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北海道の衰退と鉄道の共同幻想

YOUTUBEを見ていたら、こんな動画がありました↓2022年の釧路駅周辺の様子。衰退してて、ビックリ。


北海道の衰退


さらに他の動画いろいろ見てみると、札幌以外の北海道ってずいぶん衰退しちゃったんだなぁ、とビックリ。


昔々、ホンダのクラブマンというバイクで毎年北海道に行ってました。19歳の夏から4〜5回だったかな。釧路にも行きました。すごい霧だった。関東地方だと、大きな街の中で霧にあうことなんかないので、ビックリするっていうか、楽しかったです。


考えてみると、当時、1985年前後、北海道はまだまだ元気で、人も車ももっといて、鉄道も駅もたくさんあったんだなぁ。「最悪困ったら、町からちょっと行ったとこの駅舎に泊まろう」と思ってたし。それだけ北海道のどこにでも駅舎があったわけですね。実際、泊まったことが何回もあるし。


↓この動画見るとね、街の元気の違いがわかります。


JR北海道の苦境


それと、北海道の衰退を証明するように、北海道の鉄道がどんどんどんどん、すごい勢いでなくなってんだね。ご存じでした?


昔行った記憶がある広尾線の幸福駅とか、標津線の中標津駅もなくなっちゃって、っつーか広尾線自体、標津線自体がすっかりなくなっててビックリ。


これは国鉄を分割してJR北海道ができた時からある程度予測されていたらしいけど、特に2016年、JR北海道が「当社単独では維持することが困難な線区について」を発表して世間にインパクトを与えたそうな↓
https://www.jrhokkaido.co.jp/pdf/161215-5.pdf


「旭川、帯広、苫小牧よりあっちはもう無理だよ。函館から小樽も新幹線通ったらなくすよ」


っていう道筋を発表したのね。


いやー、ず〜いぶん無くすんだなぁ。現在の半分以下。最盛期から考えると、1/4くらい?


さて、それはなぜか?


ということを「鐵坊主」という方が、鉄道を通じて色々と考察されてます↓


なるほどなぁ。


とにもかくにも北海道の主要産業が衰退してしまった、と。炭鉱はまったくなくなり、漁業も林業も大不振で、他の産業への転換も図れず、企業も人もどんどん去ってしまった、と。それが根本的な原因である、と。


「車社会になって鉄道が利用されなくなった」ということもあるが、それ以上に沿線に企業も人もいなくなってしまって、需要がものすごい落ち込みらしい。


酪農業と観光業はわりとうまく行ってるらしいけど、他産業の衰退を取り返せるほどではなく。


結局、産業があって仕事がないと、過疎を止めるのは難しいんですね。


ちょっとやそっとなんかしたって、無理なんですね。ロシアや樺太との貿易や往来を再開するとか、石炭を再び国が買い上げるとか、なんか、そーゆー革命的な何かが必要みたいです。


しかし、それ、つまり過疎というか、人口減少による苦境というかは北海道だけの話ではなくて、JR東日本でもJR四国でも、日本中で起こってることで、その観点から未来をみなければいけないんだ、というのが鐵坊主さんの現状認識です。動画の主張をまとめて本も出版されてます。力作です。


そもそも、あんなに鉄道が必要だったの?


ところで、鐵坊主さんの動画見たり本を読んだりして思うのは、


「そもそも鉄道ってあんなに必要だったんだろうか?」


っていう疑問です。


鐵坊主さんは鉄道好きだそうで、その観点から哀惜をこめて語っているのですが、わたしは別に鉄道好きではないので、哀惜はありません。


JR北海道の苦境は、1987年(昭和62年)に行われた国鉄分割民営化の結果です。


JRの前身の国鉄ってのは、色々な問題があって、サービスもひどくて、借金もあって、どーしようもなくなって、すごく話題になって、すったもんだして、政治が主導して分割民営化されました。


その分割民営化された時点で累積赤字が37兆円もあったそうです。ビックリ。


そのうち25.5兆円を国鉄清算事業団が継承して細々と返済してたんですが、国鉄清算事業団はあんまり何もできずに1998年に解散。そこから国の一般会計の処理になり、郵便貯金の金利収入・たばこ税の増額・国債などの財源を使って2020年度末には15兆9300億円に減ったそうです。


30年以上経って、まだ15兆9300億円(゚Д゚)


言ってみれば、国鉄をJRにするために国民は25.5兆円も払わなきゃいけなくて、それが30年以上経った現在でも15兆円あまり残ってて、国民はまだまだ払ってるわけです。国庫に入るべきお金が、そちらに流れてるっていうか。


つまりのところ、国鉄自体に無理があったんじゃないかねー。


「車社会が到来して鉄道が必要なくなった」っつっても、国鉄が終わる時点で37兆円も借金があったわけだから、国鉄の失敗でしょ?国鉄自身というより、国鉄とそれを利用した政治の失敗。


国策として鉄路を延ばしてきたけど、経済合理性の観点ではそもそも無理があったわけですね。


となると、鉄道がどんどんなくなるのは仕方ないような気がする。つか、早くどんどんなくさなきゃダメっしょ?


留萌本線の大赤字


先日、2023年3月一杯で、留萌本線の一部、留萌駅〜石狩沼田駅間が廃止されました。3年後には、深川〜石狩沼田駅間も廃止になり、留萌本線自体がなくなります。


2014年以降、この区間では、100円の利益を稼ぐのに、おおよそ1900円かかっていたそうです。毎年の赤字が6億円〜7億円。


旅客営業キロ1kmあたりの1日平均旅客輸送人員=輸送密度は、コロナ前の2019年で137人/日。ちなみに、関東のローカル線である横浜線(東神奈川~八王子)の輸送密度は22万人余/日。1980年に制定された国鉄再建法では、輸送密度4000人/日が路線廃止・バス転換の基準だったらしい。


そんな、1980年の基準でも廃止されるべき鉄道路線が、なんで今も残ってんの?


読売新聞の「JR考 第10部 北海道・四国」によれば、そもそもJRになって以降、JR北海道が鉄道事業だけで利益を出したことは一度もなく、JRになった時の国からの持参金(経営安定基金)を運用してやっと黒字にしていたんだそうです。っていうか、それが国鉄分割時の想定だったそうです。


鉄道は赤字で、将来的にも赤字だろうけど、持参金の運用で黒字にしてね、がんばってね、っていうことね。


ただ、その想定が、なにせバブルの頃の想定なので、運用益が5%だか7%を見込んでいて、近年じゃとっても無理な数値で、そのためJR北海道とJR四国には国から財政支援が行われています。


先述のように、国鉄の精算のための25兆円を、言わば国民がいまだに払い続けているわけですが、その上JR北海道とJR四国の財政支援分まで国民が払ってるわけです。


話にならないね。


30兆円以上かけてJRを作り、さらに国民負担を現在まで延々と行って、100円の利益を稼ぐのに1900円も経費がかかるような、日本各地のたくさんの路線を、なんで維持しなきゃいけないの?


どーも、話がおかしいな(笑)。


すみやかにそんな路線はなくすべきでしょ?鉄道に経済合理性以外のなんか別の利点があるんだろうか?


「ロシアの南下に備えて国防上必要だ」

「人々の移動のために鉄道が必要だ」

とかなら国策としてしょーがないけど、どーもそーゆーことでもないらしいし、なんでいまだに存廃議論してるのか不思議でしょーがなくなりました。そんなこと、JRになった時、1987年にやっとけばよかったのに。


なーんか話がおかしい(笑)


JR只見線という共同幻想


昨年、2022年、JR只見線が新潟・福島豪雨による長期路線寸断の期間を経て全線復旧しました。12年ぶりの全線復旧です。

https://find47.jp/ja/i/pYNjw


復旧にあたっては、当初JR東日本は巨額の費用が必要となることから難色を示しました。そのため、福島県・会津17市町村が復旧費用54億円を負担しました。また、年間運営費も全2.8億円のうち県・市町村2.1億円を負担し、老朽化・災害復旧の際は県・市町村が全額負担することになりました。


只見線の輸送密度は、災害前の2010年で49人/日でした。先述した留萌本線は、2019年で137人/日。


つまり、100円の利益を稼ぐのに、おおよそ1900円かかっていて、赤字が毎年6億円〜7億円出ていて、やっと廃止になる留萌本線の半分以下の輸送密度です。ビックリ仰天。


これを指して、福島県の『平成31年度包括外部監査報告書』は以下のように看破しました。


「只見線が1本に繋がってこそ意味があり機能を発揮すると考えるのは共同幻想にすぎない」


つまり、福島県や会津17市町村負担54億円もかけて、さらに年間2.1億円の運営費を毎年負担するんだったら、別のもっと素晴らしいことができるだろう、と。只見線がつながって良いことがあるんなら、豪雨災害で不通になる前に、それは起こっていたはずだろ、と。


なるほど。ほんとですね。その通りだと思います。


しかし、これ、只見線だけの話ではなく、日本各地にあるローカルな「鉄道」と置き換えてもあてはまるのかもしれない。


鉄道の存廃が、私のような鉄道に興味のない部外者には、なんだかよくわかんない話になってるのは、関係者の共同幻想に基づいてるからかもしれません。論理とか経済合理性とかよりも、共同幻想が優先されているんでしょう。


北海道がんばれ、JR北海道がんばれ


そう考えると、JR北海道は赤字と同時に共同幻想との闘いもあったんでしょうね。


2016年にJR北海道が「当社単独では維持することが困難な線区について」を発表して以来、JR北海道の苦境への理解が深まったようですが、それ以前は「路線を残せ、駅を残せ」なんつって、ねじ込んでくる輸送密度4000人/日以下の自治体もたくさんあったみたいですし。


JR北海道は設立当初から苦境で、いつまでも全然儲からなくて、労使は協調できず、色んなとこに歪みが出て、重大事故が起こり、データの改ざんもあり等々で、社長経験者が2人も自殺しているそうです(読売新聞の「JR考 第10部 北海道・四国」)。痛ましい。


国鉄の民営化って正しかったんですかね?


鐵坊主さんによれば、現在においても、東海道新幹線の莫大な利益があれば、JR北海道の赤字もJR四国の赤字も、つまりJR各社の赤字を合わせても、十分に、余裕を持って補填できるんだそうです。


したがって、国鉄を分割しなければ、国鉄全体として帳尻を合わせられる可能性はありました。


ま、そこはね、色々難しいとこで、簡単に結論が出せないとこではありますが、いま私が強く思うことは、北海道がんばれ、JR北海道がんばれ、ということです。


北海道は新しい産業もしくは成長分野を何とか見つけて出して、あるいは創り出して、活気を取り戻してほしい。それに伴ってJR北海道も元気になってほしい。


ということで、今年から年に一回は北海道に行こうと決めました。北海道を応援しないと。