物・地域等は一部フェイクを入れていますが詮索するような質問は受け応え出来ません。


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