『千鳥 他四編』鈴木三重吉
1935年初版のこの古書は、ほんのり焼けた紙面へ、インクのたっぷりのった、ぽてぽてした明朝体が、旧仮名づかいで刷られています。ときおり活字が切れたりかすれたり、行からずれたりしています。古りた紙を繰るざらりとした感触は指さきへ懐古の情を伝えます。「千鳥」のような作品を読むのにふさわしい環境です。明治や大正の日本の風景を味わうには、こんな古くてきれいな本で読むに如くはありません。
『千鳥 他四編』には、鈴木三重吉の初期作品「千鳥」「山彦」「おみつさん」「烏物語」「黒髪」の