中級文法 「からして」vs「からすると」
「からして」「からすると」は、話者の視点からの推量的な使い方という点で似ているのかな。いかがでしょうか。今回も例文をあげてみていきましょう。
1. 〜からして
① 例示
<例1>うちの子は片付けができなくて、ランドセルからして荷物がぐちゃぐちゃ…
ランドセルの中がぐちゃぐちゃなので、部屋や机の引き出しなんかはもちろん散らかっている。
<例2>このレストラン、前菜からしておいしいよね。
いいレストランに行って、前菜がおいしいのだから当然メインもデザートもおいしいだろうと期待している。
<例3>あの子は本当にしっかりしている。挨拶からして礼儀正しい。
挨拶みたいな基本的なことがしっかりできる子は、そのほかのこともしっかりできるだろう。
「ある部分が~だから、当然それ以外の部分(もっと大事な部分)も同じだと思う」ということです。この「ある部分」には「基本的・最低限なもの/こと」がきます。<例1>は全部ぐちゃぐちゃ、<例2>は全部おいしそうということが言いたいのです。この「ある部分」を一つを例に挙げて、全体を強調していると言えるでしょう。
② 判断
<例1>あの店、入り口の雰囲気からして入りづらい。
(入口の雰囲気 ⇒ 私たちには合わない店)入口の雰囲気があなたたちはお断りですよという雰囲気を醸し出していて、その時点で入れない。
<例2>このケーキ、色からしてまずそうじゃない。
(色 ⇒ まずい)外国でよく見かけるカラフルなケーキ、色を見ただけでまずそう…。
<例3>このマンション3億円だって。値段からして買えないね。
(値段 ⇒ 買えない)値段が高すぎて論外。
こちらは「〜から判断して…」という意味用法です。前件が後件の結論(評価)へ直結するような判断材料として提示されていますね。主にマイナスの評価に使われるような気がします。
2. 〜からすると
① 判断
<例1>あの雲行きからすると、今晩雨が降りそうだ。
現在の空模様から判断して、今晩の天気を予想している。
<例2>このケーキ、色からするとイチゴ味だと思うけど…。
ケーキの色から判断して、イチゴ味だと予想している。
<例3>彼の表情からすると、プロジェクトはうまくいっていないようだ。
彼の表情から判断して、プロジェクトの進捗状況を予想している。
<例4>このにおいからすると、今日の晩ご飯はカレーだな。
換気扇から漂うにおいから判断して、カレーだと確信している。
これらの使い方は、現在の様子から判断して、今後のことを推測するような状況で使っています。したがって、後件には「〜そうだ」「〜ようだ」「〜かもしれない」「〜と思う」などの表現がよく使われます。こちらは「からして」とは違って、ネガティブな内容ではなさそうですね。
② 立場
<例1>日本人からすると常識でも、外国人からすると非常識なことってありますよね。
日本人の立場と外国人の立場で考え方がちがう。
<例2>他の人には価値がなくても、わたしからすると宝の山です。
他人にはただのジャンク品でも、私の立場では何にでも使えそうな貴重な部品に見える。
<例3>医者からすると何例も見た病気の一つかもしれないが、患者からすると自分の人生に関わる大問題だ。
医者の立場では何例もある症例の一つとしか考えていなくても、患者の立場では深刻な問題と考えている。
こちらは「立場(視点)の違いで判断も変わる」と言いたい時に使われます。どちらかというと、他の人などと比較して、立場の違いを言うときに使うことが多そうです。
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