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1. The Secret Destinations
国内線の飛行機に乗るのは久しぶりだ。
この20年間の間に、国際線に乗ったことはそれこそ3桁を下らないが、国内線に乗るのは生まれて4度目、しかも5年ぶりくらいだ。なので「どうも飲みかけのペットボトルの持込みがOKという様に説明が読めたのだけど本当にOKなの?」と行列の前に並んでいた、旅行中のオランダ人の女の子に質問されたときに、「わからないから聞いてみるよ」というマヌケな返事しかすることが出来なか
Ever losing memories.
彼女と別れてから、3年近く経った。
「別れても、友達だからね。多分、映画とか、音楽の趣味があなた以上に合う人なんていないから、これからも付き合ってね、友達として。」と、陳腐な台詞を言い放ったのは彼女の方だった。
僕は正直なところ、会えば、抱きしめたくなるだろうし、キスだってしたくなるだろうし、それに言うまでもなく、それ以上のことを望んでしまうだろうし、無理だよ、無理!って、思ってた。
国語の
Last two letters..
教室を後にして、色紙の寄せ書きと、皆からの手紙が入った大きいA3サイズのマチ付きの封筒を手にして、僕はバスに乗った。
寄せ書きは、真ん中に円い余白を残して、そこに僕の名前と、クラスの3Bという文字がカリグラフィーというには稚拙すぎる、しかし気持の入った装飾文字で描かれていた。
バスに揺られながら、汚い字の男子のあたりから眺めだしてゆっくりと、女子の書いた文字の方へと色紙を回転させながら読む。男
何のまえぶれもなく。
季節が換わったので、今日は夏用のスーツを今シーズン初めて着た。お気に入りの服を身にまとう女子が、少し自分がきれいになったと思うように、今日の僕はいつもよりも背筋が伸びて、清潔な印象を与えているのだろう、と勝手に思っている。
仕事が終わり、僕は井の頭線を降りて吉祥寺で中央線に乗り換える前にちょっとだけアトレに立ち寄った。アトレはJR東日本の子会社が経営しているショッピングモールだ。
お菓子のスタ
Run for your Life.
《小説》
『リキは言った。
「境界線がさ。」
「境界線って?」
サキは聞き返した。
「子供の頃に、」
リキはいつもそうであるように、サキの問いかけには答えずに、何かをその意識の焦点で捉えたかのように続けた。
「(子供の頃に、)父さんが買ってきてくれた、ヨーロッパの木版画の画集のあるページに描かれていた絵を見てさ。それが何年ものあいだ、頭を離れなかったんだよ。」
「どんな絵だったの?
Un homme et une femme 〜オトコとオンナ〜
《小説》
マキは言った。
「もし犬を飼うとしたらどんな名前にする?」
「うーん、『ネコ』かな?」
「なにそれ?」
「そして子猫も一匹飼って『イヌ』にする。」
「冗談としても面白く無いわよ。」
「そして、僕に子供が生まれたら、その子が言葉を覚える過程で、『犬がネコで猫がイヌで。。。あれ?』って混乱するんだろうなぁ。」
「。。。アタシが小さい頃から気づいている秘密があるんだけど。」
SABI TETSU ONANDO
《小説》
キキは言った。
"Why don't you smile a little bit more happily when you see me?"
言った、と書いたけど、正確には「多分、そんなことを言った」というところだ。僕はボーっとしていたし、キキはリスがドングリをカリカリと齧る(実際のところリスがドングリを食べるのかどうか僕は知らないけれど)ように、スタタタタ、とスタッカートが効
288枚目のアルバム
《小説》
アキは言った。
「アタシと一緒にいる時は、ジミヘンとフランク・ザッパと、キング・クリムゾンは聴いちゃダメ。」
アキが、嫌いなくせにどうしてそういう音楽を知っていたのか?いや、最初はあの子はこういう音楽のことは全然知らなかった。僕が初めて彼女の部屋に行った時、彼女の部屋には品の良い音楽のCDが15枚くらいあっただけだった。品の良い音楽、というのも極めて主観的な僕の言い分だろうから、君