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「可能動詞」の意味・機能について今一度考えてみた

先日、ある学生から「可能動詞って、いつ使うんですか?便利なんですか??」という、ある意味衝撃的な質問を受けました。(とはいえ、こういう質問する人、私の講師人生では初めてではなかったのですが…)

日本語教師としては「可能動詞」って最強じゃない?ぐらいに思っていたのですが、その学習者はいまいちピンと来ていなかったようです。

おそらくは導入から練習までなんとなく「能力」機能推しで練習させてしまっていたからでしょう。あれができる、これができないなど大人が自分の能力を誇示するような場面っていつあるの?と疑問だったのかもしれませんね。

「能力」以外の可能動詞にフォーカス!

というわけで、今回は「能力」以外の可能動詞にフォーカスしてみます。ということで、まずはCoto講師のみなさんが出してくれた例文を二つのグループに分けてみました。(*例文はコトハジメのブログをご覧ください!)

①状況・機能・サービス系
※英語で言うところのpossible, available系

②困難(平易)を表すもの
※個人的所感を述べるときに使用 / 英語で言うところのdifficult/easy系

そして、そして、、、例文を募集していたら、誤用例もたくさんあがってきました。以下の誤用例、皆さんはどう思いますか。わたしは可能動詞を使うメンタリティに言語差があるような気がしているのですが・・・。

これって母語干渉!?よくある誤用例

<例1>「『昨日はよく寝られましたか』じゃなくて『昨日はよく寝ましたか』ではダメですか?」

学習者の感覚では「昨日」という過去の時点で、「よく寝た」という事実があるのだから、「可能だった」ではなく「事実があった」でいいのでは?ということなのでしょう。たしかに、否定の「寝られませんでした」なら、「寝たかったけど(暑くて、うるさくて etc…)寝ることが可能ではなかった」ということになりますが、「寝られました」は「寝ました」と一緒じゃないか!と・・・なるほど、わからなくもないです。

これって逆も然り。日本人はよく「私、英語できないんです、英語しゃべれないんです」と可能動詞を使うので、英語で質問する際にも”Can you speak Japanese?”という文を作りがち。でも、”Do you speak Japanese?”のほうが自然な英語です。


<誤用例2>「いつも電話に出るわけじゃないから、メールでお願いします」「仕事が重なって、しっかり準備しませんでした」

「出られる」「準備できませんでした」が適当ですが、これもスムーズに使えない方が多いです。可能動詞を使わないと「自分の意志でした」ということになるよ、と言ってもなかなか分かってもらえません。(そりゃそうか)


<誤用例3>「自分で勉強しないから、何か宿題をください」

日本人としては「勉強できないから」が自然ですね。「勉強しないから」とあっけらかんと断言されたら、おいおい…となっちゃいますね。本当はすばらしい提案なのに。


可能動詞=無意志動詞

母語干渉が誤用の原因であるにせよ、これらの場面で他言語話者はなぜ可能動詞を使わないのでしょうか。逆に、どうして日本人は可能動詞を使いたがるのでしょうか。そのメンタリティ、気になります〜。

英語圏では事実の叙述のみで済ませるところを、日本語では「自分の能力が足りなくてできない」のような言い方をします。これってもしかすると「丁寧さ(politeness)」の表出なのでは? いわゆる日本人の好きなhumbleな態度(謙遜)の表れかも!?なんて思ったり。いかがでしょうか。

でも、ちょっと待って!

日本語の可能動詞って無意志動詞ですよね。可能動詞になることで、元の動詞の意志的な意味はなくなって「状態」を表すようになります。自分の能力うんぬんじゃないんです。その状態を叙述するために「可能動詞」を使っているのです。いやいや、、、頭ではわかっても、これはなかなか伝わらないでしょうね。これが使いこなせたら、かなりの上級者ですね。

若干の消化不良感ありつつ、本日の脳トレはここまで。それでは、また✋

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