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「すぎる」のニュアンス、いまむかし


今度の日曜日は「母の日」ですね。去年は夫からは花が届き、子どもたちからマグカップとカードをもらって、うれしすぎる母の日でした。そうやって考えてくれるだけでもありがたいものですね。

さて、今回はCoto校内の先生方から「〜すぎる」で例文を募集しました。例文はテキストや文法書を離れて、日本人の語感で、私たちが普段使っている日本語で自由に書いてもらっています。どんな場面でどう使うか、またはその表現が持つニュアンスなどを自分のフィルターを通して考察してもらえると幸いです。

1. 「すぎる」を使った例文

まずはご自身で5〜10個、例文をあげてみてください。なお、コトハジメのブログ記事では、Coto校内の先生方が募集した例文がご覧になれます。

2. 「すぎる」のニュアンス、いまむかし

本来、「〜すぎる」は度がちょうどいいレベルを超えてしまって、”too much”と感じる場合に使われます。したがって、ネガティブなニュアンスがあります。

なので、「元気」「まじめ」「きれい」「自由」「良い人」など、ポジティブな意味のことばを使ったとしても 、なんとなく(捉え方によって)ネガティブなニュアンスに聞こえてしまうことがあります。例えば、「良い人すぎ=お人好し」「自由すぎ=非常識・KY・天然」「まじめすぎ=頭が固い・融通が効かない」のようなイメージです。

ただ、私たちネイティブ・スピーカーが使う最近の「すぎる」の用法には、ネガティブなニュアンスが全くないものもあります。たとえば、「うれしすぎる=とてもうれしい」「美味しすぎる=とても美味しい」「可愛すぎる=とても可愛い」など。今は、若者の間で使われ始めたマイナスの意味を持たない場合の「すぎる」が広く定着しつつあります。

ここには「とても」や「非常に」で表しきれないくらいの思いが含まれているような気もします。最近ではその進化形なのか、「美味しいすぎる」「可愛いすぎる」なんて言葉をSNSなどで目にします…。恐ろしや〜

ちなみに、「美人すぎる市議」「良い人すぎ」「天使すぎるアイドル」など「名詞+すぎる」も本来なかった新しい使われ方ですね。

3. こんなとき、あなたならどう答える?

Q:「日本語を勉強しすぎて、(日本語が)ペラペラになりました」という学生が作った文に違和感を感じたのですが、すっきりと説明できませんでした。みなさんだったらどう説明しますか? あるいは、許容でしょうか?

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A:おそらくこの学習者、「すぎる」のニュアンスの理解不足で「たくさん勉強すること=勉強しすぎ」と捉え、このような文を作ったのでしょう。

良い意味での「~すぎる」がちまたに溢れているとはいえ、やっぱり「〜すぎる」は “too much” のイメージでネガディブな意味で使われるのが一般的。この場合、「勉強しすぎて、疲れてました」がしっくりきますね。または、「たくさん勉強したおかげで、日本語がペラペラになりました」がいいでしょう。

皆さんの学習者からも誤文が出てくることがあるかもしれません。でも、誤文が出てきた時がチャンス!ぜひ、こういうときは使えないよ〜と例文をあげて説明すると良いでしょう。

まずは初級の学習者には本来の使い方を紹介しましょう。教えすぎは禁物です。混乱や誤用を避けるために、導入や練習の際は2つの意味が混ざらないような例文選びをするようにしましょう。

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