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「東京農業振興プラン」で9年後の東京はサスティナブルになるの?

今回は、2023年3月に東京都が掲げた
「東京農業振興プラン」を、
主に生活者の立場から読み解きます。
東京農業振興プラン全文(PDF)」を参考にしました。

▼令和5年3月 東京農業振興プラン

東京サスティナビリティの鍵は”農業”?

「東京農業振興プラン」は2032年までの間に「都民生活に貢献する、持続可能な東京農業」を目指しています。


実は東京には、大都市でありながら農園がたくさん点在しているのをご存知でしょうか。東京は世界的に見ても希少な地域だそうです。

だから今、
「この貴重な東京農業を次世代に継承していこう!」
と多くの生産者さんや農業関係者さんが取り組み始めています。

都民と農業が力を合わせ、
新たな視点で農業に触れる時代が来たようです。
さて、わたしたちの生活は、これからどんな未来になるでしょう?


東京農業振興プランの「5つの柱」

東京都は「持続可能な東京農業」に向けて、
「5つの柱」を掲げています。

【1】「担い手」の確保と育成
【2】「稼ぐ農業経営」へ
【3】農地の「保全」と「活用」を
【4】持続可能な「農業生産」と「地産地消」へ
【5】地域の特色を活かした農業へ

さらに4つの視点をプラスして、
新たな農業振興施策を展開いくようです。

・デジタルトランスフォーメーション(DX)
・女性の活躍促進
・ブランド化の推進
・環境保全


>>「持続可能な東京農業」で、生活はどう豊かになる?

わたしたち生活者にとっては、
その地域のストーリーを楽しみながら
エコな農産物を選ぶ楽しみが増えそうです。

また、
女性生産者さんが働きやすくなることで、
新しい視点で生まれる発信とサービスが
わたしたちの生活をより豊かにしてくれそう

というイメージが湧きました。

つまり、
生産者さん側と、私たち生活者が
ともに望んでいたライフスタイルが
やっと実現していく

そんな印象です。

ここからは、
「東京農業振興プラン」を5つに分けて
さらに詳しく見ていきます。


【1】「担い手」の確保と育成

東京都はこれまで以上に、未来の「農業」という産業を支えていく担い手=経営者を育てようとしています。

1)「今後の東京農業の担い手」の確保・育成

「担い手」として挙げられているのは4タイプの生産者さんです。

・経営力向上に意欲的だと各区市町村に認められた「認定農業者」
・親から引き継ぐ「親元就農者」
・脱サラなど親が農家ではない人が生産者となる「新規就農者」
・出産や育児などライフステージが変化する「女性農業者」

この4タイプに対して東京都は、以下のように経営全般を支援するそうです。

<経営「安定」のための都のサポートは?>
1)経営資金の確保支援
2)販路開拓支援
3)施設等の整備補助など
4)普及指導員による技術支援
 ・生産技術などの高度研修
 ・都のブランド農畜産物の導入
 ・先進技術の導入など
<経営「発展」のための都のサポートは?>
1)GAP認証などの取得を支援
2)個々の農家のブランド化への支援
3)新たな農地の確保

>>「担い手の確保と育成」で、生活はどう豊かになる?

東京農業には、4種類のヒーロー戦隊「農レンジャー」がいることが分かりました。
・経営向上に熱く燃える「認定農業者」
・先代からの経営基盤を受け継ぐ力持ち「親元就農者」
・ユニークな視点で業界に新たな風を吹かす「新規就農者」
・ライフステージの変化も強みに変える「女性農業者」

この「農レンジャー」1種1種の特性に都のサポートを掛け合わせたら、どんなことが起きるでしょう。



もしかしたら、
農業のイメージを「3K(キツイ、汚い、危険)」から、これまで出会ってきた農家さんがたの希望である「将来なりたい職業ナンバーワン」が実現可能になるかもしれません。

農業は生活者の新しいライフスタイルを創造し、ITを活用しながら命と向き合い人々を豊かにする仕事____。子供たちが生産者さんに憧れを持つカルチャーが、東京から生まれる日もそう遠くないかもしれません。


2)「新たな支え手」を育成

「支え手」は、わたしたち生活者も対象となりそうです。
プランからは、「農業に興味ある都民を巻き込めー!」という勢いを感じます。
農や自然に触れたい人にとって、東京はもっと楽しい街に変化します。

▼対象となる人
・農業参入する法人
・雇用就農する人
援農ボランティア
・半農半X

<都のサポートは?>
▼就農を「検討」したい人向けには…
1)就農の情報発信
2)就農相談を受け付ける
3)農業体験の場を用意する
▼就農を「準備」したい人向けには…
1)基礎技術習得の研修
2)農地確保をするための支援


>>「新たな支え手を育成」した東京は、どう変わる?

「今日は●●農園さんのボランティアだったよ。明日は別の●●さんで…」
「あの有名な企業が農園を始めてね、わたし就職したの!」
「僕、IT会社に勤めながら、副業で農業やってるんだ」
「近くで農業体験やってたから行ってきたよ!」

そんなふうに、東京農業の「関係人口」が増えていきます。

そこで農に触れる人の中には、きちんと研修や体験を受けた上で農地を借り、晴れて農家となる人も増えていきます。


【2】「稼ぐ農業経営」へ

前述した「農レンジャー」がガンガン稼ぐために、4種類のサポートを行ないます。

 食・農ビジネスで「稼ぐ農業経営」を実現!
1)東京産農畜産物の高付加価値化

  ・付加価値の高い新品種の開発
  ・東京型スマート農業の推進
  ・個々のブランド化の推進
2)生産現場への技術の普及
3)食・農ビジネスへの支援
  ・ITを活用したマイクロ物流の導入と活用
  ・農業体験農園の設置促進
4)普及指導体制を強化


>>「稼ぐ東京農家」の増加で、東京はどう変わる?

「東京のあのブランド卵、高いけど買わずにはいられなくて!」
「今日のトマトは●●農園さん、昨日は●●農園さんだったの」
「東京都が開発した●●が、あの飲食店で食べられるらしいよ」
「農業体験農園で色々栽培してるの。あなたも来年やらない?」

わたしたち生活者は、農がより身近になり、毎日の「選ぶ楽しみ」やファンや追っかけが格段に増えます。SNSはより農園さんや商品などの話題が増えていきます。
企業は、経営感覚を持った生産者さんとの交渉がよりスムーズになり、レベルの高い連携により、社会に真新しい価値を生み出します。例えば、「マイクロ物流」基点の連携では地産地消だけでなく「買い物難民」の解決にもつなげていけそうです。


【3】農地の「保全」と「活用」

管理されていない荒れた畑、たまに見かけます。これは、土地の所有者や契約、計画などが曖昧だから…という理由がひとつあるようです。

これらを整備して、土地の所有者さんが自分の農地だと自覚し、未来に向けてどんな活用していけばいいかを決める支援が進められるそうです。

農地を保全&有効活用
1)「生産緑地」を長期的に貸借できるようにする
  ・特定生産緑地への移行と円滑化法の活用
  ・長期貸借の促進
  ・区市の「買取り」と「活用」の支援
2)未来へ向けた農地の有効活用
  ・農地所有者の意向の把握
  ・未来へつながる「地域計画」の策定支援
  ・農地マッチング体制の強化
3)「遊休農地」と「低利用農地」の再生や活用
 4)販売に前向きな「自給的農家」へのステップアップ支援
 5)「農業基盤」の維持保全と整備


>>「農地の保全と活用」で、東京はどう変わる?

生活者としては、「自給的農家(=経営耕地面積が30a未満かつ調査期日前1年間における農産物販売金額が 50 万円未満の農家)」という、自分のためだけに栽培などしている農家さんが販売を始めたら、ニッチでコアな農産物がゲリラ的に販売されるようになるかもしれません。

また、関係機関や行政、関係企業などとの連携により農地のデータ化が進めば、関係人口も増えるのも相まって「農を大切にしたまちづくり」への理解も早そうです。



【4】持続可能な「農業生産」と「地産地消」へ

作業環境の弱みを補強しながら、
東京ならではの価値を生み出そうとしています。

これまで以上に、東京農業の価値をわたしたちへ提供してくれるかもしれません。「食育」を超えた「農育」さえも目指す取り組みに見えます。

1)環境に配慮した農業の推進と農産物の安全安心の確保
 ・温室効果ガスの排出削減
 ・「東京都エコ農産物認証」「東京都GAP認証」の推進
 ・異常気象に対応できる、新たな緑化技術の開発と普及
 ・肥料にできる地域資源の仕組みづくり
 ・植物・動物防疫体制の強化
 ・鳥獣害対策の強化

2)農畜産物の消費拡大と地産地消の推進
 ・地域の消費拡大
 (交流会やマルシェ等のイベントの開催、飲食店等とのマッチング)
 ・都心部での消費拡大
 ・島しょ産農畜産物の消費拡大
 ・学校給食等との連携
 ・”生きた教材”=「食育」の推進



>>「持続可能な農業生産と地産地消」で、東京はどう変わる?

「有名店とのコラボできるほど、東京都産てすごいの…!」
「あのアーティストのライブのグッズにあの東京の農家さんのアレが使われてるの!?すごくないか…」
「あれっこれのマルシェ全部、東京都産?」
「あのニュースの食育イベント、東京の農家さんがやってたの?」
「あなたの街の給食、地元産使ってないの?そんなことあるの?」
「あのYouTuberって本当の農家さんだったんだ」

などなど、いつの間にかあらゆる場所で農や東京都産の商品に多く触れる機会が生まれそうです。


【5】地域の特色を活かした農業へ

東京にいると「うちの街には何もない」という声をよく耳にします。
9年間のうちには、その地域のストーリーを背負った「うちの街には●●があるんだ!」と誇れる価値が生まれそうです。

あなたの街はどの地域にあたりますか?
どう変わりそうですか?

▼東京都の支援内容
「都市農地」
≒23区など
 ・施設(ハウス)栽培
 ・飲食店経営もあり
 ・公有地を農業公園や区民農園に整備

「都市周辺地域」≒三多摩地区など
 ・
露地栽培と施設(ハウス)栽培
 ・防災機能、環境保全、コミュニティ創出の場としての農地活用

「中山間地域」≒奥多摩、檜原村など
・環境に適した特産品づくり
 ・滞在型市民農園や農家民宿

「島しょ地域」≒東京の島
・温暖な気候を活かした特産品(島内の観光資源)
 ・施設や農業基盤の、整備と長寿命化
 ・加工品の高付加価値化、ブランド化、都内への販路開拓
 ・島外からの新規就農者の確保


>>「地域の特色を活かした農業」で、東京はどう変わる?

「都市農地」では、都会の中に農空間を今以上につくってくれそうです。
「都市周辺地域」では、農地を限定的に開放してわたしたちの生活を支え、つながりを紡ぎ、安心できる空間を創ってくれそうです。
「中山間地域」では、観光地化して「ここでしか手にできない」貴重な農産物や体験を提供してくれそうです。
「島しょ地域」では、DXも活用して島の特性を生かした「ここでしか生まれない」特殊な農産物が島の価値をさらに押し上げてくれそうです。


東京農業5つの役割分担

東京の農を中心としたサスティナビリティには、役割分担が欠かせません。

あなたはどのポジションにいますか?

【農業者の役割】地域の農業を理解・応援してくれる都民を増やす

1)都民からの期待に応える
2)新鮮で安全安心な農畜産物の生産・供給
3)農業技術の継承
4)品質の向上
5)ブランド化の推進
6)防災や教育などの面で地域社会に貢献
▼参考
1.農業の広がりを支える経営モデル:所得目標 300 万円
2.地域の農業を担う経営モデル :所得目標 400~600 万円
3.東京農業をリードする経営モデル:所得目標 1,000 万円
4.法人など企業的な経営モデル :販売目標 5,000 万円以上

【農業団体の役割】東京の農業を次世代に確実に引き継ぐ

1)農地保全への支援
2)各農家に対する農業経営のサポート
3)新規就農者への支援
4)地域と共に農業を活性化する取組

【区市町村の役割】地域住民が身近な農業に関心を持つ

1)都市農業基本法に基づく地方計画を定める
2)農作業体験への参加
3)地産地消の推進
4)農地の保全
5)「農」がある空間を創出・維持
6)「緑農住」まちづくりの推進
7)総合的な施策(区市町村の都市計画部局と農業部局、産官学民の主体連携)
8)農業者の環境負荷低減活動(みどりの食料システム法規定により)

【都民の役割】東京農業や身近な農地に対する理解と関心を深める

1)地元農産物の購入
2)農業体験農園の利用
3)援農ボランティア

【東京都の役割】国と連携

1)各種制度の改善
2)振興施策の充実
3)農業基盤の整備・保全


以上、「東京農業振興プラン」を読み解きました。

生産者さんは口を揃えて「都市農業は大変」とおっしゃいます。
「東京農業振興プラン」を読む限りでは、
生産者の課題をあらゆる機関との連携により軽減させて、
もともとのポテンシャルをもとに さらに価値提供しよう
それが東京のサスティナブルへの貢献だ

というメッセージが受け取れます。

この9年の間に計画が全て実現したら、
多くの立場の方が想像する
「こうだったらいいのに…」という夢が
叶うのではないでしょうか。
私は生活者としてひたすらに地元農産物を購入しつつ、
その価値を伝える一端を担えたらと願っています。


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最後までお付き合いありがとうございました。
お相手は、小さなトリコをデザインする、
コトリコ江藤梢でした。


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