見出し画像

天国?地獄?トレイルランニング (30+6)

さぁさぁ、語るよ! 先に宣言しておくよ。
7月25日(日曜)、第9回 霧島・えびの高原エクストリームトレイルに参戦してきた。正式開催のレース、いつぶりだろう……。2020年2月の北九州マラソン以来か。コロナによって、ランとの向き合い方も随分変わってしまった。

捻って、拗れて、雨ときどき曇り

標高 1,360mを超える山岳地帯を舞台に開催されるレースゆえ、天気はコロコロかわる。出場した前回(どしゃ降りを通り越して嵐)、前々回(どしゃ降り)も悪天候に泣かされた。今回は……雨ときどき曇りときどき雨ときどき晴れときどき曇り……判断不能。暑いよりはましでしょう、ということで。

捻挫を見事なまでに拗らせ、正直なところ「出場できないかも……」と諦めかけていた。「ここでダメって言われたらやめよう」ゴットハンドM先生のところへ。「足もだけど全身ガチガチやね……」患部をかばったり、姿勢が悪かったり、全身不調だらけ。根気強く施術していただき、終わった頃には、腫れと鈍い痛み(あと全身の歪み)が治まっていた。

アドレナリンが噴き出す瞬間

ロング(60km)のスタートはAM5:00。ヘッデンの瞬く光とたなびくレースフラッグ。BGMとDJの声を聴くと、アドレナリンが噴きだしてくるのが分かる。走るより、この瞬間が好きといってもいいくらい。—— この空間と時間を体感してみたい……霧エビはトレイルを始めるきっかけになったレースだもの。

画像2

ロング、スタート! たくさんの友人たちを見送り、私たちも1時間後のスタートに向け、装備などを最終チェック。陽が昇り、雨も小降りになった。さぁ、いざ出陣だ。

画像3

10,9,,,,,,,,,,3,2,1,,,,Olympic !!!! (2021var.)

さぁ、33kmの地獄へ、スタート! ボラの友人らから「行ってらっしゃーい」とエールをもらいつつ、一緒にこの日を目指したKちゃん(初レース)、Tちゃん(最長レース)とともにスタート!

スタミナ温存と足の悪化を防ぐことを一番に考え「飛ばさない」がテーマ。なにせぶっつけ本番なので、自分でもどんな具合なのか分からない。慎重に一歩一歩……暑くない分、ずいぶん走りやすい。長い林道の第1エイド(12.5km地点)は予定していた時間より25分ほど早く到着。まだまだ林道は続くが、上り切れば下りが待っている。当然なことだけど、トレイル中はそれだけが励みなのだ。

15kmを超えたあたりから、一気に7km先の第2エイドまで林道を下る。不整地特有の横エッジはずーんと靭帯が傷むが、上下の動きは大丈夫。体もほぐれてきたことだし、徐々にスピードを上げてみた。ああ、久々に味わう疾走感よ! たった3カ月であっにせよ、走れなかった悔しさや不安、順調に仕上げていく仲間たちへの焦り……負の感情が常に胸の奥底にあった。故障を経験した人の誰しもが通る道だし、今回の怪我はあくまで軽度。分かっているけれど、なんであの時、油断したかな……と柄にもなく後悔した。

第2エイドまであと少し。先に見える後ろ姿はKちゃん。やっと追いついた。二人並んで歩いていると(コラ※なぜかアブに刺される)、Tちゃんも合流。仲良し3人組がそろった。23km地点。もちろん疲れている。そこに、キンキンに冷えた某エナジードリンクを発見。カシュ、ゴクゴクゴク……う〜〜〜っっ、染みる〜。天国や〜。が、これがまさかの地獄の入口だったとは……。

画像8

天国から地獄へ

一番の絶景ポイント、栗野岳枕木階段(左561段、右555段)。3人でゼーゼーいいながら階段をあがり、記念写真をパチリ。その直後、うううううううっっっっっっ! こみあがるケミカル味よ。

画像4

猛烈に気持ち悪い。てか、吐きそう。たくさんの補給ジェル、涼しいとはいえ体温上昇、疲労もピーク……助けてくれるはずのエナジーが逆に作用してしまった模様(同様の人々も多かったみたい。ご注意を)。「ごめん、先に行って……」まさか、お別れがこんなに早く来るなんて。日陰へとヨロヨロと移動し休むも収まる気配なく、ウプッ。エナジーは土へと還ってしまった。天国から地獄。辛くて辛くて、涙が出てきた。

離脱するなら今しかない……DNF(棄権)もよぎったが、ここで終わっては一生後悔する。みんなに顔向けできない。おふざけ半分で作った必勝祈願のブレスレット。キツいのはみんな一緒。進むしかない。

画像5

きつくて、つらくて、糞がぁ!!!

最大難所、栗野岳の急斜面をひたすら上る。抜いた人たちに抜きかえされ、体力どころか気力も萎えてくる。休み休み、一歩一歩。やっとピークに到達。ああ、やっと下れる。ゴール5km手前あたりで、やっと胃の調子が戻ってきた。水しか受け付けないけれど、まだ足と体力は残っている。真っ黒に汚れた手のひらで頬と腿をパンパンと叩き、全部出し切るぞ、と力を込める。消えかけた炎がボンッと再熱したのがわかった。

そこからは、ドロドロの水たまりを避けずに正面突破して帰ってきた。男性トレイルランナーから「男前やね……」と声援、いや、どん引きされたが気にするものか。トレイルを語れるほどの経験は持ち合わせていないのは承知の上だが、極限において覚醒していく感覚こそが醍醐味であり、私が思うところの魅力なのかな、なんて。もう、心底きつくて、つらくて、糞がぁ!!! 言葉は悪すぎるが、何度も思ったし、実際に叫んだ。

うっすらときこえてくるDJの声。ゴールはもうすぐ。ああ、1秒でも早くゴールしたい。早く終わらせたい。芝生の先のゴールゲートを目指して、持っている力の全てをふりしぼった。ゴール。やっと、終わった。

画像6

5時間33分03秒(総合24位/59位・部門12位/30位)

約束したわけでもないのに、部門10位、11位、12位。二人に追いつくことはできなかったけれど、心配かけない程度にゴールできた。タラレバはいくらでも思い浮かぶけれど、最後まで走りきれた、笑顔でゴールできた、みんなに会えた……もう、それで十分。サイコーじゃないか。

これまでと、これから

冒頭にも書いたが、本当に久しぶりのレース。揺れに揺れまくったオリンピックと同じくして開催されたわけだが、そこにはさまざまな葛藤や決断があったと思う。自然相手に行うスポーツ、国立公園を利用するにあたっての厳しい条件、自治体や各団体・企業との交渉、そしてコロナ感染予防対策……主催のUFの皆さんのご尽力たるや、高い山の連続であったと思う。また、それを支えるたくさんのボランティアの方々には、ただただ感謝しかない。皆一様にマスク姿ゆえ顔が分からない、久々すぎて名前が出てこないなど、コロナ禍開催あるあるだらけだったにせよ、実際に会える歓びは何ものにもかえがたい。これまでと、これから。ニューノーマルという新たな道ができていくんだと思う。プロセスや仕組みは変わってしまうのかもしれないが、野越え山越え、タフにこのご時世を駆け抜けていかねば。「トレイルランニングが好き」という気持ちを持った者同士で手を携え、助け合い、笑い合い、まだ見ぬ世界へと走っていこうじゃないか。さて、次はどこへ行こうかな。どこを走ろうかな。大人になりすぎた今でもワクワクできるって、恵まれた人生だなぁと思う。

画像7

最後に、Iさん、Kちゃん、Tちゃん、KPくん、ありがとう!
おじちゃんとおばちゃんの青春、サイコーしかない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?