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CES2022直前、スタートアップ企業のCEOと一緒に英語ワークショップをやってみた。

昨年11月、「2ヶ月集中英語ワークショップ」を、シモキタFABコーサク室で初めて開催しました。目指したのは「自分の言いたいことを表現できる英語」の習得です。

参加してくれたのは、株式会社ラングレスのCEO・山入端佳那さん。同社は、心拍変動解析から愛犬の状態を可視化する技術を搭載したデバイス「inupathy(イヌパシー)」を開発しています。そして新年早々開催のCES2022への出展をひかえ、山入端さんは「inupathy」の魅力を自分の言葉で伝えられる英語を身につけたい、という切実かつ強い思いを持って申し込んでくれたのです。

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山入端佳那さんプロフィール
大学にて異文化コミュニケーションを学んだ後、リクルートに入社。退社後、複数の非営利団体で動物福祉活動とペット関連事業に従事した後、世界発の心音特化型センサーを開発し、動物の状態を心拍解析から解析する株式会社ラングレスの代表取締役に就任「世界のあり方をあらゆる生き物と共に決める未来」をビジョンに掲げ、同社CEOとなる。

ワークショップ最終日を迎えた12月終盤、山入端さんの英語は、自信に満ちた表情で自然に繰り出されるものとなっていました。なぜ、そこまでの成果に結びついたのか。教え方の上手い講師が一生懸命に教え、受講者も頑張った、そんな単純なプロセスではありません。あったのは「教える・教えられる」という関わりではなく、「共に学び経験する」という学びのあり方です。

・学び手が、英語習得をする明確な目的・目標を持ち、意志を持って学んでいたこと。
・学び手は、英語を学ぶプロセスを通じて自分の弱みに気づき、向き合い、乗り越える努力を全力でしたこと。
・学び手自身では壊せない思い込みや概念を、講師は、明るく軽やかに破壊・突破する手助けをしていたこと
・学び手の努力、苦しみながら乗り越える姿から講師もまた学び、一緒になって壁を乗り越えようとしたこと。

誰もが同じ成果を出せる訳ではありません。けれど、新たなプロダクトやサービスを引っさげ世界へチャレンジするスタートアップ企業や起業家の皆さんには、英語習得を目的としたワークショップであっても英語習得だけではない価値を提供したい、共に学びたい、と考える私たちのやり方が、もしかしたら役に立ててもらえるのではないか。そんなことを思い、今回のワークショップについて、noteで発信することにしました。

講師・田邉香菜子さん

今回の企画は、講師・田邊香菜子さん(以下、文中では講師と受講者をわかりやすくするため「香菜子先生」と記します)と、コーサク室との出会いがあったからこそ、実現しました。
コーサク室スタッフである私が香菜子先生と初めてお会いしたとき、英語の話はほとんどしませんでした。コーサク室では昨年夏以降、子どもを対象としたロボット製作などの企画が続いていたこともあり「子どもの場」という印象を持たれることが多くなっていました。それはそれでいいのですが、大人が本気で学びチャレンジする姿を見せること、それが子どもの学びを変え、結果的に子どもの未来への選択肢を豊かにするのではないか、だから子どもだけでなく大人が本気で学び遊ぶ機会をコーサク室でつくりたい、そのテーマのひとつが英語なんです、とお話ししました。
静かに聞いてくれた香菜子先生が発した次の言葉に、私は驚かされます。ご自身が英語を教えているのは「機会損失を失くすため」だと。どんなにいい技術、研究、プロダクトであったとしても、英語で世界に伝えることができなければ機会損失になってしまう。自分はそこをなんとかしたいんだ、と。互いの目的と思いがつながりました。

英語を使って自分の言いたいことを伝え、コミュニケーションが取れるようになれば、見える世界、出会う人・コト、得られる知識や経験は、大人も子どもも、グググググーーーンと大きく豊かに拡がります。だからこそ、ただなんとなく英語をできるようになりたい人向けではなく、明確な目的を持つ人を対象とし「英語コンプレックスを取り除き、自分の伝えたいことを英語で表現し、機会を掴んでもらうための学びを提供すること」それが、香菜子先生と私たちの目標となりました。

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田邉香菜子さんプロフィール
ラジオDJの経験を経て、ビジネスマンが通うあの英会話スクールの英語講師になる。ラジオとレッスンセッション併せて約7000人と対面式で話して来た経験を背負い、旅路の途中でなぜか社長秘書を経験し(その社長もまた面白い人だった)コミュニケーションを加速させる英語を身につける。外務省主導のJapan HouseプロジェクトLAのプロジェクトマネージメント、ドバイ万博日本館の和食企画アドバイザー、 経産省やJETROなどによるJ Startupメンター、海外進出のコミュニケーションアドバイザーなどを経て現在は農水省の海外プロジェクトに関わっている。そのほか時々アーティストインタビュー、時々通訳、時々番組司会やヨガ講師。英語圏の良さを日本に、日本の良さを海外に伝えることができて良かったと、英語を話せる幸せに気づいたのは意外と最近です。どんどん英語が面白くなってきていて、そのお裾分けが少しでもできたらと思っています。

ワークショップ概要

募集時は、TOEIC730点以上の方を対象にした実践者コースと、英語コンプレックス克服を目的としたスターター・覚え直し希望者コースの2つを用意していました(募集時の情報はこちら(Peatix)でご覧いただけます)。今回の開催は「覚え直しコース」で、受講者である山入端さんの目的と英語力を踏まえた内容で進めていきました。1回あたり約50分、2ヶ月間で対面4回、オンライン2回の全6回行いました。

初回で早くも英語コンプレックス解消!

初回は、昨年の11月10日。やや緊張気味の面持ちでコーサク室に来た山入端さんでしたが、香菜子先生の超絶に明るく楽しいトークに、あっという間に場の空気はほぐれました。楽しい会話の端々に流暢な英語フレーズが挟み込まれますが、山入端さんも私も聞き取れず「?」な表情。最初の学びは「英語が聞こえない理由」でした。

・tdngkpbmの音は脱落する、ほとんど話さない
・aiueo(母音)等と一緒になるとtdngkpbm音が聞こえる

たとえば ”find my tokyo” というフレーズは、日本人は「ファインド マイ トウキョウ」と言うのですが、ネイティブの人が口語で話すと「ファイン マイ トキョー」となるわけです。香菜子先生は、次々と、いわば「英語学習の前提」になることを教えてくれました。

・日本人英語の特徴
・英語は息の使い方がコスパいい
・日本人の話は東京人の話し方でオチがない、関西気質出していく
・困った顔をしない、正しい文法じゃなくても堂々と話す

最初、山入端さんは英語を口にしながら「伝わっているかな??」という不安が表情に出ていました。聞く側の人は「この人は何を話したいのだろう」と一生懸命に聞こうとしているから、不安そうな表情は聞き手も不安にさせてしまうよ、と香菜子先生。英語を話すときは正しい文法じゃなくても堂々と話す、さらには「◯月◯日、どこで◯◯してて、なぜなら云々・・・」と背景から話すより、いきなり「ねーねー、今朝めっちゃ可愛い子がおってん」と結論から切り出すほうが、相手も「え、どんな子だったん?」と会話を返しやすい、結論から会話が始まることが多々ある関西弁は英語と相性がいいと教えてくれました。確かに、なるほどー! 英語と関西弁と身振り手振りの入り混じった香菜子先生のアドバイスに思わず笑いながら、気づけば肩の力が抜けて、英語へ気楽に取り組めるマインドになっていたのでした。

ニュアンスを伝えるために単語を使い分ける

2回目以降は、CESに参加する山入端さんの姿をイメージしながら進みました。まずは自己紹介。ここで香菜子先生は、ニュアンスや複数の意味を含ませやすい単語や使い方を、様々な例を交えて教えてくれました。たとえば、 "difficult"  "tough"  "challenging"、どれも難しいことを意味しますが、受ける印象は違います。"trouble"も、"issue" や "concern" を使うと、これまた違う印象に。

英語ネイティブではない私たちが、シチュエーションや相手に与えるニュアンスを意識して単語やフレーズを会話の中で咄嗟に選び使うことは、難易度が相当に高いもの。でも、山入端さんの「CESで自社プロダクトを知ってもらう」という明確な目的において、発生しそうなシーンと会話を想定して言葉にしていくと、必要な単語や表現はある程度予測して事前に学んでいくことができそうです。3回目以降は、山入端さんがプロダクト説明のために用意していた英語シナリオをもとに、伝わりやすい英語表現に修正しながら、さらに英語の呼吸に準じたリズムで話す練習を繰り返し行なっていきました。実は、英語を習得するにあたって、発音よりもこのリズムこそがとても曲者、なんだそうです。

2つの報酬

前述したように、今回のコースは対面4回、オンライン2回の合計6回です。しかも、各回約50分。トータルの学習時間は6時間にも満たないのです。対面を3回実施後にオンライン開催を2回挟みました。これまで英語の呼吸に準じたリズムの習得に苦戦していた山入端さん、香菜子先生は「できたかな? どうかな?」と少し心配をしながら、最終日を迎えました。

なんと! 山入端さんは苦手としていたリズムをバッチリできるようになっていました。そして、顔をあげ、ごくごく自然な表情で、CESで出会う会話相手を想定しながら、自社プロダクトの「inupathy」を英語で紹介していきます。最終日は12月22日、渡米目前で準備も佳境なころ。相当に忙しいなかで自己学習の時間を捻出、香菜子先生の発音や英語のポッドキャストを何度も繰り返し聞き、聞き取れないところはその発音で消えている音を香菜子先生に教えてもらい、さらには愛猫に英語でずっと話しかけていたそうです。

自分一人でコツコツと英語学習を継続するのは、とても大変です。できない理由はたくさん挙げられるし、実際忙しいし、くじけた時もあったのではと思います。けれど、努力を認め「すごーい、すごーい、マジすごーい!」と自分ごとのように喜んでくれる香菜子先生の存在は、山入端さんを励まし、学習意欲に火をつけていたことも明らかでしょう。
また、そんな山入端さんの姿を見ている香菜子先生の嬉しそうなこと! 共に何かを乗り越えた充実感のようなものが、表情に現れていました。

今回の経験を経て、山入端さんは、英語を使えるようになることで2つの報酬を得ることができる、と話してくれました。1つは、プロダクトを知ってもらい買ってもらえるという報酬、もう一つは努力した証を認めてもらえるという報酬です。特にくじけそうになる時、対面でのワークショップは大事な役割を果たしました。わざわざコーサク室まで出かけていくという物理的な移動が気持ちを整理する時間になり、対面で講師とやりとりをしていると何ができていて何ができていないのかがはっきりとわかってくる。それがかえっていいストレスになり、「やらなくちゃ」とエンジンがかかる。エンジンがかかり、以外の時間も頑張る。すると、結果が出て褒めてもらえるという好循環に。対面・オンライン・自己学習、それぞれの学習方法の強みや特徴とそれに適した内容、そこに学習者のマインドが重なり、成果を生み出したのです。誰しも頑張っていることを認められ褒められると、嬉しくてもっと頑張りたくなるもの。また、頑張っている姿を見せられると、応援したくなるもの。大人にとって、このような報酬をもらう機会は案外少ないのかもしれません。

本ワークショップの3つの特徴

改めて、今回のワークショップの特徴をまとめてみます。

本プログラムの特徴
①「英語を使わなくてはならない」明確な目的を持つ人に適している
②「対面」「オンライン」「自己学習」それぞれの学習方法の特徴をつかみ、短期集中で課題をクリアする
③「教える・教えられる」のではなく、講師も受講者も、共に学び経験するプロセス

「CES2022生報告&英語ワークショップ説明会」開催

この記事は、ワークショップを横で観察していた私=コーサク室スタッフの視点で書いています。受講者と講師からの見え方はまた違っているはずで、本気で英語をやりたい人には、そちらの視点や気づきこそさらに役立つだろうと思います。香菜子先生がなぜ今回のような進め方をしたのか、また、山入端さんはCESで自分の言葉で英語を使いこなすことができたのか、自己学習の方法をもっと詳しく、などなど、気になることがたくさんあります。CESでのエピソードも聞きたい!

そこで!お二人と一緒に「CES2022生報告&英語ワークショップ説明会」を開催します! 英語を使わなくてはならない明確な、切羽詰まった理由があるスタートアップ企業の方や起業家の皆さん、ぜひ、いらしてください。山入端さんは、CES2022での経験を生報告してくださるそう。とても貴重な機会です! お申し込みはこちらから。

「CES2022生報告&英語ワークショップ説明会」
・開催日時:2022年1月28日(金)19:00-21:00
・開催場所:シモキタFABコーサク室(下北沢駅徒歩4分)
・参加対象:英語を使わなくてはならない明確かつ切羽詰まった目的をお持ちの方。特に、スタートアップの方に強くおすすめ!
・参加費用:2,200円(当日現地決済・コーサク室ドロップイン利用つき)
・参加特典:同日は朝からコーサク室をワークスペースとしてご利用いただけます(機材利用は別料金)。朝からコーサク室で仕事してそのまま会へ参加OK!
・定員:最大5名(最小催行人数2名)
・お申し込み:Peatixからお願いします

※少人数かつ、感染防止対策を行ったうえで開催いたします。マスク着用、手指消毒、検温など感染防止対策へのご協力をお願いいたします。また、発熱など少しでも体調がすぐれない場合や、濃厚接触の懸念がある場合は、参加をご遠慮ください。


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