犬は不可です猫は可です③
前回のお話はこちら
Tさんが変わった物件に住み始めて2〜3ヶ月ほど経過し季節は夏。ポルターガイスト現象は相変わらずでしたが何も気に留めず、彼はその日の夜も素足にハーフパンツという涼しげな部屋着でTVを観ていました。
トイレに行きたくなり立ち上がりリビングのドアを開けようとしたそのときTさんの足を異様な触感がすり抜けていったのです。
柔らかい毛がぬるりと滑る、けれど彼の足にそれをぐいぐいと押し付け甘えているかのような感覚。
まるで飼い主に気まぐれで足に擦り付く猫のような…。
それに気付いたときTさんは自宅で起こる怪現象に全て合点がいったそうです。
「猫ってさ、袋とか好きだしいたずらするじゃん。テーブルのDVDだって跳び乗って崩しちゃったんじゃないかな。食器も人間に怒られないから触って遊んじゃったのかもね」
Tさんはそう言うと、猫の幽霊なんてトイレも餌もいらないしお得だと冗談めかして笑っていました。
「けどさ、これは俺の想像だけどさ…」
ここからはあくまでもTさんの推測なのですが、この猫の幽霊、もとは下の階に住むS夫妻の飼い猫なのではないかということ。そしてS夫妻もそれを知っているということ。
けれどもし仮にそうだとしてS夫妻と全く関係のないTさんの部屋に猫幽霊がでるのはおかしいのではないか。
私は彼にそう疑問を投げかけました。
するとTさんは
「そのアパートってアパートといっても貸しているのは【201号室】。つまり俺が借りている部屋だけ。外観や俺の部屋の内装はまるで二世帯住宅として建てられみたいだって以前にも教えたよね。S夫妻と話す機会があったとき聞いてみたんだよね。『こちらの大家さんはSさんのお母さまのお名前になっていて現在他県にお住まいなんですよね?ということは息子のSさんがこちらの管理をされているんですか?』ってさ」
そして彼は推測した理由を教えてくれました。
なんでも【101号室】に住むS夫妻とS(夫)の母親である大家さんはもともと一緒にこの家に住んでいたそうです。なので 二世帯住宅のような造り ではなく 二世帯住宅として設計された家 だったのです。
しかし母親である大家さんのご主人が亡くなったことをきっかけに、大家さんは余生を故郷で過ごしたいと考えS夫妻を残し余った一室を賃貸物件にしたのだそうです。
「二世帯住宅ってさ、普通は若い世帯が2階で親が1階に住むことが多いじゃない?階段が大変だしさ。だからS夫妻って元々は今俺が住んでる2階で暮らしてたんじゃないかな。その期間に飼い猫が亡くなってしまった。飼い猫は幽霊になった。S夫妻は可愛がっていた猫だから当然黙認した。けど月日が流れ新しく飼い猫を迎え入れたけど、その猫と猫幽霊の相性が悪かったかなにか都合の悪いことが起こって自分たちは下の【101号室】に引っ越した」
そして
「亡くなって幽霊になっても可愛い飼い猫だから、端から相性が悪そうな犬は不可。けど猫幽霊が寂しくないように、もしかしたら相性のよい子が見つかるかもしれないから猫だけは可にしてるんじゃない?」
とも言っていました。
Tさんもさすがにこの推測をS夫妻には話せませんので真相は闇の中ですがTさんは最後にひとつ教えてくれました。
「猫はどうでも良いんだよね。あの家もっとすごいのいるよ。あとS夫妻、猫以外のことで何かしらあると思う。S夫妻の部屋の前とガレージだけ昼間でも異様に暗いんだもん。怖くはないけど出入りするとき毎回あそこ通るのは嫌な気分だよ。正直俺の部屋にも漏れて来ちゃってるし」
犬は不可/猫は可
そんな少し変わった物件に住むTさん。
猫以外のモノの詳しい話はまた別の機会に。
『犬は不可です猫は可です』
了
※本作品は実話を元にして構成されています。 本作品に登場する人物・地域等は一部フェイクを入れていますが詮索するような質問は受け応え出来ません。
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