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「デザインのひきだし41 表紙加工」

こんにちは。現場の前田です。

久々の投稿となる今回は、noteでの登場は2回目となる書籍「 デザインのひきだし 」の表紙の加工のお話をしたいと思います( コスモテックが今まで「 デザインのひきだし 」の表紙加工に携わらせていただいたのは今回で7回目です)

前回のnoteでご紹介させていただいた時は、ティッシュペーパーで出来た表紙への箔押し加工をするという驚くような仕様でしたが、今回の表紙も挑戦しがいのある加工をさせていただきました!


今回の「 デザインのひきだし41 」 の表紙では、私のnoteでご紹介させていただいたコスモテックの新しい技法である「 テープスタンピング 」という加工をご採用頂きました。

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大変光栄なことに「 テープスタンピング 」をお仕事としてご採用頂いた実案件は、今回の「 デザインのひきだし41 」が初になります。


◉ 「 テープスタンピング 」とは?

「 テープスタンピング 」とは、箔押し加工の機械に通常使用している箔のロールの代わりにロール状のテープをセットして加工します。

金属製の抜き型でテープを型抜きしながらベースとなる用紙に圧着させることで、用紙にテープが埋め込まれたようなおもしろい表現ができる技法です。

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特徴的なのが、このロール状のテープをオリジナルで製作できるところ。自分好みのオリジナルの箔を作れるようなイメージです。今回の「 デザインのひきだし41 」でもオリジナルのテープを製作し、使用しています。

◉ まずは、オリジナルテープを製作!

「 デザインのひきだし41 」用のテープは、①蛍光ピンクと蛍光イエローの2色をグラデーションで印刷後、②銀ツヤ箔で箔押しという2工程で製作。

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①蛍光ピンクと蛍光イエローの2色をグラデーションで印刷

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②印刷した上に、図案を銀ツヤ箔で箔押し


なめらかなグラデーションを作るための職人技が光ります!
その後、出来上がったテープを箔のロールをセットする時と同様に機械にセットし「 テープスタンピング 」します。

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このオリジナルのテープが「 テープスタンピング 」によってどのように表現されるのか… いざ「 テープスタンピング 」!!

しかし、ここで少々問題が…
今回表紙に加工するサイズは 150×150mm という大きなサイズですが、実をいうとテープスタンピングで名刺サイズ( 91×55mm )より大きな加工するのは今回の「 デザインのひきだし41 」が初めてだったのです。

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箔押し機にこのテープを箔材のようにセットして加工

◉ 挑戦の中で工夫し、進化する加工

実際に加工してみると、初めて挑戦する大きさに悪戦苦闘…。
名刺サイズではとてもうまくいっていたのに、思いもよらなかったトラブルの連続で心が折れそう…なかなか思うように作業が進みません。加工する部数は、おおよそ15000部(予備含)。一枚一枚手作業で加工するコスモテックにとっては多い部数にはいります。

「 これは… 終わるのか? 」 と、不安や焦りもありました。

特に難しかった点が、圧をかけて型抜きしながらテープを用紙に接着する際に、型抜きする部分以外の余白部分のテープの接着面が、いかにベースの用紙にくっついてしまわないようにするか、という点です。

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「 ああでもない、こうでもない 」と、
試しては修正、試しては修正を繰り返しながら、だんだんとコツをつかみ徐々に加工もスムーズになっていきました。現場のメンバーや営業の青木の助けもあり、朝から晩まで加工し続けること丸4日。

いくら新しい技法とはいえ、加工していてこんなにも大変な思いをしたのは初めてではないでしょうか。精神的にも肉体的にも疲労困憊の末、なんとか無事に加工を終えることができました…!!

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テープと用紙の素材感の違いを活かすため、用紙はNSボールを使用し、印刷部分も同系色でまとめられています。テープのグラデーションと箔押しのキラキラと光る輝き、そして何より「 テープスタンピング 」の特徴である紙に埋め込まれたような文字が引き立っています。

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また、「 テープスタンピング 」はテープの模様の位置を指定して押すことが難しいため、銀ツヤ箔で表現した模様の位置はそれぞれ少しずつ違っています。

書店で手に取る際には、一冊一冊箔押しの模様の見え方が異なるという部分も楽しんで選んでいただければ幸いです。

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「 テープスタンピング 」後のテープの抜け殻

◉ たくさんの人たちに支えられて

今回の「 デザインのひきだし41 」の表紙の加工も悪戦苦闘でした。

その中で、どうすればより良くなるか考え、加工に対する追求の仕方や支えてくださる方々の優しさに感動し、精神と肉体の限界ギリギリの狭間を忍耐力でなんとか乗り切ることが出来ました。

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今回も多くのことを学ばせていただき、すばらしい経験を積むことが出来ました。無事コスモテックの新しい技法での加工をやり遂げられたことは、今後の自分への自信にもなりました。

加工に携わらせていただく機会をくださいました「 デザインのひきだし 」編集長の津田淳子さま、並びに、ご協力くださいました方々に心から感謝申し上げます。

ありがとうございました!!

◉ 加工をデザインすること(文:コスモテック 青木)

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「 デザインのひきだし41 」 P116-P119 までに掲載されております

「 テープスタンピング 」は、
コスモテックの前田瑠璃がデザインした加工です。

箔押し機ではロール状の箔材をセットして箔押し加工することが通例であり一般的ですが、この「 一般的 」は、あくまでも印刷業界の中での一般常識です。この固定概念を取っ払い、ロール状の紙などのテープを箔材のようにスタンピングしてはどうかという発想から「 テープスタンピング 」は生まれました。

加工をデザインするためには、固定概念を取り去りつつ、広い視野を持ち、知識と経験の蓄積、大胆に視点を変えて考えることが必要不可欠です。

日頃お客様から頂く大切な声・お問い合わせ、「 箔の材料ってどんな形なのですか? 」「 オリジナル色の箔は作れますか? 」などの質問に耳を傾ける中で、箔の材料もマスキングテープもロール状だし、それらを融合させることってできないものだろうか? と想像力を膨らませていきます。

箔押し加工だけでなくテープやシール素材についても知り、些細な疑問やお客様からの貴重な言葉に耳を傾け思考する。そんな中で、当たり前のようで当たり前ではないことが沢山あることに気付かされます。

目の前に沢山のヒントや知識が小石のように散らばっていて、それらをどうやって結びつかせることができるかを考えていると、どんどん想像がふくらんでいきます。毎日の生活や仕事、たくさんの人たちとの会話や交流の中から前田が発案し、新しい技法「 テープスタンピング 」が生まれたことは、僕にとっても嬉しい出来事でした。


【 箔押し加工 】
有限会社コスモテック 現場リーダー 前田瑠璃
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362

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