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生存率5%以下の大病を経験した話③

再手術

大動脈解離の手術は15時間かかりました。

胸骨を割って開いて、人工血管に置換する手術です。

執刀してくださったのは、横山先生 横手先生 黒田先生です。たぶん

患者はまさしくまな板の上の鯉状態で、後から教えてもらった情報で知りえた先生です。命を救っていただきありがとうございました。

手術後目覚めてから、意識はあるのですが反応できません。緊急で手術をして、なんとか命をつないだのですが②でも書いたように左膝から下に血液が流れていない状態が長時間あったため、ふくらはぎと脛の筋肉が壊死してしまいました。デブリと呼ばれるかつて自分を支えてくれていた筋肉は取り除くしか方法がありません。術野をを開けてみないとわからないが、場合によっては足を切断しないといけない可能性があると説明されました。

足を切断

この言葉を聞いたときは、しかたないと自分に言い聞かせても、やはり涙が出てきます。命を救うために必要な判断だとわかっていますが、好きな自転車も、下手なゴルフも、息子と少年野球の前の30分ほどのコソ練もできなくなります。生きていればそれだけでいいと言われますが、何を楽しみに何を目標に生きたらいいの?

しかし病状は待ってくれません。整形外科の先生は丁寧に手術の内容やデメリット、足の手術だけでも2~3回は必要だと説明してくださいました。

手術の前の日はさすがに寝れませんでした。

身体を動かすことができませんので、イメージだけですが左足にお礼を言い続けました。学生時代には通学・部活なんかを支えてくれて、大人になってからは、スキーなど娯楽につきあってくれてありがとう。左足があってくれたから、今までいろんな楽しいことがあった。無くなってしまうのは淋しくて辛いけど、それでも生きていくわ!

再手術で左足の膝から下の筋肉はすべて取り除かれました。

けれど、足の切断は免れました。

整形外科の石田先生が太ももに残る日焼けを見て、何としてでも足を残す方向で手術してくださいました。ほとんどの意見が切断の方向であった中、決断していただきました。ありがとうございます。何とか足引っ付いてます。

この手術が終わって目覚めるときは、痛かったです。

足も痛いし、指も痛いし、もう体中が痛く、痛みで何も考えられません。痛みで目が覚めて、痛み止めでまた眠りその繰り返しです。相当強い痛み止めを使っていたのでしょう。幻覚も見えてきます。大きなカマを持った死神が瞬きのたびに近づいてきて上に乗ってきます。周りの機械は形を変えて踊りだします。空間は歪み見たことのない物体が染み出てきます。怖くてたまりません。この幻覚で最後まで残ったのは、ツンデレのバタコさんでした。アンパンマンに出てくるバタコさんが姿も声もそのままで、怖い事を言って脅してきます。

しかし、痛いと神経がつながったみたいで、少し指がうごきました。

まだ誰も気づいていませんが、少し右手の指が動きました。

手首が持ち上がるようになった時にようやく気付いてもらえました。妻や姉達が差し出す指を少し握れるようになりました。強く握ったり弱く握ったり工夫できるようになったころ、娘がようやくICUに入れてもらえました。娘が差し出す指を握り、小さいころ同じような遊びをしていて、けれど逆だったことに気づきます。私の指を小さな手で握ってくれたあの頃と違い、大きくなった指を弱々しく私が握ります。まだ、守らなければならない家族がいますが、私には到底できそうにありません。ごめん生き残っちゃった。

④に続く

生存率5%以下の大病を経験した話
生存率5%以下の大病を経験した話②
生存率5%以下の大病を経験した話④
生存率5%以下の大病を経験した話⑤
生存率5%以下の大病を経験した話⑥
生存率5%以下の大病を経験した話⑦
生存率5%以下の大病を経験した話⑧
生存率5%以下の大病を経験した話⑨
生存率5%以下の大病を経験した話⑩

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