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良いチュートリアルとは、情報量のマッチングの問題だと気づいた。

Illustratorのチュートリアル制作者として動画が良いのか文字&画像が良いのかずっと悩んできましたが、ようやく1つの答えが見えてきた気がします。

初心者はなぜ挫折するのか

イラレを学びたい人が最初に頼るのは、おそらく書店で売っているイラレの教本でしょう。そして少なくない人が挫折して本を閉じてしまいます。原因はいくつもあると思いますが、大きな理由の一つは「情報量が少なすぎる」ことではないでしょうか。

1.長方形ツール(M)でshiftを押しながらドラッグして正方形を描き、バウンディングボックスを掴んでshiftを押しながら45度回転させます。

ある程度慣れている人ならこの文字だけで十分理解できるでしょう。市販の書籍の説明文としては丁寧過ぎるくらい。図も添えてあれば完璧です。

しかし、初心者にはこれでも足りません。

・長方形ツールってどこにあるの?
・shiftって何?
・バウンディングボックスって何?
・バウンディングボックスのどこを掴めばいいの?

我々にとっては考えるまでもない一文でも、初心者には疑問の山です。1歩歩くごとに考えたり調べたりしなければいけないことが山積みになるのでは、挫折もやむなしと言えます。

かといって初心者でも完璧に漏れなく理解してもらおうとすると、必要になる図や文字は何倍にも膨れ上がります。結果、大多数の読者に必要のない情報ばかりになり、初心者すらもそのボリュームで読む気が失せてしまう、誰も幸せにならない本の完成です。


子供がYouTubeで学ぶ理由

一方で最近はYouTubeで大人顔負けのスキルを身につけた子供の話もよく聞きますね。なぜ本ではなくYouTubeだったのか。身近で無料だからというのももちろんですが、いちばんの理由は「見た通りに真似することができる」からです。

前述の「このツールはどこにあるの?」「そのツール名は何のことだっけ?」といった疑問から解放され、チュートリアル内容に集中することができます。指示通りやれば望む結果が次々とできていくのは、さぞ楽しいでしょう。

初心者がスキルを学ぶ手段の定番として「詳しい人に教えてもらう」もありますが、これも「見た通りに真似することができる」し、「疑問に思ったことはその場で答えてもらえる」のですから、それはそれは効率が良いでしょう。最強の学習方法と言っても良いかもしれません。


上級者にとって情報はノイズになる

このように「文字や画像」と「動画」では、情報量に大きな差があると言えます。では動画の方がチュートリアルに適しているのかと言えば、そうとも限りません。

こちらの図をご覧ください。

上級者ならこの図を見るだけで「なるほど!」と理解できます。図形の変化から、どのツールをどのように使えばいいのか想像できるからです。

逆に、同じ内容を説明した数分のチュートリアル動画があったとしても、上級者は途中で飽きて閉じるか、飛ばして要点のみを確認するでしょう。上級者にとって必要なのはどのツールをどう使うかであって、マウスを操作する時間も解説者の声も、ノイズでしかないのです。画像なら10秒で理解できる内容を、数分の動画から掘り出すのはとても面倒です。


良いチュートリアルとは

つまり、初心者と上級者、動画と静止画・文字の違いは、保有している情報量の差です。保有している情報量が少ない初心者には、動画でできるだけ多くの情報を。情報量の多い上級者には、文字や画像で要点のみを端的に。良いチュートリアルかどうかは、対象に対して適切な情報量を選択できているかどうかが大きいのではないでしょうか。もちろん内容によっては上級者に対して動画でも良いでしょう。

デザイナーがクライアントに対して口すっぱく言うのと同じですね。

ターゲットは誰ですか?
一番伝えたいことは何ですか?
それはその人に必要な情報ですか?

万人に伝わる広告がないように、万人に向けたチュートリアルなど無いのだ。


ちなみに、

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