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退職後、体験農園で野菜づくりをスタート。畑は人との交流が生まれる場所

コトモファーム会員
金子さん 鎌倉市在住 70代

少年時代、畑で過ごした日々が原体験に

子供のころ、畑は自分にとって身近な存在でした。
実家の前でお百姓さんが畑をやっていて、70坪ぐらいで全部1人じゃ管理できないから、私の母親が手伝っていました。末っ子だったので母についていって、畑で犬と一緒に遊んだりしていました。
 
家は鎌倉の丘陵地帯で、湘南砂丘に関東ロームが堆積していたのですが、畑から時々土器を見つけて、大事に家に持って帰ったりしていたのを覚えています。幼いころから土器、化石、土建屋さんの砂場にきらきら光る黄鉄鉱などを見つけて集めるのが好きだったんです。
 
中学高校では地質部に入部し、土壌鉱物学のある大学の農学部に入学しました。農学の素養生物学は全くの素人でしたが、土壌鉱物、粘土鉱物生成、農学的役割を研究する教室に入り、修士まで研究業務に携わりました。


70歳まで夢中で仕事を続けてきた

卒業後はゼネコンの研究所に採用され、農業土木以外の農学部修士を出た社員第一号となりました。土木・建築は、農学部入学時の生物学同様に全くの素人でしたが、わからないことは聞けばよいと割り切って、夢中で仕事を続けてきました。
 
63歳まで会社にお世話になって退職しました。その後もコンクリート部材の開発で携わった会社に非常勤顧問として今年の6月までお世話になり、同時に長崎大学の工学研究科で昨年度まで非常勤講師をさせていただいて、社会との関わりを持つことが出来ました。現役時代に立ち上げた芝草の研究開発会社も無給で通ったり、いろいろな専門の方が集まった合同会社に参加したり、70歳くらいまでなんだかんだと東京に通勤していました。
 
お世話になった会社には「地図に残る仕事」という言葉があり、自分の仕事を地図に残せたという達成感を持って退職できたのは幸せだったかもしれません。


コトモファームで野菜栽培をスタート。21坪の畑で野菜づくりを楽しむ

母親が高齢になったため、30坪くらいの畑で続けていた野菜栽培を仕事が休みの日に手伝うようになりました。
そこで収穫した野菜をご近所に配ったり、会社で関わった土壌改良剤の試験栽培をしてみたり、落ち葉を集めて有機資材として土に投入したり、様々な方法で野菜栽培を楽しんでいました。
 
地質学や土壌学はその生い立ちを考える学問だから、広く地球の現象を想定して、今の在り方を解明する証拠を発見するととても感動します。発見にはサンプルの採取とそれを分析する高価な分析・解析装置が必要になりますが、退社したらそのような装置はありません。
 
土の色、石の色、植物の種類や野菜の葉っぱの色すべてが、いろいろな事象を発見する道具となります。野菜栽培の動機は、身近な観察材料を求めた結果だったように思います。
 
その畑の貸主の方が亡くなって、耕作を続けることが難しくなったので、国有地だった畑を国に返却することになりました。県の窓口や鎌倉市に問い合わせ、国有農地の競売の時は参加資格が欲しいと相談しましたが、農業経験がないので競売参加資格はありませんと2年前に断られてしまいました。
 
悶々としていた頃に、藤沢で農スクールという活動をやっている人がいると長崎大学の非常勤講師の方に教えてもらいました。それで代表の小島さんと面談して、将来的な農業資格に繋がればと思い、農スクールのプログラム参加申込とコトモファームの区画契約をさせてもらいました。
 
自宅から車で片道1時間ですが、1週間に一度畑に来て野菜づくりを楽しんでいます。隣の区画が空いたことも有って、今は7坪の畑を3区画契約しました。75歳の爺さんにはかなり作業がしんどくなったけど、持病の脊椎管狭窄症も悪化しないし、妻との買い物はすぐ腰が痛くなるのに畑仕事は不思議と大丈夫なので、なんとか継続しています。


収穫した野菜が近所の方に喜ばれ、交流のきっかけに

コトモファームで収穫した野菜は家族や近所の方々に差し上げるようにしています。美味しかったと言われるととても嬉しいです。野菜は、自分以外の人に評価される身近な材料だと発見しました。
 
トマトやナス、ピーマンなどの果菜類は花が咲き、おしべとめしべが受精して実がつき、それが大きくなって人に食べられるような姿になり、口にしておいしいと言われるまでに育てないといけない。野菜の出来具合は家族や差し上げた方々の評価に左右されます。おいしいと他人に評価されてはじめて成果になるのだと思います。

21坪の面積で鍬とスコップだけを使用した農業では、販売して値段がつくような野菜は作れませんが、ご近所との物々交換となるような成果は得られます。畑で採れた野菜を全部は食べきれないから、大根やカボチャなんかをご近所に配ったら喜んでもらえるし、今度はそのお宅からこれもらいましたって、いろんな物をいただけるようになりました。
 
物々交換の農業もいいなと思いますね。お父さんの作った野菜おいしいと言われて、交流のきっかけとなるのも、交流範囲が狭くなってしまった私たちの年齢層にとっては必要なことだと思っています。

(2022年10月17日)

体験農園コトモファームのHPはこちらからご覧になれます。
https://www.eto-na-en.com/cotomo-farm/
お問合せ先 TEL:070-6556-5300
      メール:cotomofarm@eto-na-en.com


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