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マルタ島のゲストハウスで出会った今も記憶に残る女性達

#私たちは旅をやめられない
#TABIPPOコンテスト

少し昔の話になるが、一人旅が好きになるきっかけとなった、マルタへの旅について。

スリーマのゲストハウス
大学3年の夏休み、1ヶ月間ほどマルタに滞在した。きっかけとなったのは、友人から見せられた青の洞門の美しい写真。イタリアのカプリ島の青の洞門も有名だけど、マルタはもっと色が濃く美しいと耳にし、英語の勉強も兼ねて訪れてみることにした。ホテルに1ヶ月も滞在する費用があるはずもなく、スリーマにある一泊2000円くらいのゲストハウスを予約した。
夏の暑く乾いた空気、深い濃紺の海、中世ヨーロッパの雰囲気漂う街並み、カラフルな出窓、迷路のような路地、船着場の色とりどりの小舟。どの風景も絵画から出てきたような美しさだった。
ゲストハウスは女性専用のドミトリーで、二段ベッドが2台の4人部屋にキッチンとバスルーム。私は日差しの入る窓側の下のベッドに定住することにした。
そこで経験した数々の出会いの中で、今も印象に残っている女性たちについて。

フランス人マダム アン
まずはベッドの上段の女性にあいさつをすると、ドミトリーの雰囲気とはかけ離れたブロンドカラーでショートカットの素敵なマダムが読書をしていた。軽く会釈だけ返され、それ以上の会話は続けられなかった。
翌朝、朝食のダイニングで一緒になり勇気を絞って話しかけてみると、アンはパリ在住のエールフランスのクルーだった。休暇を利用し、旦那さんはフランスに置いて一人の時間を楽しむためマルタに滞在しているとのこと。
当時、大学生の私にとって、パリ、CA、バカンス、旦那さん、一人旅は全て憧れのワードだったが、その後もアンとは良く話をするようになり、初めて経験するフランス人独特の英語のアクセントに親しみがわき始めた頃、彼女はバカンスを終え帰って行った。
帰り際、長年一緒にいる旦那さんとの関係について振り返りたく、一人になって考え直す時間が欲しくてマルタに来たんだと打ち明けてくれた。大学生の私には到底、良いアドバイスができるわけもなく、ただただ彼女の話を聞き、パリに戻ったらどうか旦那さんとうまくいきますように、そう願いアンを見送った。

南フランスのソーシャルワーカー マリー
隣のベッドにいた女性はいつも昼前まで寝ていた。毎日何しているのかと話しかけてみると、夜はだいたいセントジュリアンへ飲みに行っているとのこと。一人で飲みに行くほど勇気もなかった私は、一緒に行っていいか聞いてみると、早速その日の夜出かけることになった。
彼女、マリーは南フランスからきた30歳手前のチャーミングな女性で、ソーシャルワーカーをしているせいか、初対面の私に対してもとてもフレンドリーだった。仕事の大変さの話から始まり、恋話、そして今の彼氏との結婚についても話してくれた。私は甘いカクテルを飲みながら、近い将来、自分にもこんな話を誰かにする日が来るのかと想像しながら、マリーの、ワインをかっこよく嗜む大人な女性の姿に、どきっとした。

ノルウェーの女子高生達
平穏だったドミトリーが突然、騒がしくなった。
体格の良い女の子たちで部屋は占領され、時々隣の部屋の男の子たちも行き来するようになり、私は端っこの方に追いやられてしまった。彼女達は、学校のスクールトリップでマルタに数日滞在しているようで、時々先生らしき女性が部屋をのぞきにきた。夜になるとみんなクラブに行くのか気合いの入った衣装で出かけて行った。束の間の平和な時間、ダイニングテーブルで日本から持ってきた雑誌を見ていると、一人の女の子が話しかけてきた。
どこの国から来たのかと聞かれたので、私は日本だよと答えると、日本人と話すのは初めてでうれしいと言ってきたので、私もノルウェーの人とは初めて話すよと返した。彼女は私の読んでいた雑誌none-noに興味深々だったので、あげることにした。これで日本のことをもっと知ってもらえれば、うれしいなと期待して。

早期リタイア後、世界を旅するアメリカ人女性 スーザン
そろそろ滞在3週間も過ぎ、私はベテラン感が出ていたのか、母親くらいのパワフルな感じの女性から、明日何をするのか聞かれたので、ゴゾ島へ行くことを伝えると意気投合し、一緒に行くことになった。私はゴゾ島にはすでに何回か行っており、最後にもう一度行っておきたい場所があったので、道中だけ共にすることにした。
彼女はスーザンといいIBMに長年勤め、早期リタイアしてからは気ままに世界を旅しているとのこと。子供達はちょうど私くらいの年代でもう手はかからないし、旦那さんは別の趣味があるとかで、気兼ねなく旅ができると話していた。福岡の大学に通っていた私には、アメリカの超一流企業に勤める人との接点なんてあるわけもなく、映画やドラマに出てくるお洒落なオフィスでかっこよくスーツをきた人たちがバリバリ働いているのを想像するだけでもワクワク。スーザンはかなり使い込んだウィンドブレーカー、スニーカー、リュックと出で立ちはかなりラフな感じで、ちょっとイメージとは違ったが、めちゃくちゃフレンドリーで家族のこと、旅での出会いの話をしてくれた。
彼女と一緒に、ゴゾ島行きのフェリーから見た、地中海の深い濃紺の海がどこまでも広がる景色は、かつてマルタを侵略しようと図り往来した外国船の歴史を感じさせるとともに、これから社会に出てたくさんの荒波に巻き込まれるだろう大学生だった私の心を静かに包み込んでくれている気もした。

あれから10年以上経過したが、かつて経験した一人旅の楽しさに気付かされた想い出の地マルタへ、もう一度行ってみたいと思う。
バレッタ市街地にあるマルタ最古の一流ホテルメリディアンフェニシアで優雅なディータイムを、そして、セントジュリアンのビーチリゾートウェスティン ドラゴナーラ リゾート マルタのプライベートビーチで、ワインを飲みながらのんびりしてみたい。
そして、1日くらいだったら、かつて滞在したゲストハウス コーナーホステルスリーマにステイしてみるのも良いかなと思う。


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