260. 弱視における遮閉と抑制: 1つのメカニズムか、2つのメカニズムか?

Patching and Suppression in Amblyopia: One Mechanism or Two?

Chen Y, He Z, Mao Y, Chen H, Zhou J, Hess RF. Front Neurosci. 2020 Jan 15;13:1364. doi: 10.3389/fnins.2019.01364. PMID: 32009874; PMCID: PMC6974542.


目的:弱視小児において、遮閉療法による効果が健眼からの抑制の減少によるものかどうかを調べること。

方法:新たに弱視と診断された10名(7.2±1.4歳)(斜視2名、不同視8名)が参加した。患者にはまず2か月間のrefractive adaptationを行い、その後遮閉療法(すなわち、不透明のパッチで両眼を1日4時間覆う)を行った。弱視眼の視力と眼間抑制を、0.5か月、1か月、2か月、4か月、6か月の遮閉療法前後に測定した。眼間抑制はbinocular phase combination task(両眼位相差結合課題)で定量化した。

結果:視力(logMAR)は、短期(2か月)の遮閉を終了した患者(A1-A10)では0.50±0.22(平均±SD)から0.33±0.20に、中期(4か月)の遮閉を終了した患者(A1-A9)では0.53±0.20から0.32±0.22に、長期(6か月)の遮閉を終了した患者(A1-A8)では0.48±0.19から0.22±0.10に改善した。視力は有意に改善したが、すべての症例で異常であった抑制の程度は一貫して変化しなかった。これは閉塞療法のすべての期間において同様であった。

結論:健眼からの抑制の低下は遮閉療法によるものではないかもしれない。

※コメント
discussion抜粋-
遮閉治療は、短期、中期、長期のいずれであっても、弱視患者の約50%で視力が改善することが示されている(Holmes, 2003, 2005;Repka, 2003)。今回の所見は、遮閉療法による視力改善に関する先行研究と一致している。視力が明らかに改善したにもかかわらず、全例で異常であった眼球間抑制の程度は有意に変化しなかった。これは、遮閉治療の全期間において同様であった。

単眼遮閉療法と両眼視療法(binocular therapy)には異なる神経メカニズムが関与しているのではないかという考え方は、この2つの治療法の効果にいくつかの顕著な違いがあることと一致している。
第1に、遮閉は17歳までの子供にのみ有効で、成人には効果がない(Epelbaum, 1993) 。両眼視訓練は、成人(Hess, 2010、2011;To, 2011;Li, 2013;Spiegel, 2013)と小児(Knox, 2012;Li, 2014;Birch, 2015)において、同様の効果があることが示されている。
第2に、遮閉よりも両眼視訓練によってより良好な両眼視の結果が得られている(Knox, 2012)。
第3に、治療期間は両眼訓練で20~40時間、遮閉で120時間以上(Stewart, 2004; Hess, 2010)。
第4に、再発率は遮閉では高く[24-27% (Holmes, 2004; Bhola, 2006)] 、両眼訓練では低い(Birch, 2015) 。
第5に、両眼視アプローチを用いた小児に関する研究では、主に遮閉療法で改善しなかった小児や、遮閉療法後に最良の回復に達した小児を調査している(Knox, 2012;Li, 2014;Birch, 2015)。しかし、両眼アプローチによって視力がさらに改善することが示されている(Knox, 2012; Li, 2014; Birch, 2015) 。


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