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JAXAの広報部をまとめるリーダーの仕事。やりがいは、メンバーの成長とチームの達成。

佐々木 薫(ささき かおる)さん
JAXA広報部 部長/宇宙教育センター長併任

プロフィール
岩手県盛岡市生まれ、宮城県仙台市育ち、東京都世田谷区で小、中、高時代を過ごす。
北海道大学法学部卒業(法学士)
大卒後、宇宙開発事業団(NASDA)へ。(2003年に3機関統合によりNASDAはISAS、NALとともに宇宙航空研究開発機構(JAXA)として発足。
初任は広報。その後国際調整、予算折衝、総務など事務管理部門を歴任、特に国連宇宙空間平和利用委員会の日本代表事務局業務を担当していた時に視野が大きく広がる。月・惑星探査プログラムグループ、広報部を経て宇宙教育センター(現在も併任中)、本年4月より広報部長。
1996年、社内留学制度でフランス ストラスブールにある国際宇宙大学 修士課程入学(宇宙学*修士号)*宇宙に関するあらゆる分野をあらゆる視点で学ぶ(3I: International, Intercultural and Interdisciplinary)

多趣味(音楽、映画、読書、芸術、散歩、スポーツ、ボランティア、各国料理、郷土料理を味わう旅、など)
新しい発見が好き。最近は近所の散歩で地元の再発見をすることが趣味。



【仕事内容】広報部部長の仕事とスケジュール

ーお仕事内容について教えてください。

2021年4月からJAXAで広報部部長を担当しています。
JAXAの活動をみなさんに理解していただき、さらにご支援をいただけるようにしていくことが大きな目的です。

具体的にはメディアの方とのコミュニケーションや自主媒体での発信、イベントや講演会の開催を行っており、現在25人前後のメンバーでチームを編成して各分野の対応をしています。

わたしは広報活動の方針や年度計画や中長期計画を見ながら、メンバーの意見をまとめて幹部に報告をしたり、実際の活動に落とし込むというマネジメント業務が中心です。

広報部の前はJAXA相模原にある宇宙教育推進室:通称宇宙教育センターで、2012年から計画マネージャー(室長の一つ下で課長級)、2018年から室長として働いていて今も併任しているので大忙しです。
宇宙教育センターでは宇宙事業の様々な成果を、主に青少年への教育に活用する活動をしています。

その前は2009年から3年ほど広報部にいました。
JAXAの管理・事務系の部門は、経験を積ませるために2~3年で様々な部署への異動があります。
わたしは就社直後に広報配属となり、広報誌の編集発行を担当。
その後、筑波宇宙センターに異動となり展示施設の運営や取材対応に携わっていました。

そのあとも、順不同ですが、月惑星探査グループという部署で各国との調整を務めたり、国際部で海外駐在員事務所の運営管理を担当したり。
また、国連宇宙空間平和利用委員会という宇宙の研究開発に関する国際協力や課題解決に向けた検討を行う年3回の会議に日本代表事務局の一員として参加するといった、多数の部署で色々経験させていただきました。


ー昼休みの過ごし方は?

リモート中心になる前、相模原市にある宇宙教育センターに出勤していたころは、大部屋の会議机で5-7人くらい集まってみんなでお弁当を食べながらコミュニケーションを取っていました。

その後は30分くらい散歩してることが多かったです。JAXA内でウォーキングキャンペーンというのがあって、自分で設定した目標があるんですが、散歩もみんなでコミュニケーションをとりながらやっていました。散歩はリモートワークの今も自宅周辺で続けています。

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APRSAF-26(第26回アジア太平洋地域宇宙機関会議)の宇宙教育分科会。共同議長のAdhikary氏(ネパール代表)と。


【やりがい】メンバーそれぞれの成長とチームの達成

ーやりがいは?

いろんなプロジェクトがあるのですが、全て1人ではできないのでチームで取り組みます。

チームで目的・目標を共有し、メンバーで役割分担をして活動する過程で、当然たくさんの課題があります。そういう課題をクリアしてイベント成功などの目的が達成されて喜びを分かち合えた時が、一番やりがいを感じる瞬間です。


ー大変なことは?

想定外の事が起こりがちです。

大丈夫だと思っていたはずの機材トラブルが発生したり、イベントでゲストの方が急遽参加できなくなって代理を出すのか、プログラムを変更するのかすぐ判断を迫られる場面がありました。

コミュニケーションのすれ違いも大変です。
例えばAで同意が取れていたはずなのに、Bで進めていたり。
Bから完全にAに戻すのか、またはBの要素を取り入れながらでも進められるのか判断しないといけないけれど刻々と期限が迫る中、現時点でどこまで手戻り可能なのか、取捨選択を判断して、みんなで逐一確認しながら進めます。

最後は失敗から学び、同じ間違いをしないように、と次回以降に活かす工夫をしています。


ー広報部の年齢層や男女比率は?

全体で25人前後で、男性:女性=6:4くらいです。
学校卒業後にJAXAで色々な部署を回って来ている正職員の方や、ある部門の専門で期間限定で来ていただいている方や派遣の方など働き方も立場も色々です。
年齢的には若い方からシニアの方まで、まんべんなくいると思います。


ー仕事では外国語は使われますか。

海外からの取材依頼もありますし、海外での展示や国際ミッションもあるので使う場面は多いです。
使うのは基本的に英語です。様々な国の方が参加されますし、基本は英語が使われます。

ただし、挨拶など相手の言語(フランス語、韓国語、ロシア語などなど)を会話の最初や最後にちょっと交えると、それだけで一気に距離が縮まりますね。


ー英語をどのように身に付けましたか?留学経験は?

学校の授業以外ではNHKのラジオ英語講座をいまも聞いていますが、基本はOJTです。

就職してから海外研修制度で1年間フランス・ストラスブールにある国際宇宙大学にいきました。正確には、中間の4ヶ月は大学外の提携先で勉強するカリキュラムなのでその期間は米国・ワシントンDCのジョージワシントン大学にも行ってました。

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2019年、国際宇宙科学アカデミー(IAA)STEAM分科会会合@ボストンMITの参加メンバーと。


【きっかけ】人のご縁がきっかけで、宇宙分野の文系の仕事を知ることに

ーJAXAに入ったきっかけは?

もともと自然が好きで、大学の時には地域の子どもたちと一緒に星を観る、科学館でのボランティア活動をやっていたのですが、その仲間達との活動の一環で、東京にある様々な宇宙関係の企業や団体についてリサーチした時に、きっかけとなる女性とのご縁がありました。

当時、月や軌道上へのホテル建設を計画していた清水建設に取材させて頂いたときに対応してくださったのが、大貫美鈴さんで。
若手女性でしかも文系出身でゼネコンで宇宙関係で頑張っているってすごいなと感動し、わたしにもそういう道があるのかなと思いました。

大学は法学部だったのですが、在学中に宇宙条約や国際条約を国内に適用していく分野が重要になるという話を聞いて、わたしもやることあるのかな?と思ってJAXAを受けました。
文系から銀行や商社、公務員志望の同級生が多い中で宇宙希望は変わってると言われることが多かったですが、人のやらないことをやる方がいいのかなと。
かといって一生ここで働こうと決意してた訳ではないのですが、意外とおもしろくてハマりました。


ーどういったところがおもしろいと感じたのでしょうか?

メンバーがおもしろかったです。
宇宙は未知を探っていく未来志向の分野ですが、例えば生命の起源など知らない世界を広げていこうとする人たちが魅力的で、すごくキラキラしていました。


ー広報はどんな方に向いてる職種ですか?

広報には自分が直接伝える仕事もあるし、伝える方をサポートする裏方のような仕事もあります。
時代時代で伝える手段は変わっていくものなので、「伝えたい」「知ってもらいたい」という気持ちと、伝えることが好きであることは大事かもしれません。


ー星を好きになったきっかけは?

小学校の理科の宿題です。
月の位置を観察する宿題だったのですが、時間によって月の位置が変わることを初めて認識して、何気ない夜の風景がちゃんと観察することで新たな発見が
あると体験しておもしろいと感じました。


ー話は変わりますが、リモートワーク中に体のメンテナンスで気をつけていることは?

もともと通勤にかかっていた1時間をウォーキングに充てるようにしました。平日は近所をウォーキングして、週末はジョギングしています。あとはスポーツはテニスをしています。

食事は体に良いものを摂るようにして、食べ過ぎないように。
メンタル面では音楽を聴いたり、瞑想したり、ポジティブなことを考えるようにしています。
コロナが終わったら海外行きたい!と考えたり。


ー海外はよく行かれるんですか?

仕事では国際会議で行っていました。
プライベートでも宇宙好き・星好きの仲間と「皆既日食ハンター」と名付けて、モンゴル、リビアなど世界のいろんな所に行ったりしていました。
夏休みと合わせて9日間で行ったこともあります。


ー尊敬する方はいますか?

立派な業績を残されている方はもちろんそうですが、そうでなくても周りに良い影響を与えたいという姿勢の方は尊敬しています。


ー情報の集め方について教えてください。

本や雑誌、新聞などのメディアもありますし、友人・知人から聞くことも多いです。
普段のコミュニケーションの中で気になる情報を覚えておいて、ネット情報を比較検討することも。
人に対するアンテナをしっかり張っておくことは大事だと思っています。


ーマネジメントの立場で人間関係作りで大事にされていることは?

みなバックグラウンドが違うので、意見を最初から否定せず、対話を重ねることを大事にしています。
メールのやり取りは多くなってますが、大事なところは直接意見を交わして相互理解を深めるようにしています。

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2019年、国際宇宙会議(IAC)でワシントンDCにあるNASA本部を訪問。


【メッセージ】“宇宙的な視点”をもって、これからの世の中をとらえていってほしい。

ーお仕事図鑑を見てくださる方へのメッセージや今後の目標・ビジョンをお願いします。

宇宙は未開発の領域がまだまだたくさんあります。
開発・研究を続けて、いまは宇宙と関係ないと思われてるような新たな業界と宇宙が繋がる可能性を追及していきたいです。

また、これまでアメリカや旧ソ連・ロシア、ヨーロッパなど各国で宇宙産業が発展していきたものが、グローバル化する世界でそれらが交わっていくことで、新たな価値観や文化が生まれると思います。

そんな未来にもすごくワクワクしてます。

繰り返しになりますが、宇宙にはいろんな可能性が広がっています。
はやぶさや民間の宇宙旅行など、宇宙に関するニュースが増えるに伴い、みなさんが宇宙に触れる機会もますます増えていきます。

”宇宙的な視点”をもって、宇宙から見るとこの社会・世界ってどうなんだろう、そのなかで人類・自分は何をするのかな、ということを考えて、いろんなことに挑戦していっていただきたいと思います。


ーありがとうございました。



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〇宇宙のお仕事図鑑とは?

このプロジェクトのきっかけは、「宇宙関係の仕事につきたかったけど、宇宙飛行士や天文学者しか知らなかった。」という声がコスモ女子のメンバーからたくさんあがったことでした。
宇宙のお仕事図鑑では、宇宙関連のお仕事をされている方々に取材をした記事を発信していきます。
文系の職種も理系の職種も(文理で区分する必要もないかもしれません)、大きな組織の中でのお仕事から、宇宙ベンチャーや個人でのお仕事まで、「宇宙のお仕事」をこのnoteで発信していきます。

〇コスモ女子とは?

「コスモ女子」は、宇宙業界で活躍したい女性中心のコミュニティです。

宇宙に関する知識を身につける「宇宙の基礎講座」や、宇宙に詳しくなくても楽しめる交流会などのイベントを毎月開催!

コスモ女子から発足した、コスモ女子アマチュア無線クラブが人工衛星を2024年に打ち上げる予定です。

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