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「父親の記憶」


最近、亡き父親の服を着ている。
昨日も夏の寝巻きがボロボロになったので、甚平を借りる。
と、ある記憶が・・・

あれはぼくが小2くらいの時かな。
兄貴と父親、3人で伊豆大島に旅行した時。

宿は当時、売れていた大きなホテルだったが、
神経質なぼくは12時になっても眠れなくて、
泣きじゃくっていた。

激しい風、雨による雨戸の音、
隣からは酒を呑みながら麻雀をするサラリーマンの怒声。

父親はまず隣に声をかけた。
「すみませんが、子供がいるので、もう少し静かにできませんか?」
「おうっ、まぁ!かたいこと言うなよ。もうすぐ、やめるよ!」

それでも、やまぬ雨音と怒声。

ホテルの店員に電話。
店員が謝っている記憶はあるが、問題は解決しない。


・・・父親は物静かなタイプで争いは好まないタイプだった。


「おいっ!今、静かな部屋にしてやるからな」

そう呟くと、父親はホテルの店員をもう一度呼び恫喝した。

「てめぇ、人なめてんのかっ!こんな薄汚ねぇ部屋に泊めやがって、
雨戸はうるさいし、こんなところで寝れるかっ!いいから、このホテルで最上級の部屋を用意しろっ!早くっ!」

結局。ぼくたちは、そのホテルの最上級の部屋にうつった。
雨戸の音も麻雀の音もしない。

ぼくはぐっすりと眠った。

次の日。父親はいつもの顔で、
「よく寝れたか」と言うと、
いつものように暢気に釣竿の手入れをしていた。

まだ、ペーペーのサラリーマンだったろうに。。。
妙に父親が男らしく感じる思い出ではある。

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