WEBTOONが日本市場に定着し、文化として成立するために必要な3つの条件
こんにちは。ナンバーナインで取締役CXOをやっているころくです。
今日は引き続き活況なWEBTOON(縦スクロールで読み進める漫画のこと。日本においては現時点ではフルカラーであることが多い)について、久しぶりに書いてみたいと思います。
少し前に、集英社と小学館がWEBTOONの専門部署を立ち上げた話がありました。
また、今週はTBSが韓国企業とタッグを組んでWEBTOONスタジオを韓国に設立したニュースもありました。
ナンバーナインのような新興企業やIT企業ばかりではなく何十年も漫画を作ってきた大手出版社やマスメディア企業が本腰を入れて参戦するということに、とても大きな意味があると感じています。
引き続き新規参入のニュースは散見されますが、最近は少しニュース的な観点では落ち着いてきているのかな、というようにも感じます。一時期の盛り上がりが異常だったという説もありますが、フェーズとして「スタジオ立ち上げ」や「プラットフォーム立ち上げ」といった参入系の話から、各社制作のフェーズに入ったということなのかなと見ています(事実、ナンバーナインは目下WEBTOON制作に奔走しています)。
そんな中で、最近ある企業様から「WEBTOONについて教えて欲しい」問い合わせがあり、意見交換をする機会がありました。
そこでの話が「WEBTOONが文化として根付くために何が必要なのか」を考えるいい機会になったので、今回のnoteで思考実験的に整理してみようかなと思います。
WEBTOONが市場として成熟し、日本で定着するために必要な3つの条件
最初にお伝えしておきますが、これは会社の意見ではなくあくまで僕個人の見解です。それを踏まえた上で、興味がある方は読んでいただけると嬉しいです。
WEBTOONが一過性のブームではなく、漫画のように文化として根付くためには、僕は3つの条件をクリアする必要があるのではないかと考えています。
1. つくり手が増える
1つ目は、「つくり手が増えること」です。まずはプレーヤーが増える。これは必須であり前提ですね。
つくり手が増えるということは、前提として「金脈がある」と考える人が多いということであり、市場拡大のポテンシャルを持っているということです。
WEBTOONに関して言うと、おそらく一年前にはWEBTOON制作スタジオが10社もないくらい(あってもニュースにはならなかった)だったのが、今では50近い会社がスタジオを立ち上げるに至りました。一年で5倍は、非常に盛り上がっている証拠といえますね。
そこに、大手出版社の参入です。この条件に関しては、徐々に役者が揃いつつあるなと思います。
2. 国産の巨大プラットフォームが台頭する
続いて大切なのが、「国産の巨大プラットフォーム」の存在です。
現在は、韓国資本のピッコマとLINEマンガの二大巨頭が他の追随を許さない状況で、日本企業が運営するWEBTOONの配信プラットフォームとして有力なものが現状はありません。「日本の市場に根付く」ということを考えると、この「国産WEBTOONプラットフォーム」は必須ではないかと考えています。
それはなぜか。経営目線で考えれば、独自コンテンツが売れる方が利益率が高くなるので自社オリジナルWEBTOONの露出を優先したくなるのは当然です。かつ、韓国は国策としてWEBTOONに投資していたりするので、「国産コンテンツで世界中にインパクトを与えられる」ということは、非常に大きな意味をなすのではないかと考えます。
そこで大事なのが、国産のWEBTOONプラットフォームです。現在、DMMさんやアカツキさんを筆頭に、各社がWEBTOONプラットフォームの立ち上げに尽力しているところですね。
別にこれは韓国が敵だとかそういうことでは一切なく、日本市場が拡大し文化として根付くことを考えた場合に、国産プラットフォームの存在は欠かせません。
プラットフォームの難しさは、「5年単位の息の長いプロジェクトである」ことと「投資額が莫大である」こと。いまでこそ世界一のセールスを記録する漫画アプリとして燦然と輝くピッコマさんも、2016年に立ち上げた頃は月数億円規模の広告費を投下し赤字を出しまくっていました。
WEBTOONスタジオを設立するのとは別の大変さがあるプラットフォーム。文化醸成の土壌づくりには上質な土地が必要なので、長い目で見守っていきたいと思います。
3. 国産のメガヒットコンテンツが生まれる
プレーヤーが増え、プラットフォームが大きくなったら、最後は人気作が出るかどうかが鍵になります。結局、文化を活かすも殺すもコンテンツ次第というのが、僕の考えです。
漫画が文化として成熟したのも、フランスのルーブル美術館が第九の芸術として漫画を認めることになったのも、間違いなく偉大な漫画家たちによる素晴らしい作品の数々があったからこそ。これを、WEBTOONでも再現する必要があります。
もう一つ別の視点で考えると、結局おもしろい作品が増えないと読者が増えません。漫画業界で連綿と続く「ヒットの連鎖」がWEBTOONでも巻き起こることが、市場が成熟するための欠かせないラストワンピースではないかなと思うのです。
結局の所は、コンテンツイズキング
WEBTOONといえばスナックコンテンツ(3分でサクッと読めるもの)であり、物語に深みがないものが多いと言われることがあります。
最近僕が好んで読んでいる三つのWEBTOON、『喧嘩独学』と『入学傭兵』と『全知的な読者の視点から』という作品たちは、全くもってそんなことはありません。読み進めるほどに、キャラクター一人一人に味わいがあり、予想外の展開や、驚きや発見があります。
いま、ピッコマで配信されているSMARTOON(ピッコマでいうWEBTOON)は1100作品程度らしく、一方の横読み漫画は8万タイトルも揃っているとのこと。つまり、作品のクオリティ、ジャンル、ともにまだまだ発展途上ということが分かります。
ここから数年は、「今の売れ筋ジャンル」を攻めつつ「新しいジャンル」にも挑戦するということが大事なのかもしれません。それでも、既に魅力的な作品たちが生まれ始めているWEBTOONは、やはり大きな可能性を秘めています。
「WEBTOONが文化として根付くために何が必要なのか」という問いに戻りますが、プレーヤーとプラットフォーマーという環境が整った後は、最後は結局「コンテンツイズキング」です。
一番最初にメガヒットを生むのは誰か。みんながライバルで、いい意味で刺激を受けながらどこよりも先にナンバーナインが担ってくれることを、僕は願っています。
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