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犬は不可です猫は可です②

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 異変が始まったのはTさんが入居してから間もなくのことでした。
 リビングでひとりゲームをしていると紙袋の中に適当にまとめたスーパーの袋が弾けて飛び出す。寝室のテーブルに綺麗に積み上げたDVDが突然音を立て崩れる。水切りかごに入れた食器がガチャガチャガチャガチャと音を鳴らす。
 まるで映画や怪談話によくあるポルターガイストのようなものが頻発したのです。

 「幽霊が出る部屋だったんだな」

 Tさんはその数々の現象に始めはびっくりしたものの、音を立てたり物が落ちるだけなら無害と判断し、若い頃から不思議な事象に遭遇してきた経験から怖がることもなく、そのうち音がしても気にも留めなくなっていったそうです。
 しかし心のすみには
 「どんな幽霊がいるのかな?」
 という好奇心も少しありました。

 話は少し逸れて、冒頭でお話したTさんの階下【101号室】の大家の息子さん夫婦。仮にS夫妻とします。
 S夫妻はアパートから少しいった繁華街で飲食店を営む50代ほどの感じの良い夫婦だったそうです。
 特に夫のSさんは同じ男性のTさんから見ても格好が良くとても若々しく、時折りTさんと出会うとニコニコと挨拶をしてくれる気さくな方でした。
 S夫妻は自宅で猫を飼っているそうで、その時初めてTさんはあの入居条件に少し納得がいきました。
 「自分たち(貸主)が猫好きだから猫は可なんだ。それならついでに犬も可にしてやれば良いのにな。けどもしかしたらSさんたちは犬が苦手なのかもしれない」
 どちらかと言うと犬派のTさんはそう思いながらも自分には関係のないことなのでそれ以上気にしないことにしました。

 ただ、所謂 地域猫 に与えるためのものなのかSの妻がガレージの隅、つまりTさんの部屋も含む家の敷地内に中身の入った猫缶を置くこと。Sの【101号室】とガレージの周りだけ昼間でも異様に暗いことが気掛かりでした。

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※本作品は実話を元にして構成されています。
 本作品に登場する人物・地域等は一部フェイクを入れていますが詮索するような質問は受け応え出来ません。

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