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「向こうに行きたい」という言葉

最後の記事投稿がなんと半年前という狂気。
気付いたら半年も経っていました。
世間はほぼほぼ夏。体力気力共に追いつかない今日この頃です。
相も変わらず一介護士として日々業務に追われています。
そんな今日はいつも通り「なんとなく」文章が書きたくなった訳です。

この仕事をしていると、よくこんな言葉を耳にします。
「早く向こうに行きたい」
向こうって言うのは、つまり天国とか、あの世に行きたいとか、そういう。
よく精神的に追い込まれている利用者さんが言うイメージです。
以前は、「また言ってるよ」とか「どうしようもないのにね」と思ってました。
けれど、ここ最近、ちょっとその気持ちが分かるようになりました。
「向こうでお父さんが待ってるから」と自殺めいた行動をされる方も、決して少なくは無かったりします。
その際、結構興奮状態だったりするので、だいたいは「まともじゃない状態」(書き方は悪いけど)だと見る人が多いのかもしれません。

けれど、よく考えて見てください。
それは割と普通の事なんじゃないかって。
今までお仕事を普通にしていて、食事も、自分でトイレも、歩くことも、当たり前にされていた人達です。
今、私たちがこうやって生きて、インターネットを見るように、読書もするし、誰かと交流していた。
そして、誰かと恋をしていた。家族を持っていた。
そんな人たちが、段々と自分の事が出来なくなって。
大事な人たちが周りからいなくなって。
それって凄く寂しいことじゃないですか。
自分が、ふとその事実に気付いてしまう瞬間ってきっとあると思うんです。
大体、ご利用者さんって居室で過ごされる方は、居室でぼうっと天井を見たり、ずっと考え事をしたり、色んな過ごし方をしていると思います。
何もすることがないって、急に不安になるんです。
心の中にぽっと、「何も無い」という恐怖が出てくると、それがあっという間に大きくなって。

それが大きくなった時に、「早く向こうに行きたい」って言うんじゃないかなぁと思います。
そう考えると、むしろそうやって不安で、向こうに行きたい!って叫んでる時こそ、意外とまともな時なんじゃないのかなって。
今のご高齢な方って、きっと自分よりも家族の為に、ただそれだけに時間を費やしてきた人って本当に多いと思うんです。(もちろん今だってご家族の為に必死な方は沢山いるけれど)
そのお役目が終わった後って、きっと凄く寂しいんですよ。
大変だったけど、大好きだったお父さんがいなくなって。
そりゃ会いたくもなるよねって。

私は自慢の様な、自慢じゃないような。
ほら、日本人って遠慮というか、そういうのが美徳ですから。
今年になって、パートナーが出来て。
大切にしたり、されたりっていう感覚がようやく分かるようになったんです。
彼は私より年上ですから。きっと私より先にいなくなるかもしれません。
そう考えると、今はとても楽しいし、充実してて、暖かい日々だけれど、
それも終わりが来るんだなって。
どうしようもなく、虚しさや、寂しさがどわっと押し寄せる事もあって。
考えるとしんどくなってしまうから、「その分今を大事にしよう」って、そう考えて床につくんです。
この考えが出るって、きっと私は暇の様な、贅沢なことなんじゃないかと。
だってそうじゃないですか。
昔の人って、そんな事も考える間も無い程日々を駆けていて。
それが今になって出てくるんだから。

今日もそんな暗闇が心に、ちょっと陰りを生んだので。
それがしんどくなる前に文章にしてしまえと思ったんです。
共感って難しい。でも、今日その感情をまた一つこうして理解できた。
分かってあげられる感情が一つ増えた。
それって介護士として、武器なんだろうなって思うんですよ。

その寂しさの波を少しでも低くしてあげたら、いいな。
介護士の私がなんとなくそう思う。
そして、31歳の私は、「寂しくならないように、もっと日々を噛みしめようかな」と。
そう心で何度も唱えたんです。

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