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山下達郎のコンサートだけは死ぬまでに絶対行ったほうがいい。

突然ですが、山下達郎と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。アラサー世代の人なら、クリスマス・イブの人、ミスタードーナツの人、ロン毛でやたら声が高いヘロン、硝子の少年作った人、このあたりの印象が強いかもしれません。

僕も2年前までその程度の印象しか持ち合わせていませんでしたが、80年代のシティポップを聴くようになり、少しずつ山下達郎にハマっていきました。そして、6/28(木)にNHKホールで開催された彼のコンサート「PERFORMANCE 2018」に行き、いまでは完全に彼の虜です。

結論から言います。死ぬまでに一回は山下達郎のコンサートに行った方がいい。主語がおっきい人の言うことは信じない方がいいですが、これはガチ。達郎は別格です。

音楽の求道者、彼の名は山下達郎。

御年、65歳。22歳の時にシュガーベイブとしてデビューしてから43年。今回のツアーは、55歳のころから10年続けて開催しているツアーで、今年は全国49箇所も回ります。

どのホールも1000〜3000人程度しか入らないため、ツアーチケットは毎回激戦。当選確率5%くらいらしい。今回初参戦で、東京会場で、しかもNHKホールを取れたのはただただ運が良かったとしか言いようがありません。

達郎は、音へのこだわりが半端ない。まず、コンサート会場は音質・音響にこだわるため大きな箱ではやりません(たまに野外イベントとかに参加したりしていますが)。コーラスを含めたバックバンドは10年間同じ演奏者。「年々グルーヴ感を増していき、徐々にできる楽曲のレパートリーも増えてきた」と、達郎は話します。

それでも、「僕たちが普段聴いている音源と同等かそれ以上のクオリティを担保できない曲はやらない」と決めているらしく、10年もの間、何千何万とセッションを繰り返してきたバンドですら、まだ演奏できない楽曲はあるのだとか。ましてや、リリース前の楽曲をツアーで発表することも稀らしいです。今回も、「ようやくこの曲が披露できるクオリティになりました」ってMCで言ってた。

何より一番驚いたのは、達郎の声。声量も、声質も、持続性も、どれをとっても超一流でした。すべての歌に妥協なく、どこまでも伸びるしなやかさに内包されるメロウなムードは唯一無二。うちの両親は67-8歳くらいだけど、あんなに太くて力強い声をここ10年以上聞いたことがない。声なんて小さくなっていくばかりだ。そんな声に惚れ惚れしていると、達郎がポツリつぶやきます。

「10年間、毎年ツアーを続けてきて、ようやく声が35歳のころに近づいてきました」

なるほど。…なるほど?達郎の声帯は一体どうなっているのでしょうか。衰えるどころか成長してます。もはや声帯おばけです。その姿はまさしく音楽の求道者。カラオケに行くのすらやめようかと思うくらい圧倒的でした。

「山下達郎の音楽」を信じる人たちと、応え続ける達郎。

達郎は、MCも面白い。ラジオもやっている達郎は、上品に毒を吐きます。客席からの声にも毒を吐く。歌っている時とは打って変わって、まるで噺家のように飄々と話すのです。

嫌味なく、ムダもなく、長すぎず、あくまで次の歌までのつなぎとしてのMCはお見事としか言いようがなく、洗練されたその喋りこそがもはやシティポップなのではないかと思わされます。

今回ご一緒したサブカル産業医の大室正志さん(僕をシティポップの道に引きずり込んだお方)は、「山下達郎があれだけ詰め込んだパフォーマンスしてくれているんだから、僕ごときが出し惜しみしちゃいかんといつも思っている」と言いました。そして、「体験型・エンタメとしてのライブはそれはそれで面白いけど、あの年齢になって3時間音楽だけを聴かせられるミュージシャンはもう出てこないんじゃないかな」とも付け加えます。

達郎のコンサートは、毎年セットリストは変わるものの大まかな構成は変わらないらしく、ご自身もMCで「私のコンサートは毎年あまり代わり映えしません。千変万化のコンサートに行きたければ他を当たってください」なんて言うほどです。

その理由は、「昔コンサートに来た人が、またいつかのタイミングで戻ってきてくれた時に、かつての雰囲気や名残を残しておけばすっとコンサートに馴染める」からだそう。完全に粋だ。粋の域に行ききっておられる。

山下達郎の音楽を信頼する人たちがいて、彼らの期待を超えるパフォーマンスを出す達郎がいる。そりゃあ、35歳の声にも戻りますよ。

コンサート時間、じつに3時間。駆け抜ける達郎は、コンサートで「死ぬまで歌い続ける」と宣言しました。音楽に向き合う姿勢と覚悟を見せつけられた3時間は、僕の人生で忘れられないものになりました。次回以降のチケットが当たる気はしませんが、また、必ず行きたいです。

最後に、過去に雑誌『ぴあ』休刊を受けて達郎が100の質問に答えるというインタビュー記事がなんというかとても達郎だったので少しでも達郎に興味を持った方は読んでみてください。達郎への信頼感が一層増します。

<以下、抜粋>
Q30 ライブで演奏していて楽しい曲は?

「自分の曲を楽しんで演奏したことなんて、一度もないですね。人に聴かせるものだから、自分が楽しんでちゃいけないので。しかも僕はバンマスだから、ずっと後ろのことを気にしてるんですよ。あいつ、ちゃんと段取り通りやってるかな? って」

Q36 コンビニに行くことはありますか?
「毎日のように行ってますよ。この質問は要するに、執事か何かがいて、“あれ買ってこい”とか言ってるのでは? ってことでしょ。バカバカしい」

Q41 何十年も聴き継がれる名曲と、数ヵ月で消費される曲の違いは?
「運、不運でしょう。いい曲であっても、歴史のなかに埋もれているものはいくらでもあるし。恣意的なものなんですよ、スタンダードと言っても。『クリスマス・イブ』だって、JR東海のCMがなければ、“『MELODIES』のなかの1曲”だったんだから。そんなもんですよ」

Q42 制作に行き詰ったとき、どうしますか?
「酒飲んで寝ますね」

Q46 アルバムを作っていて「これでOK!」と判断するポイントは?
「こっちが聞きたいよ(笑)。僕はとにかく、最後の1分、1秒まであがく人間なので。OKなんか出したことないですよ。“ここで時間です”と言われて、諦めるだけで」

Q58 ボーカロイドについてどう思いますか?
「好きにやればいいんじゃないですか」

Q61 音楽を生業にして良かったと思うこと、「これはちょっと…」と思うことは??
「音楽は嘘をつきませんから、人間と付き合っているよりもずっといいですよ。ただ、こういう商売をやってると、他人から“芸能人”と思われることがあって、そのことは“これはちょっと…”ですね。僕は自分では社会性、常識を持っていると思ってるんですけど、“やっぱり芸能人だから”って言われることもあるし」

Q73 そもそもライブは好きですか?
「嫌いだったらやらないでしょ」

Q75 AKB48についてどう思いますか?
「僕の人生に必要ありません。向こうも同じだろうけど(笑)」

Q95 では、下の世代の人に向けてひとこと。
「ジジイの御託には耳を貸すな」


達郎、半端ない。

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嬉しいです…!『ギャルと恐竜』っていう漫画が面白い話します?
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1985年兵庫の宝塚生まれ。関西学院大学→求人広告制作→Webメディア編集→schooディレクターを経て、 「世界中の人々を漫画で豊かにする」をMissionに掲げるナンバーナインに参画。※アイコンは昔青野春秋先生に描いていただきました