見出し画像

「お気に入り」vs「好き」の使い分け

本日のお題は「お気に入り」と「好き」です。この2つの言葉、同じようでちょっとニュアンスが異なります。

早速、例文をあげてみましょう。想定する学習者のレベルはここではひとまず置いておきます。ただただシンプルに、日本語ネイティブとして産出しうる文を挙げていきます。

・このネックレス、好き
・このネックレス、最近のお気に入りなんだ。

「好き」は心がひきつけられるような気持ちを表すときに使われます。なので、主観的で直感的な印象があります。

例えば、こんな例はいかがでしょう。

「好きです。付き合ってください!」とは言うけれど、「気に入っています。付き合ってください!」とは決して言いません。また、お気に入りの部下に対して付き合ってほしいとは言いませんよね。好きとは違う感情です。まあ後に恋愛に発展すれば、可能性もありますが・・・。「気に入っています。付き合ってください!」なんて言った日には、「あなたは私のお眼鏡にかなった」というような上から目線の表現に取られてしまって、感じが悪いです。笑

次に、「お気に入り(N)」「気に入る(V)」も例を挙げて見てみましょう。

・昨日新しいくつを買いました。スリムなデザインと色がとても気に入っています
気に入らないことがあると、すぐにすねるって子どもか!
・去年誕生日にもらったネックレスが一番のお気に入りで、よくつけている。
・おばあちゃんにもらったぬいぐるみが気に入ったみたいで、いつも抱いて寝ている。
・このサイト、よく見るから「お気に入り」に入れておこう。
・あの子は先生のお気に入りだ。

「お気に入り」には自分の好みやニーズに合うもの、心に適うものや人に対して使われます。なので、時に上から目線に感じることもあるのでしょうね。


考察メモ:「お気に入り」vs「好き」


①「気に入る」は「好きになる」という意味

「入る」という移動/変化動詞が入っているところが注目ポイント。つまり、「気に入った」→「(いま)好きになった」ということです。そして、「気に入っている」はその結果の継続と言えるでしょう。

②「好き」はgeneral、「気に入っている」はspecific

・野菜が気に入っている。△
・スポーツが気に入っている。△
・ねこが気に入っている。△

上の文はちょっとおかしいですね。「気に入っている」には具現性が必要です。「Tシャツが気に入っています」と言われると、「え、どのTシャツ、どんなTシャツ?」と聞きたくなります。ですから、下の文のように何がいいのか具体的に表現すると「気に入っている」でもしっくりきます。

・(このブュッフェの)野菜が気に入っている。
・(余暇の過ごし方なら今は)スポーツが気に入っている。
・(動物動画を見るなら犬より)ネコが気に入っている。

「気に入っている」は一般名詞の上位カテゴリーには使いにくいということが分かりましたね。

③「お気に入り」は”favorite”と言ってしまっても問題なし!
「好き」「気に入っている」をどちらも”Like”と言ってしまうのは危険ですが、「お気に入り」は”favorite”と言ってしまっても問題はないでしょう。ただ、英語の”favorite”には「上から目線」というニュアンスはありませんが。


コトハジメの『3ヶ月で自信がつく!日本語教え方実践コース』『6ヶ月で仕上げよう!日本語教え方実践コース』は、実践力・現場力をアップさせたい方にぴったりのオンライン講座です。日本語レッスンに必要な基礎知識はもちろん、レッスンの前にどんな準備をすればいいのかを例文・教案作成や模擬授業を通して具体的に学ぶことができます。本講座がチラッと体験できる無料ワークショップも開催しております。こちらもあわせてどうぞ!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?